Frank Zappa 「Frank Zappa For President」(2016)

 ザッパの遺産を組み合わせた疑似コンセプト・オリジナル・アルバム。散漫ながら晩年の音源を中心に使い、演奏はタイトだ。

 2016年はフランク・ザッパ遺族が離散の歳。ゲイルが他界しザッパの家財が売りに出された。兄弟は確執が表面化し、音源はどどっと6タイトルが乱発された。その一方で流通はユニバーサルに委ねられ、入手性と単価は安くなるメリットも。ザッパが他界して24年。もう、そういう時期なのかもしれない。

 本盤は遺族がスタジオとライブ音源を組み合わせ、疑似的にコンセプトめいたアルバムを作る企画。ライブ音源丸ごと、レアテイクの発掘、公式アルバムのアウトテイク。それぞれの企画にくらべ、最も評価しづらい企画だ。なぜならば音源もコンセプトもフランクのものではない。意図していないものを、さもフランクの意向のように出しつつ、その選者はフランクの発想も才能もないのだから。

 本盤のテーマは大統領選挙。晩年最後の88年バンド・ツアーもアメリカ大統領選挙に引っかかっていた。それを連想させる思惑も、企画者にはあるのだろう。編んだのはアーメット・ザッパ。音源を握り、ドゥイージルと袂を分かったビジネスマン型な息子のほう。
 ドゥイージルとZPZでツアーにも出て、ザッパのテープ管理でずっと関与してきたジョー・トラヴァースのクレジットもあり。いちおうギリギリ、ザッパ遺産音源への愛情は残っていそう。

 構成はシンクラヴィアの未発表曲と88年来部、そして初期音源のリミックスとまぜこぜ。選曲や構成の不満はあるが、それは言うまい。編んだのはフランクじゃないんだ。
 音質はまずまずだが、もちろんマニア向け。これを聴くなら、ザッパのアルバムを強く薦める。

 ただ、マニアには色々と楽しみあるのは間違いない。まずシンクラヴィアの(1)(3)(4)(6)。
 根本で死後の発掘に疑問あるのは、果たしてこれがザッパの作品なのか、って点。複雑な楽曲づくりがザッパだが、もう少しポップさがあった。真の意味で難解なのは最晩年の"The Yellow Shark"(1993)のみ。
 "The Perfect Stranger"(1984)や"The London Symphony Orchestra"(1983)はザッパとして傍流に見える。本質的にザッパはロック・ミュージシャンと自分を定義してたように思える。
 死後の"Civilization Phaze III"(1994)のシンクラヴィア曲は、どこまでリリースをザッパが考えていたのかなあ、と疑う次第。もう少しポップになっていたんじゃなかろうか。それとも"Thing-Fish"(1984)のように、しれっとリリースしてたかな?

 本盤収録曲も含め、死後発掘のシンクラヴィア曲はあまりに難解すぎる。構成も展開も。きっちり音楽的なアナライズを読んでみたい。これらはザッパのスケッチやメモ、もしくは個人的な創作の遊びだったのではないか、とずっと思っている。
 アレンジや構成があまりに取りとめないため。
 
 本盤収録曲のうち、大作の(1)はかなりポップだ。小編成な弦中心の室内楽のような感触で、和音やメロディに美しさあり。変拍子の嵐や唐突なメロディの跳躍など、いかにもザッパ。ぶっちゃけ、聴いてて楽しい。
 同じくシンクラヴィアの未発表曲集"Feeding The Monkies At Ma Maison"(2011)より、よほど楽しんで聴けた。
 音数が少ないせいかな。ミニマルなテクノっぽい味わいで良かった。

 シンクラヴィアの音源は(1)は93年のクレジットで、晩年作品と思われるがいつの録音か不明。
 驚愕が(3)。"Civilization Phaze III"収録なインストのボーカル版。しかも歌はナポレオン・マーフィー・ブロック。こんな録音、存在してたんだ。しかもナポレオンとザッパは付き合いがつながってたんだ。
 確かにナポレオンは84年ツアーの初期に参加もしてたけれど。

 こんな音源あるなら、なおさら"Civilization Phaze III"はもっと歌もの中心になってたんじゃ、って妄想が膨らむ。
 なお"Civilization Phaze III"とオケは別の音色。"Civilization Phaze III"音源がデモだろうか。いずれにせよ、今となってはチープなシンセ・ストリングスの音色が切ない。
 オペラもしくはミュージカル風にナポレオンは歌う。"The Evil Prince"に通じる流れだ。

