Abdullah Ibrahim 「African Herbs」(1975)

 彼の南ア時代の音源をLP式に聴いてみよう。ホーン隊を投入した伸びやかなジャズ。

 ダラー・ブランド名義のころ、アブドゥーラ・イブラヒムは故郷の南アで、現地ミュージシャンと数回のレコーディングを行った。それらは現地で複数のアルバムとして残ってる。70年代中頃の話。
 一連のセッションはアフリカの雄大さがうまいことジャズに溶け込む、素晴らしい演奏が目白押しだ。

 のちにコンピレーションで幾度も再発され、後年でも容易に当時の音源が聴けるのは嬉しい。
 ただ、見た時に全部買わないとダメだった。ちょっと時期を外すと廃盤で入手困難。なおかつCD容量めいっぱいに再編集され、LP単位で振り返れない。さらに曲順はたぶん一緒だが、複数のコンピ盤が再再発の時にジャケットが変わり、どれを聴いたことあるのか混乱してしまう。ぼくも全部は持ってない・・・のかな。よくわからない。

 例えば今なら、この4枚。すべて廃盤。一枚がとんでもないプレミアついている。そろそろ再々々発で全貌をきれいに整理して欲しい。
   

 曲調単位でまとめられ、録音時期はまちまちの編集が施されてる。だからコンピ盤単位では録音データで頭を整理が手間でややこしい。当時の南ア音源を網羅してない気もする。
 ならばせっかくだしLP曲単位で並べ替えて聴いてみよう、が本項の企画となる。やってみたかったんだ。

 さて、本盤。長めの曲を3曲収録した。B面は1曲だけ。アフリカ音楽はカセット中心と思ってたが、こういうLPもいろいろ出てたんだな。
 当時75年にアメリカでは"Soweto"のタイトルで同じ内容がChiaroscuro Recordsより発表あったらしい。南アの原盤レーベルはSun。

 (1)は穏やかなイブラヒムのエレピが心地よい。今一つ抜けが悪い演奏も、逆にのどかさを強調した。甘いビブラフォン寄りの音色が静かに鳴り、甲高くホーン隊が鮮やかなフレーズを広げた。
 ソプラノ・サックスでイブラヒムのクレジットもあり。ってことはホーンのリフはダビングなの?

 テナーのソロを筆頭に、ブラスがアドリブとるスペースもあるのだが。この1曲だけ、本盤では別のセッション。ドラムとベースが他の2曲と違う。
 Basil 'Mannenberg' Coetzee(ts)とのカルテット編成に、あとでソプラノ・サックスのダビングでテーマをかぶせたってことか。

 終盤でホーン隊のロングトーンなリフを、強引に左から右、右から左へ思いっきりパンさせるミックスが豪快で面白い。ジャズの生演奏を記録でなく、音盤作品としてスペイシーさを強調か、思い切り遊んでる。

 (2)は生ピアノながらクラビネットっぽい金属質な響きもあり。やはりエレピか。
 ここからホーン隊4人の分厚いうねりが本格的に味わえる。さほどテーマは粘らず、すぐにサックスのソロへ向かった。
 エレピのアドリブも温かくて気持ちいい。激しく叩かず、しっかりしたアタックだが柔らかさが残る。弾きまくりの熱いテンションより、のどかな風景。鍵盤ソロからサックスのアドリブへ滑らかに繋がる、スムーズな流れも見事だ。

 ベースがオスティナートを繰り返す。一つのコードで延々付き進む酩酊感がたまらない。コード進行はあるけれど、ここぞってときは一つのオスティナートが続いた。
 ホーン隊のソロにはうっすらとエコーがかかる。牧歌的な風景は狙って作られたもの。
 終盤はきっちりけりをつけず、なんだかダラダラと終わってしまう。

 B面全部を使った"Soweto Is Where It's At"も名曲。赤んぼの鳴き声からフェイドインでエレピが滑り込み、大編成の華やかなブラス隊が舞う。
 転がる鍵盤、唸るシンプルなビート。テクニックとは別次元で一体感あるグルーヴが素晴らしい。
 惜しむらくはサックスが少し痩せて聴こえること。なぜだろう。
 この曲はソロよりも全体の流れに身を任せ聴きたい。アドリブ・フレーズの妙味より、淡々と変わらずに続くうねりそのものが心地よいから。 
 正直サックスはリードミスっぽい場面もしばしば、結構荒っぽいんだ。

 そして演奏はフェイドアウト、再び赤ん坊の泣き声で終わってしまう。

Track listing:
A1. African Herbs 10:15
A2. Sathima 11:22
B. Soweto Is Where It's At 17:40

Personnel
Electric Piano,Soprano Saxophone (A1) - Dollar Brand

Bass - Basil Moses (A1), Sipho Gumede (A2, B)
Drums - Gilbert Mathews (A1), Peter Morake (A2, B)

Tenor Saxophone - Basil 'Mannenberg' Coetzee, Duku Makasi (A2, B)
Trumpet - Dennis Mpale (A2, B)
Alto Saxophone - Barney Rachabane (A2, B)

Producer - Rashid Vally

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