James Brown 「Cold Sweat」(1967)

 ファンキーを極めても、アルバムではまだ自由を手にできてない。それとも大人への脱皮を模索か?

 人種差別があからさまだった時代に活動を開始し、白人と闘いながら自らを守り続けたジェームズ・ブラウン。サウンドの全盛期はシングルが主流、やっつけが多いJBのアルバムだ。そもそもアルバムの構築度をJBは、あまり意識してなかったっぽい。シングルを買う子供でなく、もうちょっと大人向けへ適当に詰め込んだって感じ。曲のダブりも多いし。

 さて、本盤。67年と言えばすでに、JB流ファンキーを強固に構築してた。にもかかわらず、このアルバムはあまりにも散漫だ。アルバムへ固執しなかったJBのスタイルを象徴する一枚とも言えないか。
 
 冒頭がアルバム・タイトルになった名曲。シンプルなフレーズを連発し、ひたすらカッコいいとこだけを抽出した。ホーンが延々とリフを繰り出し、ギターとベース、ドラムが軽快にリズムを刻む。
 JBのシャウトも絶好調。Pt.2の後半で甲高く絶叫し続けるハイテンションと強靭な喉の披露が抜群であり、この時期のJBを象徴する名曲と言える。
 にもかかわらず他のアルバム収録曲はR&B、そしてストリングスをたっぷりかぶせた甘さを志向するという・・・スタッフ側の趣味だろうか。JBは抵抗しなかったのか。それともすべてを飲み込む幅広い顧客志向そのものがJBの狙いだったのか。
 プロデューサーにはJBの名前がクレジットされている。

 Wikiによれば本盤は21作目のLPという。この年、LPでは"James Brown Sings Raw Soul"と"James Brown Plays the Real Thing"と2枚のスタジオ作、"The James Brown Show"と"Live at the Garden"のライブ盤を本盤とは別に発表してる。
 発売は翌年だが、名盤"Live at the Apollo, Volume II"も収録はこの67年だ。そういえばこの盤にも弦が入ってた。

 シングルが凄い。
"Jimmy Mack"
"Bring It Up"
"Kansas City"
"Think"
"Let Yourself Go"
"I Loves You Porgy" ☆
"Mona Lisa" ☆
"Cold Sweat" ☆
"Get It Together"
"The Soul Of J.B."
"I Can't Stand Myself (When You Touch Me)/There Was a Time"

と、11枚に及ぶ。実感しづらいが、ほんとうに当時のJBは暴れまくっていたようだ。月刊誌のように次々と聴き繋いでたってことか。
 ☆を付けた3曲が本盤から。すなわち、大人路線をまず狙い、最後にファンキーで方向転換にも見える。どのくらい当時に発表戦略や計画あったのかは不明だが。

 本LPの収録曲は12曲とけっこう多い。このうち、JBの作曲関与は"Cold Sweat"2曲を除いて"Back Stabbin'"のみ。あとはすべてカバーだ。
 コンボ編成はA3~A6。A4がいわゆるJBスタイルだが、あとはオーソドックスなR&B寄りのアレンジに。JBのシャウトは爽快だが、新奇性は薄い。コンボ編成とはいえ、妙に分厚いビッグバンド的なムードあり。

 さらにオーケストラのアレンジがB1~B5。弦と管がふんだんに響く。これはもう、確信犯だろう。JBがやりたかったんだな。その割に録音がいい加減で荒っぽいのがご愛敬。ボーカルだけダビングっぽい。時代的には同録のはずながら。それくらいボーカルと歌に違和感ある。
 でも"Mona Lisa"での猫なでファルセット気味な歌声は、なんか奇妙で面白い。

 そしてアリバイ工作のように最後はファンキーなインストのB6で締めた。これはこれでかっこいいのが調子良い時代のJBゆえか。

 JBはティーン向けのファンキーさとは別に、ラスベガスのショーでも映える大人な世界観、白人に受けるマーケットを作ろうとしたのかも。似合うかどうかは別にして。
 だがジャケットはファンキー寄りなあたり、覚悟が徹底されていない。

 歴史を俯瞰できる今ならば、JBは媚びずにワン&オンリーを追求して世界を取れたと後付けで言える。だが走り続けて先の見すえる余裕ないJBには、思い付きを片っ端から形にして試行錯誤が必要だったのかもしれない。

 弦のアレンジ、参加ミュージシャンの詳細は不明だ。誰かねっちりみっちり、当時のデータをもとにJBの様子を描いて欲しい。でも、資料が残ってるかな。

Track listing:
A1 Cold Sweat (Part 1)
A2 Cold Sweat (Part 2)
A3 Fever
A4 Kansas City
A5 Stagger Lee
A6 Good Rockin' Tonight
B1 Mona Lisa
B2 I Want To Be Around
B3 Nature Boy
B4 Come Rain Or Come Shine
B5 I Loves You Porgy
B6 Back Stabbin'

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