TZ 7020:Ikue Mori "Garden"(1996)

 賑やかでリズミックな環境音楽風のテクノ。即興風の展開で抽象寄りな趣きだが、不思議と肉感的な味わいあり。

 イクエ・モリがパーカッションとコンピュータを駆使して作ったアルバム。全5曲、それぞれ打楽器やエレクトロニクスの比率が変わっている。コンポーザー・シリーズのブランドで発表されており、即興ではなく楽曲が土台か。
 ライナーには(2)の譜面が乗っているけれど、数字やアルファベットによる連なりのみ。サンプリングのトリガーなのか、何らかの楽典的な意味かは数字から読み取れず。

 実際のところ場面転換は大胆かつ唐突に行われるが、場面ごとのサウンドは構築性の高いエレクトロニカだ。なお演奏はすべてモリの多重録音。
 まず4と5が96年5月1~3日、残る1~3が同月6~7日にかけ録音と一週間で製作は完了した。音像はそのわりに、けっこう凝っている。楽曲を煮詰めた後にスタジオ入りだろうか。即興的に作ったならば、この多彩さは凄い。

 80年代の細野晴臣による環境音楽を連想した。リズムと断片的なメロディが積み重なり、穏やかな緊張とリズムのノリを展開するアイディアが詰まった。
 どの曲も不思議な聴きやすさと、けっこうなグルーヴィさが気持ちよい。軽快な打音の連続はミニマルな繰り返しでなく、隙間を埋めて縫うようなビートばかり。
 ポリリズミックな多層性よりも、異なる音色や音程感を持つビートを組み立てた。

 シーケンサー的なテクノではない。いや、確かに繰り返しも多いけれど、もっと肉感的な変貌を優先させた。
 キュートでこじんまり、荒々しさや硬質さよりも色鮮やかな砕片の散らばりを楽しめる。
 メカニカルでジャストなビートと、生々しいドラム演奏の揺らぎが拍車をかけた。ところどころのリズム処理にアジア風の穏やかさも香る。

 さらにどの曲も残響やフィルターの処理をかけて、音像そのものをドライかつ鮮やかにいじっていく。もはや20年前に作られた作品だが、むしろ今だからこそブレイクビーツなどの進歩を踏まえ、親しみやすい響きに仕上がった。
 フロア対応をモリは本盤でたぶん意識していない。だがBPMは存在する。大音量で聴くのも面白い。
 

Track listing:
1 The Pit And The Pendulum 7:38
2 Abacus ~ Blue Parrot 11:02
3 Tool Box ~ Loops 7:47
4 Bamboo Battle 6:41
5 Donkey Diversion ~ Gull ~ Moon Desert 11:16

Tracks 1 to 3 recorded at Current Sound, on May 6 and 7, 1996, tracks 4 and 5 recorded at Kato Studio, on May 1-3, 1996.
Mastered at Foothill Digital, NYC.

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