 (4)と(6)は85年のクレジット。(4)はザッパ自身の語りにシンクラヴィアの曲が伴奏する。そもそもこういうテープが残ってたのか、ザッパ自身が曲に喋りを載せていたのか、どちらだろう。アーメットが二つのテープを載せてたら残念だ。曲だけでいいじゃん、と。
 (6)はインスト。これも結構ポップ。ただし抽象的な展開ではある。奔流するアイディアをまとめたかのよう。こちらのほうはリズム楽器が加わり、唐突で性急な変拍子の嵐が楽しめる。

 次にリミックス曲。本盤では(2)のみ。2nd"Absolutely Free"(1967)に収録曲。何で中途半端に古い音源を入れたんだろう。88年ツアー音源にして、晩年音源で本盤をまとめて欲しかった。
 リミックスにDick Kuncと、当時のエンジニアがクレジットあり、当時の別ミックスなのかもしれない。でも、なあ。
 
 そしてライブ・テイク。(5)と(7)。いまだにザッパ・トラストから全編発掘がされない88年ツアーから。このツアーこそ、音源の山だろうに。もっと前の音源を発掘し終わった後のために、とっておいてるのか。

 双方とも88年3月25日のNY公演から。(5)は名盤"Broadway The Hard Way"(1988)に収録曲だし、さほど新味はない。ぶっちゃけ88年バンドは上手すぎて、あまり別テイクに新味はない。だから発掘リリースないのかも。寄り抜いたザッパの"Broadway The Hard Way","The Best Band You Never Heard In Your Life"(1991),"Make A Jazz Noise Here"(1991)があれば十分、ともいえる。
 あ、だからそれらに未収録の曲を出してほしい。ブートで体験できるが、抜群にタイトでかっこいいから。公式のきっちりした音質で聴いてみたい。

 その意味で(7)は面白かった。このスタンダード曲(愛国歌をこう呼んで、いいのかな?)はザッパの死後にデジタル・アルバム"AAAFNRAAA Birthday Bundle 21.Dec.2008"(2008)で、出たテイクと同じ日。聴き比べはしてないが、再リリースかな?
 当日はダブル・アンコール最後に演奏された。ドラム・ソロに行く場面がちょっと唐突。テープ編集ありそうな感じだ。
 ザッパのギター・ソロも短く有り、スピーディなアンサンブルが楽しめる。

 ふう、なんだかんだで色々と語りたくはなる。聴き飽きたつもりでも、やはりザッパの音楽は楽しい。もっと長生きしてほしかったよ、ほんとに。

Track listing:
1 Overture To "Uncle Sam" 15:16
2 Brown Shoes Don't Make It 7:27
3 Amnerika (Vocal Version) 3:10
4 "If I Was President..." 3:43
5 When The Lie's So Big 3:38
6 Medieval Ensemble 6:31
7 America The Beautiful 3:27

Personnel;
All Masters Produced By, Performer, Arranged By, Conductor - Frank Zappa
Produced For Release - Ahmet Zappa, Joe Travers

1 Overture To "Uncle Sam"
Engineer - Spence Chrislu
Synthesizer [Synclavier] - FZ

2 Brown Shoes Don't Make It
Bass, Vocals - Roy Estrada
Drums - Billy Mundi
Drums, Vocals - Jim Black
Engineer [Re-mix] - Dick Kunc
Guitar, Vocals - FZ
Keyboards - Don Preston
Producer [Original Recording] - Tom Wilson
Saxophone, Woodwind - Bunk Gardner
Vocals - Ray Collins

3 Amnerika (Vocal Version)
Engineer - Bob Stone, Mark Pinske
Synthesizer [Synclavier] - FZ
Vocals - Napoleon Murphy Brock

4 "If I Was President..." & 6 Medieval Ensemble
Synthesizer [Synclavier], Voice [Spoken Word] - FZ

5 When The Lie's So Big & 7 America The Beautiful
Alto Saxophone, Baritone Saxophone, Soprano Saxophone - Paul Carmen
Baritone Saxophone, Bass Saxophone, Contrabass Clarinet - Kurt McGenttrick
Bass - Scott Thunes
Drums, Percussion [Electronic] - Chad Wackerman
Engineer - Bob Stone
Guitar, Vocals - FZ
Keyboards, Vocals - Bobby Martin
Lead Vocals - Ike Willis
Rhythm Guitar, Synth - Mike Keneally
Tenor Saxophone - Albert Wing
Trombone - Bruce Fowler
Trumpet, Flugelhorn, Synth - Walt Fowler
Vibraphone [Vibes], Marimba, Percussion [Electronic] - Ed Mann

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