John Coltrane 「Coltrane Jazz」(1961)

 名盤2枚に挟まれた、寄せ集めで熱い勢いを抽出した盤。
 

 ジョン・コルトレーンの名盤として"Giant Steps"(1960)と"My Favorite Things"(1961)は知っている。だがこの盤、それらに比べてあまり喧伝された印象が無い。それぞれのアルバムと、同じ日のセッションを含んでるにもかかわらず。
 かくいう僕も今回初めて聴いた。

 59年末から60年はコルトレーンがジャズ史に残る名盤を連発始めた時期ってイメージあり。ディスコグラフィで言うと、プレスティッジやブルーノートと契約が58年まで。アトランティックに移り、"Giant Steps"、本盤、"My Favorite Things"、"Ole Coltrane"を残した。
 そしてインパルス!へ移籍し"Africa/Brass"(1961)で幕を開け、"Ballads" (1963)を吹きこむ一方で"A Love Supreme" (1965)に代表される、求道的でフリー寄りのジャズへ邁進していった。

   
 そんな大いなる飛翔を始めた時期の録音が本盤。三種類のセッションを収めてる。思い切りあとの発売なら契約消化の発掘寄せ集めかと思うのだが、リリース順では"My Favorite Things"の前。にもかかわらず、この日のセッションも本盤に入ってる。
 Wikiによると"Giant Steps"が60年1月の発売。
 本盤が61年1月にリリースされ、わずか二ヵ月後の同年3月に"My Favorite Things"の発売に至ってる。どういうマーケティングだったのだろう。それぞれ、どんな評価を当時は得てたのだろう。当時の空気感が知りたい。

 ともかく本盤、3種類のセッションを収めた。59年11月24日から(1),(7)、翌月12月2日から(3)~(6)。そして60年10月21日が(2)。
 "Giant Steps"は12月2日、"My Favorite Things"は10月21日の音源をそれぞれ収録してる。よって本盤収録曲は両方の空気感を共有してる。当時の埋め草かなあ。それにしては"My Favorite Things"の手ごたえをずいぶん安っぽく、先行発売したものだ。

 コルトレーンはこのとき、以下のディスコグラフィーによればマイルス・バンドと自己の録音を併行して活発に活動していた。
http://www.jazzdisco.org/john-coltrane/discography/session-index/
 59年の末に本盤収録のセッションを2回行った後、年明けからはマイルス・バンドでツアー。春から自己のカルテットでツアーを行ってる。その後、おもむろに10月からレコーディングへ向かったようだ。
 本盤のサイドメンは、大きく分けて二つ。まずはWynton Kelly(p),Paul Chambers(b),Jimmy Cobb(ds)と、当時のマイルス・クインテット組。
 もう一つがMcCoy Tyner(p),Steve Davis(b),Elvin Jones(ds)の若手組。

 本盤の過半数はマイルス・クインテット組で録音された。だが60年秋のツアーは若手組(ドラムは違うが)。

 つまり本盤はマイルス組の力を借りつつ形を整えたが、自己の色を予感させる分岐点の盤、と捉えればいいのかな。

 演奏で言うと、溌剌さはある。その一方で危ういサックスもところどころで漏れている。ぶっちゃけ、華が無い。不思議だ。そういう意味で、"Giant Steps"と"My Favorite Things"のアウトテイク集な色合いがぷんぷんする。

 埋め尽くす音列と豪快なコード・チェンジでめくるめくテクニックを駆使した"Giant Steps"、呪術的な痛快さを滲ませた"My Favorite Things"。それらに比べ、本盤の収録曲はかなり無難だ。
 カバー曲は(1)(3)(6)だけ、ほとんどがコルトレーンのオリジナル。なおかつほぼすべての演奏がマイルス・バンドの凄腕勢なのに。あまりジャズの名盤で本盤が上がらないのには、それなりに理由があるのか。

 コルトレーンの魅力の一つは、饒舌さ。だがタンギングやブレスがあいまいで、音色がヨレってしまうと、何とも頼りなくなってしまう。線の細さまでいくと、それはそれで個性だが。
 演奏として(4)の不穏さが一番印象に残った。(7)のバラードも良い。(2)の不穏な熱さも、荒っぽいが独特の匂いが香る。
 全体的には悪くない。けれども物足りない。そんな感じ。ぼくはまだ十分にこの盤を咀嚼してない。そのうち、新しい魅力に気づくのかもしれない。

Track listing:
1. Little Old Lady 4:25
2. Village Blues 5:21
3. My Shining Hour 4:50
4. Fifth House 4:38
5. Harmonique 4:10
6. Like Sonny 5:51
7. I'll Wait And Pray 3:32
8. Some Other Blues 5:33

November 24, 1959 (1, 7 &10)
December 2, 1959 (3-6 & 8)
October 21, 1960 (2 & 12)

Personnel:
John Coltrane - tenor saxophone
Wynton Kelly - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
McCoy Tyner - piano on "Village Blues"
Steve Davis - bass on "Village Blues"
Elvin Jones - drums on "Village Blues"
Cedar Walton - piano on "Like Sonny" alternate versions
Lex Humphries - drums on "Like Sonny" alternate versions

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