TZ 7046:Wadada Leo Smith "Light Upon Light"(1999)

 即興要素の強い静かな現代音楽集。緊張感が特徴だ。

 シカゴのAACMメンバーだったワダダ・レオ・スミスのソロ。ゾーンは彼に高い敬意を払っており、何枚もTZADIKから彼の作品は発売されている。
 かなり理知的なアプローチの作品で、決して聴きやすくないのだが。彼が世の中で埋もれないように使命感を持ってリリースを続けてるのかもしれない。

 本盤はフリーを基調ながらジャズめいたダイナミズムは希薄。もう少し作曲された楽曲を収めた。コンポーザー・シリーズの一環で発売のため、ライナーに(3)の譜面の一部が掲載あり。それは図形譜面に近いが、ある程度の音程変化や構成が指定されているようだ。
 
 全5曲入り。カリフォルニアで(1)(2)(4)、(3)(5)と二回のセッションで録音された。弦有りと無し、の組み合わせか。

 (1)は芸術財団からの委嘱で発売とある。細かく書いてあるが、いまいちわかりづらい。05年に57歳で他界した米現代音楽作曲家、Stephen L. Moskoに捧げられた。彼は民族音楽を取り入れた手法が得意だったらしい。
 この曲は先に録音されたガムラン四重奏を流しながら、fl,cl,per,p,vl,vcの編成な木管と弦のアンサンブルが音を重ねる構成。ワダダはガムラン音源のほうでクノンを叩いてる。
 パーカッションは断片的に表れ、特にダイナミズムを目指したリズミックな展開ではない。淡々と静かに楽想が流れる。不協和音は控えめだが、起伏の唐突なメロディが静かに動き、酩酊と緊張を漂わせた。

 (2)はビオラのソロで、この曲の奏者であるカレン・エレーヌ・バクーニンへ献呈された。
 冒頭から勇ましいフレーズ、続けてか細い特殊奏法と伝統と前衛をいきなり行き来する。展開こそ唐突な現代音楽だが、野太い響きが涼しげで聴きやすい。かなりの部分まで譜面ではなかろうか。
 破綻無く緩やかな物語性を持って、曲は進んでいく。きちんとしたメロディと唐突な譜割が跳躍する大胆さが魅力か。終わり方があっけなく、滑らかに次の曲へつながった。

 (3)はtp,electronics,朗読(日/英)のトリオ編成。ワダダがトランペットを吹いた。
 電子音とトランペットのフリーな世界観が時にノイジーに提示される。トランペットにエフェクターをかまして、歪んだ響きを含ませた。
 メロディよりもSEと音程感あるノイズの交歓なイメージ。爽快感や破壊衝動でなく、単に音色として電子音を使っており、必然性がつかめない。そして終わり方もあっけなかった。

 朗読は唐突に日本語で現れた。和歌を詠むような節回しと、普通の日本語アクセントで平板に朗読の二種類が交錯した。フレーズ、もしくは単語ごとに朗読の手法が入れ替わる。さらに途中で朗読は複数に。日本語と英語が混在の場面もあり。声は事前に録音され、それを流しながら演奏か。
 英語の朗読もあり。あまり抑揚はつけない。むしろここでは日本語で朗読のエキゾティックな音程感に着眼して作曲ではないか。
 もちろん英語は流暢だが、日本語のほうを得意にしてそうな英語の発音だ。

 (4)は(1)にた編成の室内楽。もう少し編成は大きくなっており、b,fl,ob,cl,per,celesta,harmonium,vl,va,vcと10人編成へ。ワダダは作曲のみで演奏には参加せず。コントラバス独奏と室内楽の構成だ。
 イスラム教スーフィズムの指導者Dr. Javad Nurbakhshに捧げられ、本盤の独奏者Bertram Turetzky(b)に向けて書かれた。
 やはり抽象的な旋律が浮かんでは消える。瞬間を切り取ると興味深い場面もあるが、全体像や流れは今一つ掴めなかった。もう少しじっくり聴かないとダメだろう。

 一転して(5)は、本盤で最もわかりやすい音楽性を持つ。静かに凛々しくトランペットが鳴り、電子音が彩りやハーモニーをつけていく。シンセ的な音色でなく、弦や鍵盤のサンプリングを変調させ、あれこれ提示のようだ。
 ドローンめいた緩やかな電子音ながら、鳴りっぱなしではなく次々に違う音を出す。
 そこへたっぷりと緩やかなトランペット。軋むノイズとくっきりした旋律の絡みは、単純に美しかった。
 この曲は4分位で終わってしまうのが惜しい。これこそ、このテーマでアルバム一枚をみっちり作って欲しい。

 楽曲のアプローチとしては(3)が面白い。でも何度も聴きたくなるタイプの曲ではない。繰り返し聴くなら、ビオラ独奏の(2)やエレクトロニクスとの(5)かな。弦が入る編成は、ワダダらしい緊張感が漂うものの単調なため、聴くのに集中力がいる。
 一曲選ぶなら、(5)が良かった。
 とはいえ実験性と現代音楽の厳粛さを、どちらにも引っ張られず自然体で録音した盤。
Track listing:
1. Moths, Flames and the Giant Sequoia Redwood Trees
2. Hetep: Serenity: Tranquility 2
3. Multiamerica
4. Nur: Luminous, Light Upon Light
5. A Thousand Cranes: A Memorial for Amir Hamzehi 

関連記事

コメント

非公開コメント