V.A. 「Purple Snow, Forecasting The Minneapolis Sound」(2013)

 過剰な期待はしないほうがいい。70年代後半から80年位までのローカルB級バンドのコンピ。しかし燃え立つ才能がせめぎ合う、当時の地方の音楽シーンを横串で俯瞰できる。丁寧なコンピだ。

 プリンスと同世代の連中が若かりし頃にミネアポリスで活動の音源を集めたコンピ。まず、この音源や写真を収集してブックレットにまとめた編集に頭が下がる。とても貴重なものばかり。
 すごくカッチリ作られたブックレット付のCD2枚組だ。CDを取り出しにくいのが難点。あと、立派過ぎてケースのサイズが一回り大きく、CD棚へ入れづらい。でも装丁も中身も音楽もきちんと作ってる。マスタリングはむやみに飾らず、ローカルっぽい安っぽさをそのまま封じ込めた。

 まず根本を踏まえよう。音楽ジャンルとして、明確なミネアポリス・サウンドってものが当時にあったわけじゃ無い。単にプリンスと同世代の若者をまとめており、現地のベテラン連中まで目配りしていない。
 そもそもミネアポリス・サウンドがあるのか。プリンスが超ビッグになり、彼のフォロワーを総じてくくっただけじゃないか。

 ホーンや鍵盤をシンセで代用するスタンスか。1.2拍めにアクセント置くパターンか。多重録音を試みる独特のグルーヴか。ソウルのみならずロックも貪欲に取り入れるフラットな姿勢か。
 いろんな定義づけは出来るかもしれない。でも少なくとも本盤に収録の音源はファンクを基調としつつも雑多なコンセプトが混在してる。
 どんな時代、どんな地域にも音楽シーンとなる集合体はあったろう。そこで図抜けた才能を持った人が牽引し、互いに影響し合って高め合うって構図もあるだろう。
 その観点で、本盤はとても貴重だ。

 プリンスがあまりにも巨大で異質すぎた。本盤の主役はプリンスではない。2曲で参加に留まる。あくまでのちのタイムであり、アレキサンダー・オニールであり、アンドレ・シモーンであり、ソニー・Tであり。この辺の連中がバンドを掛け持ちもしくは組み合わせながら、色んな音楽を作ってたとわかる。
 のし上がるためにチャンスを逃さず、貪欲に音楽を作り上げる。そんな躍動が楽しい。

 そしてプリンスの地元密着と仲間意識を改めて実感した。のちにNPGに雇うソニー・Tはこの当時の音楽仲間だったんだ。そしてタイムもプリンスは引き上げた。もちろん仲たがいや対立もあったろう。けれどプリンスは最後まで地元ミネアポリスにこだわった。どっか高級地区や全然違う国に根城を構え、スタジオ作業に邁進もできたのに。

 本盤の収録バンドをざっとまとめる。まず、まだ10代だったプリンスが参加した94EAST。別盤でもリイシューが昔から行われてるが、そこで発表済みの1-01"If You See Me"。
 他にプリンスはMusic, Love, & Funk名義の1-14でギターを、The Lewis Connection名義でギターとコーラスをプリンスは弾いている。作曲には関与しておらず、スタジオ・ミュージシャン的なアプローチ。特段騒ぐものじゃない。
 なお本盤の音源は基本、当時に発表されたシングルをまとめたっぽい。ミネアポリスのみか、全米で流通かは不明だが。
 94EAST,The Lewis Connectionともに単独でリイシューあり。Music, Love, & Funkは知らなかった。

 このMusic, Love, & FunkやThe Lewis Connectionで活動してたのが、のちにソニー・TとしてNPGでベースを弾くSonny Thompson。当時からプリンスと共演か。前述の1-17は作曲も担当した。
 本盤ではThe Lewis Connectionの他にHerman Jonesの1-12、Quiet Stormの2-03でもギターとベースを弾いている。当時、あれこれバンドを渡り歩いてたみたい。

 タイムはその前身、Flyte TymeやMind & Matterを収録した。前者が2曲、後者が3曲。Mind & Matterは当時、単独でもアルバムが発掘リイシューされた。
  

 アレキサンダー・オニールも2曲を収録。2-08のほうはエンジニアにWally Traugottを起用、きっちりメジャー・クラスの作り方をしてたとわかる。
 もう一曲、Chris Moonは地元のエンジニアかな。プリンスの"Soft And Wet"の編集、本盤でもThe Lewis Conectionや他の数バンドで録音にクレジットあり。地元密着のスタッフか。

 全般的にばらばらと前述したが、プリンスに通じる粘っこい打ち込みやシンセのファンクだって何曲もあり。逆にプリンスもこの辺の音楽を踏まえた上で才能を開花させたのだな。
 図抜けて出来がいいのは、やはりAndré Cymone。2-13のみの収録だが、さすがに単独で活動を続けただけのことはある。独特のグルーヴあり。プリンスという同世代同地域の巨大な才能がいなければ、もっと語られていたかもしれない。
   

 ということで、当時の熱い様子がわかる良質のコンピ。これを聴きこむならプリンスの盤を聴いたほうが充実した音楽生活を送れると思うが、歴史をたどるには最適の盤と思う。

Track listing:
1-01  94 East If You See Me 5:44
1-02  Aura Taste Of Love 3:29
1-03  Herman Jones I Love You 4:17
1-04  Orville Shannon Oh Lover 3:03
1-05  Mind & Matter I'm Under Your Spell 3:28
1-06  Haze Waiting For The Moment 3:27
1-07  The Prophets Of Peace Get It On 3:10
1-08  Cohesion Expense 3:46
1-09  Mind & Matter Sunshine Lady 4:09
1-10  The Lewis Connection Higher 6:58
1-11  Flyte Tyme It's The Things That You Do 4:49
1-12  Herman Jones Ladie 4:55
1-13  Michael A. Dixon & J.O.Y. You're All I Need 3:48
1-14  Music, Love, & Funk Stone Lover 7:13
1-14  Cohesion Cohesion 2:51
1-16  Haze I Do Love My Lady 4:06
1-17  The Lewis Connection Got To Be Something Here 4:17
2-01  Walter Lewis & The Blue Stars I Have Love At Home 5:20
2-02  Flyte Tyme I've Got You On My Mind 5:06
2-03  Quiet Storm Can You Deal With It 4:34
2-04  Steven Quick 3:22
2-05  The Stylle Band If You Love Me 3:03
2-06  The Girls I've Got My Eyes On You 4:03
2-07  Sue Ann Carwell Should I Or Should I Not? 3:17
2-08  Alexander O'Neal Do You Dare 6:06
2-09  Ronnie Robbins Contagious 4:48
2-10  Alexander O'Neal Borrowed Time 4:36
2-11  Orville Shannon One Life To Live 3:05
2-12  Andre Cymone Somebody Said
2-13  Walter Lewis & The Blue Stars Do It Baby Do It 4:25
2-14  Rockie Robbins Together 5:00
2-15  Mind & Matter No One Else Can Do It To Me Baby 7:00

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