Art Blakey & The Jazz Messengers 「Standards」(1989)

 スリルの無い熱いハードバップ。上手いとは思う。

 矛盾する要素を滑らかに取り入れた時代の、安定したメッセンジャーズを楽しもう。代表曲ぞろいなので初心者向けともいえるが、それならばオリジナルの50年代を薦めたいな。

 80年代後半、ぼくがジャズを聴き始めたころ。アート・ブレイキー&メッセンジャーズは「硬い線のモダンジャズ」だった。当時の世代でバリバリに生き残ってたのは、マイルスとロリンズくらいか。ガレスピーはちょっと前の世代ってイメージ。
 そんな中で、ハードバップの全盛期を破綻無く聴かせつつ、若手を重用してロートルの懐古趣味にも陥らない。そんな見事な営業スタイルを見せてたのがブレイキーだった。

 とはいえその審美眼も、マルサリス兄弟くらいまで。採用される新人はどれも、指は廻るが個性に欠け大成しないってイメージもあるけれど。
 これを録音時点でブレイキーは69歳。もう隠居と見なしてもいい時期ながら。

 本盤は日本テレビの企画で88年9月5日に、NYのスイート・ベイジルでライブ録音。スタッフも日本人が並ぶ。NYでの録音エンジニアはTZADIKなどでおなじみのKazunori Sugiyamaが担当した。

 編成はフロントが3管にピアノ・トリオの黄金セクステット。選曲は"モーニン"他、代表曲を取り上げたゆえに、タイトルを「スタンダーズ」と名付けたそう。看板に偽りありな気もするが、メッセンジャーズでのスタンダーズってことか。

 いちおう確認も含めて選曲のもとを整理すると、こんな感じか。
(1) "The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia, Vol. 1"(1955)
(2)(4) "Moanin'"(1958)
(3)  Bud Powell "Bud Powells Moods"(1955)
(5) "Caravan"(1962)

 (3)だけ座り悪い。いちおうメッセンジャーズで録音の記録はあるようだ。あまりにもベタな選曲を嫌った、メッセンジャーズ側の意地を見せた提案かもしれない。
 
 本盤のメンバーはこんな感じ。当時の音楽監督は誰だろう。入れ代わりはあるが、最後から二番目か三番目のメッセンジャーズ布陣らしい。
Phillip Harper (tp):1987~88
Robin Eubanks (tb):1980~88
Javon Jackson (ts):1986~90
Benny Green   (p) :1986~88
Peter Washington(b):1986~88

 楽曲はもう、隙は無いがスリルもない。まんべんなく見せ場を作るソツのないアレンジと選曲だ。これを喜んで聴くのは、なんか気が引ける。ジャズって、そういうもんじゃないだろう。
 いや、そういうものか?あまり精神性やスリルを求めない大衆芸能か?こういう音楽を聴いてると、本質的な音楽の楽しみ方を悩んでしまう。
 ファンキーかつ元気よく音楽は爆ぜている。でもがっちりした安定感あって書割の美しい風景を見ているかのよう。

 でも耳をふさいで横を通り過ぎるのはつまらないかな、と思って僕はこれを聴いている。ブレイキーの晩年の生きざまを聴きとる、当時の若手のテクニックに触れる、ジャズの変遷に想いを馳せる。いろんな切り口でいいじゃないか。少なくとも本盤を聴いてて、驚いて耳を澄ませはしなかった。つまりBGMにはぴったり。

Track listing:
1 Minor's Holiday
2 Moanin'
3 I Get A Kick Out Of You
4 Along Came Betty
5 Caravan

Personnel:
Phillip Harper (trumpet) Robin Eubanks (trombone) Javon Jackson (tenor sax) Benny Green (piano) Peter Washington (bass) Art Blakey (drums)

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