Abdullah Ibrahim 「The Children Of Africa」(1976)

 バラエティに富んだアレンジのピアノ・トリオ。硬質な熱さが美しい。

 本盤はダラー・ブランド名義でのピアノ・トリオで、彼として比較的に活動初期の盤にあたる。なおなぜか後年、Enjaは"Banyana"とタイトルを変えてリイシューした。内容は同じ。紛らわしいな。

 アブドゥーラ・イブラヒムはEnjaと関わりが深い。80年代はEnjaが主戦場だった。試しにEnja盤をリストアップしてみよう。

[Discography from Enja]
1972:African Sketchbook
1974:African Space Program
1976:The Children Of Africa 【本盤】
1979:Echoes From Africa
1979:Africa - Tears And Laughter
1980:At Montreux
1983:African Dawn
1983:Zimbabwe
1986:South Africa
1988:Mindif
1989:African River
1992:Desert Flowers
1994:Knysna Blue
1998:African Suite
2001:African Symphony

 このように常にブランドは南アフリカのルーツを意識し、提示し続けた。
 全曲がイブラヒムのオリジナル。だが本盤は西洋音楽の香りをたっぷり吸いこみ、アフリカ的な熱さを提示しつつも、どこか冷静さを保ってフリー・ジャズへ雪崩れた印象を受けた。

 リズム隊の二人がブランドへむやみに寄り添ってないせい、だと思う。特にドラムが。
 山下洋輔との共演イメージが強いセシル・マクビーは前作"African Space Program"からの共演。ドラムのロイ・ブルックスは本盤が初共演の吹きこみか。

 やたら性急に畳みかける(1)で幕を開ける。代表曲であり、本来はのどかで寛いだしぶといグルーヴなのに。テンポが速いうえに、ドラムとベースがタイトに寄り添って、意外と硬質な楽曲に仕上がった。この幕開けが本盤のイメージを決めている。

 ブランドは本盤でピアノにとどまらず、ソプラノ・サックスや歌声などのアプローチも見せた。ソロがフリーに鳴るとがむしゃらに突っ込み、独自の世界へ没入なところは本盤でも顕著。しかし我を張り続けず、ドラムやベースにもきっちりと見せ場を作る。
 そこまで民主制を強調しなくてもいいのに。ライブ盤でもあるまいし。
 
 マクビーもブルックスも、アフリカ音楽とは別のファンキーさを持っており、途端にサウンドのイメージが整然と鳴ってしまう。だからなおさら、直後のピアノを含むコンボ編成の疾走が、ピアノとリズム隊の対比構造を強調した。

 ただし演奏は悪くない。冴えたシンバル・ワークで上品に締めるドラム、着実にフレーズを重ね土台を重ねるベースは、ぬるさやいい加減さは無い。まじめに破綻無くムードを締めあげた。
 フリーな場面も、まさにフリーの土壌を作り上げる。スリルをテクニックできちんと演出した。

 だからイブラヒムは猛然と自分の世界に邁進できる。左手が呪術的に繰り返され、右手が跳ねるように踊った。左手の譜割はベースと異なるため、多層的なレイヤーが産まれる。
 歌やサックスはあくまで味付け。アルバム全体をきゅうっと整えてる。饒舌なピアノの展開は、クラスターやアラブのしぶとさ、アフリカの雄大さをところどころで織り込んだ。
 つまり手練手管をきちんと見せて、当時の技を求めて買った人を満足させる出来になってる。この辺のそつのなさは、ホルスト・ウェーバーのプロデュースか。
 感情に任せて疾走したって荒っぽさよりも、いろんな魅力をコンパクトにまとめたって印象が先に立つ。サービス精神を忘れない、と言ってもいい。
 
 そのへんを計算高く物足りないと取るか、芸人魂の表れと取るか。ぼくは後者と取る。エンターテイナーとして自分の魅力をきっちりプロデュースした盤だと思う。
 アメリカならではのいい加減さを捨てて、ドイツ的なまじめさが現れた。

 なお今なら、この廉価盤で入手しやすい。


Track listing:
1 Banyana (The Children Of Africa) 1:59
2 Asr 8:14
3 Ishmael 12:14
4 The Honey Bird 6:19
5 The Dream 6:40
6 Yukio Khalifa 10:20

Personel:
Piano, Soprano Saxophone, Composed By Abdullah Ibrahim
Bass :Cecil McBee
Drums :Roy Brooks
Recorded January 27, 1976 at Downtown Sound Studio, New York.

関連記事

コメント

非公開コメント