TZ 7634:John Zorn / Fred Frith "Late Works"(2010)

 力押し一辺倒でなく、押し引きを操る老練なインプロが痛快だ。

 録音やライブで多数の共演歴あるジョン・ゾーンとフレッド・フリス。TZADIKからリリースの本盤のカテゴリーはアーカイブ・シリーズ、すなわちゾーンの作曲ではない。
 キー・シリーズ、すなわち歴史的な特別プロジェクトを収めるカテゴリーでリリースされた。あくまで本盤はフリスに敬意を払うと同時に、ゾーンのイニシアティブに頼らない対等な音楽って意味だろう。

 アルバムとしては"The Art of Memory II"(2008)以来、二年ぶりのデュオ。ただしこの盤は83~85年の音源を復刻となる。新録では04年(録音は03年)のゾーン50歳誕生日企画で、連続一ヶ月ライブ盤10部作の一環、"50th Birthday Celebration Volume 5"以来。つまり5年ぶりのレコーディングか。
 09年10月16日、NYのスタジオであっという間に録られ、翌年4月に発売。スピーディかつ潔い一枚に仕上がった。

 ゾーンはある意味、即興の引き出しが明確だ。一番わかりやすいイメージは、いななくような高音のフラジオ。タンギングを筆頭に多彩な超絶技巧を駆使し、サックスから悲鳴を出させる。
 だが本盤はその要素ももちろんある一方で、もっとスローで穏やかなイメージも出した

 フリスはあまり聴きこんでおらず、明確なサウンド・イメージは書けない。しいて言うとメロディやフレーズから解放されつつ、ノイズにも頼らない弾き方。例えばベイリーのように準拠枠から外れることを目的、みたいな使命感もない。あくまで自由にギターを発音楽器として操るイメージがある。
 
 そこで本盤。アイディアの奔放さにやられた。特にゾーンが力押しにとどまらず、フリスに合わせてサックスの発音の可能性を猛烈に披露してる。
 エレキギターのフリスは、エフェクターに加え弦やボディを叩いたりと多彩さを持つ。いっぽうでアルト・サックス一本のゾーンは、呼吸と指とタンギングを膨大に駆使して、とっても多彩な音色を提示した。

 長尺一本やりでなく、2分から9分まで短めの作品を10曲並べた。タイトル付きだが、特段の物語性は読み取れていない。どういうコンセプトだろう。
 サウンドはノイズ寄りから重厚な静けさまで幅広い。跳躍と転換の嵐だ。決して間口は広くないが、インプロ好きにはこたえられない。
 弛緩や手癖に陥る場面が皆無で、瞬間的なアイディアのぶつけ合いと、息の合った疾走感が抜群の一体感あり。

 ビートや小節感は希薄で、フレーズの流れがとうとうと流れた。一曲の間でテンポがころころ変わり、縛られない奔放さが美しい。
 鋭さやスリルはあるが、カラッと明るい賑やかさが全編を覆う。それでいて浮ついたやり取りでもない。しっかり地に足ついた安定感がベテランならではの味わいだろう。

 "Late Works"って終焉を漂わす寂し気なタイトルだが、音楽そのものはイキがいい。
 インプロのすばらしさが存分に味わえる。聴くたびに新しい発見がある一枚。

Track listing:
1. Foetid Ceremony 5:34
2. Mosquito Slats 2:09
3. Horse Rehab 5:43
4. Legend Of The Small 2:17
5. Baffled Hats 3:20
6. Movement Of Harried Angels 7:29
7. The Fouth Mind 9:40
8. Creature Comforts 3:11
9. Slow Lattice 5:58
10. Ankle Time 5:03

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