Sanhedrin 「さあ 真ん中だ どんな感じ」(2008)

 ラフな録音だがエッジを立てたマスタリングで、鋭く勢いある演奏を味わえる。

 灰野とルインズのKneadから派生し、是巨人と灰野の融合へ至ったようなバンドがサンヘドリン。のちにナスノは不失者や静寂など、深く灰野と関わって行く。吉田と灰野はそもそも共演歴が長い。

 三人の演奏って厳密には、Bus Ratchもゲスト参加した京都でのライブがきっかけか。このときの模様は"Live At Cafe Independants Friday 23.January.2004"(2004)で音盤になっている。
 本盤のレコ発ライブを同年6~7月に神戸、名古屋、東京で実施。その7月14日吉祥寺Manda-la 2音源はブートで出回っていた。

 灰野の本"捧げる"のライブ記録によれば05年3月24日三軒茶屋グレープフルーツ・ムーンのライブにて、初めてサンヘドリン名義でライブを行った。
 すなわち10年以上の活動になる。けれども音盤は少ない。まして本盤はライブ会場での販売が中心の限定盤らしく、けっこう入手困難だった。
 
 サンヘドリン名義のアルバムとしては2ndにあたり、"満場一致は無効"(2005)以来になる。
 発売元はBreathing Bass Records。委細は不明で、本盤以外のリリースがあるのかもわからない。灰野や吉田のレーベルではない。ナスノがコントロールか、それとも全く独自のインディなのか。

 録音は07年3月3日の新大久保アースドムと、同年7月9日の池袋Rosaで行われたライブ音源をまとめた。全曲でなく抜粋だろう。
 委細クレジットは不明だが、たぶんミックスとマスタリングは吉田達也。痩せてエッジの柔らかい響きを、逆にイコライジングで細かく立てて分離良く仕立てた。
 ハウリングもきれいに収めるオーディエンス録音風の響きだが、個々の楽器をきちんと聴かせつつ、誰か一人を目立たせないでアンサンブルをきれいに整えたバランス感覚が良い。

 8曲にトラック切りされてるが、ほぼテンションは同一で一気呵成に進む。楽曲ごとに極端なバラエティ付けは無い。
 即興巧者ゆえの安定感で、変な話、破綻は無い。これがサンヘドリンの難しいところ。演奏はスリリングだし、インタープレイの絶妙さも型にはまらぬ。だが三者三様の個性が強烈すぎて、逆にイメージから極端に乖離しない。凄いんだろうな、って想像通りの音が詰まってる。

 本盤でもナスノや吉田がタイトだが変拍子に向かうインプロをしても、互いのグルーヴが破綻しない。きっちり譜面のように突き進む。もとより譜割から解放されたギターを響かせる灰野は自由さを保ったままだ。
 ではここから、いかに特異性を出すか。ものすごく高いところにハードルが設定され、それを飛び越える期待をしてしまう。聴き手として。贅沢で傲慢でとんでもない話だが。

 だからむしろちょっとしたところに面白みを感じる。例えば(4)の冒頭。エフェクターかな、ベースがうにょんと太く鳴りシンセめいた響きを出す。そんなささいなポイントに耳を惹かれた。
 そこでいったん頭がリセットされる。しばらく後で聴ける高速のドラムとベースのインタープレイから5拍子風に転換、さらに奔放なテンポ・チェンジを譜面かのようにガラガラ変えていくリズムの妙味を新鮮に聴けた。
 なお灰野はどんなリズムでも構わずにギターを唸らせる。その一方で、根本の大きなうねりや盛り上がりの変貌をずらさない。阿吽の呼吸はぴったり合わせる。しかし予定調和な馴れ合いは全く感じぬ。
 三人とも構成やお約束がない。猛烈なスピードで疾走し、切り倒す。

 (5)はフェイドイン、いきなりハイテンションのトップスピードから始まった。ここから別日の音源か。前半より音質は籠った感じ。三人のバランスも団子っぽい、よりオーディエンス録音な響きだ。
 それを周波数帯ごとに切り分け、ミックスしたかのよう。ベースがくっきり唸り、ドラムはハイピッチのタムが異様に前面へ出た。乱打し続けるシンバルは空気の振動が強調される。
 エレキギターの轟音にシンバルの帯域が混ざってるかのよう。

 (5)の中盤で強烈にスケール大きく灰野がギターを吼えさせ音像を包み込み、リズム隊が一歩引いて奥行き深い空間を作る瞬間が、めちゃくちゃにスリリングだった。
 そして灰野が「時間が・・・こっちに・・・」と、つぶやくように歌う。

 音質が飽和することでの凄みもあり。(7)の中盤で灰野の叫びから空間を塗りつぶすようなギターの轟音が炸裂するさまも、恐ろしくかっこいい。ベースがぐいぐいドライブし、ドラムは叩きのめす。闇の中をベースが切り裂くようにミックスされた。

 とにかく三人の個性がぶつかり合う。だが散逸しない一体感を持ち、互いに寄り添わない。この絶妙な関係性が魅力だ。
 饒舌に奔放に目まぐるしく世界が変わり、重たく鋭く勇ましく暴れ続ける。力のぶつかり合いが爽快に炸裂した。
 
Track listing:
1 飛び立つがいい ここからも 9:03
2 よくある事とは言わせない 5:43
3 気体になりたがるゲートリバーブ 5:11
4 真っ二つにする。どっちにへ も傾くなよ 5:08
5 これも みんな お前の物 9:42
6 「許さなくていいよ」という認識の思い込みの呪縛からいつ抜け出られるものか? 6:29
7 さあ 真ん中だ どんな感じ Part-1 15:33
8 さあ 真ん中だ どんな感じ Part-2 10:32

Personnel:
灰野敬二:Vo, g, Painting
吉田達也:ds
ナスノミツル;b
Recorded March 3, 2007 at Earthdom and June 9, 2007 at Live Inn Rosa, Tokyo.

関連記事

コメント

非公開コメント