TZ 7002:Chris Brown "Lava"(1995)

 抽象的でメカニカルな現代音楽がシビアに演奏された。ポリリズミックな揺らぎが魅力。

 92年の作品でまっとうな現代音楽。New Lamgton Arts of San Fannciscoの委嘱作という。4本の金管、4つの打楽器、そして電子楽器の編成で作曲された。

 時間がキッチリ決まったタイプの曲で、音程、音色、動きが厳密に指定される。その一方でチューニングと音量は指定が無いそう。
 ライナーに細かい解説が乗っているけれど、読んでも良く本曲の狙いがわからない。

 そもそも4人の金管楽器と言いつつ、トロンボーン二本は同じ奏者が演奏してる。ダビングということか。
 ライナーによれば奏者はクリックを聴きながら互いに分散して録音とある。電子楽器もMIDI制御された。完全にメカニカルな仕組みかもしれぬ。

 楽曲の時間はきっちり決められており、曲が進むにつれテンポが変化していく仕組みらしい。作曲家のクリス・ブラウンはプロデュースだけでなく録音も担当。譜面を書いて終わり、で無く録音芸術として本楽曲を捉えたか。

 虫の羽音みたいな音が浮かんでは消える。メカニカルな響きとパーカッションや金管の実音がジャストなタイミングで軋んでモヤけて沈む。テープ編集みたいなタイトさだが、実際はサンプリング的に音を出し入れしたり、ミュート操作かな。
 実世界と電脳仮想世界を行き来するような幻想性が興味深い。

 特に素晴らしいのがタイミングの操作。曲が進むにつれ譜割が分かれていき、どんどんポリリズミックに加速する。スタジオ録音ならではの落ち着いた演奏が、機械的に絡み合う。無機質な音色と構成、乾いたリズムの奔流が暴れていき、痛快で面白い。

 それでいて本質は、がちがちに制御されている。このドライで合理的に割り切ったムードが、妙な爽快さと見晴らしのよさを本盤に与えた。頭でっかちになりがちな理論派の曲だが、音がかなり整理されてぶつかり合わない。複数のラインが違うタイム感で動くちぐはぐな滑らかさを、逆に丁寧に表現した。
 ぼおっと聴いてると拍頭もわからなくなる。DCPRGの"Catch 22"が好きな人は、ハマりそうな音像だ。

 奏者をぼくはあまり知らない人たちながら、現代音楽系の人かな。トリッキーな譜面を危なげなくタイトに決めて、冷静沈着な楽想をきれいに表現した。
 クリス・ブラウン自身は現代音楽を学び、特に電子音楽や即興系野で活躍の人らしい。74年頃から活動を開始、アルバム・リリースは89年頃からのようだ。同姓同名の黒人シンガーがいるけれど、当然別人。

 本盤はTZADIK立ち上げ初期のアルバムにあたる。ジョン・ゾーンがどういうつもりで彼を選んだかは不明だが、きっちりコントロールされた楽想はコブラに通じる。ゲーム・ピースなどで即興を制御にこだわるゾーンには、本曲のような縛られた楽曲に親近感を覚えたのかもしれない。

Track listing:
1 Crack 12:42
2 Eruption 7:16
3 Fountain 4:06
4 River (Part 1) 2:02
5 River (Part 2) 4:05
6 River (Part 3) 5:52
7 Crest (Part 1) 5:34
8 Crest (Part 2) 4:09
9 Pahoehoe (Part 1) 4:23
10 Pahoehoe (Part 2) 9:08

Personnel:
Composed By, Producer, Recorded By - Chris Brown

Bass Drum, Timpani [Tympani], Hihat, Snare - William Winant
Trumpet - Tom Dill
Tuba - Peter Wahrhaftig
Trombone 1&2 - Toyoji Tomita

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