TZ 7124:Steve Lacy "Sands"(1998)

 凛々しさはそのままに、寛いだソプラノ・サックスのソロが楽しめる一枚。

 98年2~4月にスティーヴ・レイシーの自宅でおそらく断続的に録音された。
 ソプラノ・サックスのソロが基本。(9)のみ、アラン・ギンズバーグの歌詞を曲につけており、Irene Aebiがボーカルで参加した。

 例えば(2)や(4)(6)で聴けるオリエンタルなメロディ・ラインは意図的なものか。ときどき音色がきつく響くけれど、基本は緩やかな旋律を生かした穏やかなサックスを聴かせる。

 レイシーは58年にアルバム・デビューですでに40年のキャリア。生涯に300枚ほどの録音に係わった。本盤の6年後に70歳で他界する。そんな人生において、晩年期に伸び伸びと吹きこんだのが本盤だろう。

 決してひよったり妥協はしてないが、ヒリヒリするスリルや新しさを狙うガツガツさよりも、寛いで穏やかな空気が先に立った。それでもメロディが涼やかで硬質な緊張を漂わすのが、さすがのキャリアだが。

 死去までに何枚もレコーディングは続けたが、TZADIKへの録音は本盤のみ。作曲家シリーズでなく、ラディカル・ジューイッシュのブランドで本盤をリリースは、ジョン・ゾーンのこだわりか。

 (4)でのふうわりと響くリバーブ感が奇妙で面白い。空虚に奥行きあるエコーが静かな広がりを出した。

 レイシーをほとんど聴いたことが無く、他の盤との比較はできない。でも手なりで吹きながら、決して手を抜いてないと感じた。
 時々現れる音列のオリエンタリズムは、切ない情感を表す手法か。とはいえ感情の爆発は無く、どこか理知的なストイックさを常に残してる。
 まじめだが慌ただしく押しつけがましい性急さはない。紳士なフリージャズだ。

 ちなみにサックスの扱い方は独特だ。喉を膨らませて音を揺らしたり、フリーキーな軋みを滲ませたり。吹きながら声を出したり。少しづつ色んな技を使う。
 テクニックはあるはず。だがそれをひけらかしもしない。あくまでメロディを歌わせる一助に技術を使い、そして技に頼りもしない。

 凛として遊びを削ぎ落した、丁寧なメロディ・ラインだ。
 むしろサービス精神も希薄だ。技を芸として聴かせるゆとりも見せない。一定のテンポ感は保つが、譜割も頻繁に変わってリズムは凄く取りづらい。

 本盤収録の組曲"Sands"は本盤だけに終わらせず、"MOTHER GOOSE"(2003),"BEST WISHES"(2008)などライブで披露した。決して一過性の作品ではない。
 

 なお(9)は歌声と同じ譜割でサックスが吹く。この辺の律義でモノトーンなアプローチが、レイシーの個性かな。

 全体的にソプラノ・サックスが一本のみで響き、静かで穏やか。その一方で、だらしなさのない凛々しい音像が詰まった。このまじめさが70年代の厳しいフリー・ジャズを象徴してるように思えてならない。
 とはいえ緊張感は少なく、リラックスして聴ける。

Track listing:
1. Who Needs It? 2:47
2. Gloompot 4:08
3. Jewgitive 4:45
4. Naufrage 7:11
5. The Dumps 4:17
Sands
6. Stand 6:47
7. Jump 5:15
8. Fall 5:40
9. Song 7:11
10. On Vous Demande 3:46
11. Morning Joy 5:06

Recorded on February and April 1998 at Steve's home in Paris (France)

Producer, Soprano Saxophone, Music By Steve Lacy
Lyrics By Allen Ginsberg (on 9)
Vocals Irene Aebi (on 9)

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