Peter Brotzmann, 灰野敬二, Jim O'Rourke 「Two City Blues 1」(2015)

 微妙にブロッツマンを立てたが、三人の奔放なインプロが詰まった盤。

 録音は新宿ピットイン、にて。2010年11月23日に行われた、たぶん1stセットすべてを収めた盤。LPとBandcampで発売された。ちなみに2ndセットは"Two City Blues 2"で同時発売あり。

https://trostrecords.bandcamp.com/album/two-city-blues-2

 ペーター・ブロッツマン、灰野敬二、ジム・オルーク。独日米の世代が違う三人のインプロバイザーが集まった。それぞれの共演歴はあっても、たぶん音盤では初のトリオなセッション。
 
 オルークもギターのため灰野と区別つきづらいが。高音主体でかき鳴らしが灰野で、低低音を生かし速弾きがオルークか。
 音像はフリーなインプロが二曲。チューニングからいきなりブロッツマンがテナーを軋ませ、そのまま無秩序で完成度高い即興へ突き進んだ。

 リズムも小節感も希薄。たぶんオルークのギターがあるていどのタイム感を提示するが、ブロッツマンも灰野もかき鳴らしの音は早いが、スピードは読ませない。
 特にブロッツマンが顕著だ。低音から倍音まで無造作に並べる音列は、時に隙間なく素早い。しかし感触は不思議とゆったりしてる。軸となる音列や規則性が一切ないためだろう。
 だから優美に抽象的な音列を吹いてるサックスを、灰野やオルークが煽るような構造にしばしば聴こえる。それが面白い。

 灰野は絶え間なく、小節感から解放されたかき鳴らしを提示した。オルークは逆に小節とフリーを意識的に行き来してるかのよう。
 (1)の途中で鈍い弦の揺らぎが聴こえる。これが灰野の三味線を演奏か。灰野は叫びを入れず楽器演奏へ注力した。これがブロッツマンを立てる結果となる。

 ライブでの出音は知らないが、ミックスではわずかにブロッツマンが目立つ仕上がりだ。
 灰野とオルークがメリハリつけてスローな場面に行っても、ブロッツマンは全くぶれない。ひたすら自分のペースで吹き鳴らし続けた。
 メロディは皆無。だが(1)の終盤、スローになってしばらくしてサックスのブロウは奇妙にブルージーな響きを漂わせた。ふと片山広明を連想する。野太くいななき、そしてメロウな空気を滲ませる。そんな世界観。
 だからタイトルの"Two City Blues"ってのが秀逸だ。なぜ二つ、の都市だろう。現実と幻想、それらを都市に例えたか。

 (2)に向かっても、基本的にアプローチは変わらない。ブロッツマンは唯我独尊で吹き続ける。全くあたりに寄り添わないが、音を聴いてはいる。そのため「空気を読んだ」即興になった。
 これは明確に定義が難しいが・・・三人の音、本盤に詰まった音楽に不協和は無い。音程的に歪んだりへこんだ和音が飛び出しても、雑味が無い。
 
 灰野は楽器を持ち替える。音色を変え、歪みを変える。オルークはあまり音を変えないが、アプローチを変える。(2)での猛烈な速弾きで空気を挑発的に搔き乱した。
 ブロッツマンは全く変わらない。

 そんな三者三様の方向性が、ねじりよじりまとまっていく。ストイックに、まじめに、力強く。

 わかりやすい欧州フリージャズとして、顔ぶれから容易に想像できる音像だ。
 だが、一回限りのスリルと代替や繰り返しの無い斬新さは、間違いなくある。 

Track listing:
1.Two City Blues 1 16:10
2.Eyes Stay the Same 22:02

Personnel:
Peter Brotzmann: alto/tenor-saxophone, tarogato, clarinet
灰野敬二: guitar, voice, shamisen
Jim O‘Rourke: guitar

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