TZ 7138:Tim Sparks "Neshamah"(1999)

 世界中の様々な時代なユダヤ系楽曲を、ソロ・ギターへアレンジした素朴な響きの盤。

 ライナーによれば、ジョン・ゾーンの提案でこの企画は始まった。世界各国に残された、さまざまなジャンルの音楽を"ユダヤ人"の切り口でまとめた本盤は、多彩な音楽性が詰まってる。
 地域文化や歴史をすべて排除し、"ユダヤ"の横、いや斜めの串で切り取った本盤に通底するのは、どこか切ないメロディ・センスのみ。あとはすべてが異なる文化の集合体だ。逆説的に強引な力技を見せる強烈な民族アイデンティティの象徴である。
 アレンジはティム・スパーク自身が行った。音楽の土台はそのままに、ジャズ的な解釈を施している。
 伴奏とメロディを丹念にこなす丁寧なアレンジだ。演奏はすべてアコギ。マーティン 00-17にJohn Pearseの弦にB-Bandsのピックアップを使用、クレジットあり。

 ユダヤ人以外の人が聴いてももちろん楽しめる。端正で美しいギター演奏と、センチメンタルな旋律、多彩なリズム構造や奔放なアドリブ展開が詰まってる。
 だがユダヤに近しい人が聴いたら、さらに感興は高まるのだろう。ナショナリズムを超えた同胞の共感を味わえるだろうから。幸福、とは言わない。だがあらゆる文化構造や歴史を超えた通底性を持つって感覚は、頭でっかちな理解しか出来ぬ、特別な世界観だ。

 音楽への共感に話を戻そう。本盤はしなやかな旋律が全編を覆い、リズミックなアプローチは希薄だ。単音で弾きまくりより、低音弦やアルペジオを駆使して伴奏と主旋律の構造を常に意識した。

 滑らかなギターは、楽曲を単調に感じさせない。トリッキーな奏法は使わず、真正面からギターならではの美しさを表現した。アレンジと演奏、双方が素晴らしい。
 カントリー的な素朴さと、テクニカルな怜悧さが絡み合う心地よい音楽だ。ブルージーさと抒情性をたっぷり含ませながら、溺れず頼らず、涼し気な世界観を作った。

 ニューエイジやアンビエントのような安易な寛ぎを狙っていない。本盤には柔らかな世界がいっぱい詰まってるけど、音楽は凛々しく確かな躍動感を持つ。
 各曲は数分程度と短い。サクサクと楽曲を奏で、次に移っていく。それも本盤を飽きさせない一つの要素だ。

 92年にレコード・デビューして以降、あまり多いレコーディングをスパークは残してない。本作がTZADIKでのデビュー盤になる。DiscogsだとTZADIK盤しか載ってないが、CD BABYを使って4枚のアルバムをリリースしてた。Amazonでも購入可能。
http://www.cdbaby.com/Artist/TimSparks
     

Track listing:
1 The Baal Shem Tov's Melody 3:21
2 Hamisha Asar 4:54
3 Odessa Mama (Odesa Mame) 3:09
4 Skrip, Klezmerl Skripe 3:48
5 Los Caminos De Sirkeci 2:59
6 Kad Jawajuni 4:42
7 A Hora Mit Tzibeles 3:34
8 Viva Orduena 2:57
9 Quando El Rey Nimrod 3:49
10 A Leybedike Honga 2:13
11 The Shoemaker's Melody 2:30
12 Freylich 3:53
13 Sholem Aleichem 2:08
14 Naftule Spielt Far Dem Rebin 2:40
15 Addio Querida 2:49

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