John Zorn 「Sonny Clark Memorial Quartet:Voodoo」(1985)

 ピアニスト、ソニー・クラークのトリビュート盤をジョン・ゾーンが編んだ。

 ソニー・クラークは日本だと"Cool Struttin"(1958)のイメージが強いと思う。というか、ぼくはそのイメージしかない。もっともこれは日本だけらしい。
 クラークは63年に31歳の若さで他界している。だがサイドメンの収録も多く残した。

 今回検索したら、廉価盤ではこの業界でおなじみのCD4枚組LP7枚分の他に、MP3で600円3時間半ってコンピもあった。まあ、廉価盤だな。
  
 クラークはピアニストながら、なぜかアルト・サックス奏者のゾーンが本盤を企画した。サックス奏者を取り上げればいいのに、ちょっとヒネるのがゾーン流か。
 全編、クラークの作曲で真っ向からハード・バップを演奏する。フリーキーな音色を使うにせよ、別にフリーな変奏ではない。あくまでまっとうなジャズ。ストレートにモダン・ジャズへの愛を表現した盤だ。

 変則編成にて当時の楽曲を再評価した"News for Lulu"(1988)、強烈なスピードとパンク精神でオーネットを称えた"Spy vs Spy"(1989)、ジョン・パットンと共演した"Blue Planet Man"(1993)、"Minor Swing"(1994)の系譜で源流に近い位置づけだ。
 ゲーム・ピースなどの実験精神とは別に、ジャズへの愛を素直に表現したとも言える。 
 サイドメンは当時のフリー寄りな顔ぶれ。ベースのRay Drummondが本盤くらいしか共演歴が無く目立つ。デビッド・マレイとのっ共演で活躍してた頃合いか。

 青白く細い線でアルト・サックスが鳴る。他ががっつり太く着実な色の中で、ゾーンの涼やかなサックスがけっこう自己主張した。ピアノ奏者のクラークをテーマにあげたわりに、ゾーンはきっちりフロントで目立ってる。

 クラークのオリジナル・音源をきちんと聴いておらず比較ができないが・・・。本盤では変にひねらず丁寧に当時のジャズを再現した印象だ。
 ポイントは粘っこいブルーズさ。スマートな洗練を持ちつつも、きれいにまとめずファンキーなうねりは保ってる。そもそもクールに疾走するゾーンが音頭を取ることで、いわゆる黒っぽいノリは希薄なのだが。そこらへんのノリを作る狙いが、ドラモンドの起用か。

 殊勲賞はやはりホーヴィッツ。むやみに弾きまくらないのに、きっちりピアノの存在感を出した。さりげないアクセントやタッチの武骨だが着実な指使いが見事。
 実験心や冒険性には土台がいる。その確かな着実さを、往年のスリルはそのままにハードバップ仕立てで味わえる一枚。

 85年の時代性は、やはりゾーンのフリーキーなトーン。あとはピアノのちょっと硬質なタッチくらい。むしろベースとドラムは無用に暴れず、実に着実なビートを刻んだ。
 録音時点から見た約20年前の音楽へ、ノスタルジーでなく愛情を注いだ録音だ。ゾーンらの録音から30年たった今聴くと、当時の再解釈や懐古趣味を狙ったジャズよりよっぽど普遍性を持ったサウンドに聴こえる。
 
 50年代のジャズではない。だがその骨格を保ったまま、若々しい筋肉を備えた演奏に聴こえる。

Track listing:
1. Cool Struttin' 5:27
2. Minor Meeting 4:36
3. Nicely 5:34
4. Something Special 4:45
5. Voodoo 10:57
6. Sonia 4:02
7. Sonny's Crib 7:40

Personnel:
John Zorn: alto saxophone
Wayne Horvitz: keyboards
Ray Drummond: bass
Bobby Previte: drums

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