Raekwon 「Only Built 4 Cuban Linx 2」(2009)

 これは二番煎じか、新たな挑戦か。試行錯誤と豪華さに挟まれた一枚。

 反逆児は成功し自らの記念盤発表すらも可能にした。
 ヒップホップにどっぷりでもなく、異国の地からたまに眺めるとヒップホップの大成功ぶりは不思議に見える。カウンター・カルチャーでアウトローに見えるのに、なぜこうも成功っぷりが成立するのだろう。マーケットの大きさなのかなあ。

 ウータン・クランがデビューは92年。ヒップホップにはさほど興味なかったが、梁山泊みたいにワサワサっと多くのメンバーが溢れるパワーには惹かれた。次々にアルバムを出しソロ活動を広げるビジネス・モデルにも面白いと思った。
 その初期に"Only Built 4 Cuban Linx..."(1994)にて、RZAの音作りで強力なアルバムを作り、メンバーだけでなくGhostface Killahを強くアピール。機を逃さず仲間を引き立てるしたたかな結束ぶりも凄いと思った。

 それから約15年。パート2を敢えてリリースした。これは二番煎じか、新たな挑戦か。
 あれこれ検索しながら聴き返した感想が、本項だ。

  "Only Built 4 Cuban Linx..."はコンパクトで力強いアルバムだった。RZAの美学がきちんとアルバムを統一し、ウー一派の色が濃厚に漂い一本筋が通ってた。
 だが本盤は豪華ながら、なんとも詰め込みまくった。ラップだけでなく歌が前に出て、ループも妙に音圧ある豪華な作りが、成功者の余裕とゆとりを漂わす。

 本盤は発売まで数年を要したみたい。レイクォンが完成度にこだわり、発表のタイミングも紆余曲折あった。英語Wikiで事細かに当時の様子が書かれている。
 それをなぞっても仕方ないので、ここでは音楽感想でまとめよう。

 平たく言うと、豪華絢爛。小品も含め22曲を詰め込んだ。i-Tunesの盤だとさらに数曲ボーナスが増える。ここではCDのバージョンで聴いているが。

 まず、RZA。どんなにRZAが大物になろうとも、ウータンが巨大プロジェクト化して派生メンバーが増えようとも、一軍たるレイクォンはRZAの協力を得られる。
 だがRZAがプロデュースは(6)と(8)だけ。あとはウータンに拘らず、さまざまなプロデューサーを投入した。

 経歴不明な人もいるが、ウータン一派と思しきプロデューサーはBT、Icewater Productions、True Master、Karim Justice、Mathematics。トラックにして7曲、RZAの製作と合わせても過半数を占めない。

 つまり3曲をプロデュースしたJ Dillaを筆頭にPete Rock、Marley Marl、Necro、Erick Sermon、The Alchemist、Scram Jones、MoSS、Dr. Dre/Mark Batsonと多数の外部プロデューサーを迎えた。
 あえて一人に絞らないのは人脈の多彩さをアピールか。どうやらいろんな要素を詰め込む顔の広さも成功の一要素らしいし。

 客演ラッパーもしかり。まずウーの一軍からはInspectah Deck, Ghostface Killah、Method Man、RZA、Cappadonna、GZA、Masta Killaとずらりフルメンバー。敢えて一曲で共演しないのは、いろんなしがらみや戦略だろう。むしろ参加無いU-Godのほうが不自然だ。
 ゴーストとデックの比率が比較的多いかな。なお一軍メンバーのクレジットはaka表記をちりばめて、謎めいている。

 ウー一派も意外と多い。Popa Wu、Suga Bang Bang、Tash Mahogany、Blue Raspberry。 そして純粋なゲストがJadakiss、Styles P、Beanie Sigel、Lyfe Jennings、Slick Rick、Busta Rhymes。
 
 一通り聴き返したが、全体的に気が抜けてはいない。したたかなパンチ力はまだ健在だ。いじくりまわして煮え切らなさが特徴か。完成度を試行錯誤できる、環境を持ってしまったことが難点かもしれない。
 何も考えず鷹揚に誰かに任せ、興が乗るままラップする。仲間を呼んでバカ騒ぎ、もしくはセレブを招いて話題作りの客演。そんな大ざっぱさでいいんだが。当事者であり、成功者であり、いろんなしがらみを背負うとそうもいかなんだろう。

 そうか、ぼくはヒップホップへ、ギラギラした欲望の表出を求めてたのか。成功者が金ぴかをまとって余裕の小理屈をこねるさまではない。その地位へたどり着くべく、貪欲に喚き散らす欲望そのものの炸裂を聴きたいみたい。

 本人の評価や前評判も知らない。歌詞も読まず、クラブで聴いてすらもいない。ただ音楽として、自室かイヤフォンで移動中に聴くぼくのスタイルは、ヒップホップの聴き方として圧倒的に間違ってる。最低でもシーンの流れや人脈くらいは頭に入れないと、個性がつかめない。
 とはいえだからこそ、聴くときにビートの強度に加えサウンドの勢いが欲しい。型にはまり切らない個性あるラップを聴きたいから。
 もし成功ゆえの寛ぎや満足の雰囲気が欲しいなら、別のジャンルの盤を聴く。ヒップホップでなくともいい。

 本盤からシングルは5曲切られた。09年5月から10月の間で、矢継ぎ早に。(8)(2),"Walk Wit Me"(i-tunsボーナス盤に収録,(15),(18)の順。PVもそれぞれあった。

  

 

 キラーチューンがこれ、ってとこまで聴き込めてない。もっと咀嚼したら本盤へ、さらなる愛着がわくかも。それよりは"Only Built 4 Cuban Linx..."(1994)を再聴したいってのも本音だが。

Track listing: 【featuring】,Prod.
1. Return of the North Star 【Popa Wu】BT 2:39
2. House of Flying Daggers 【Inspectah Deck, Ghostface Killah & Method Man】J Dilla 3:51
3. Sonny's Missing  Pete Rock 2:28
4. Pyrex Vision  Marley Marl 0:54
5. Cold Outside 【Ghostface Killah & Suga Bang Bang】Icewater Productions 4:40
6. Black Mozart 【Inspectah Deck, RZA & Tash Mahogany】RZA 3:24
7. Gihad 【Ghostface Killah】Necro 2:57
8. New Wu 【Ghostface Killah & Method Man】RZA 3:50
9. Penitentiary 【Ghostface Killah】BT 2:35
10. Baggin Crack  Erick Sermon 1:58
11. Surgical Gloves  The Alchemist 3:24
12. Broken Safety 【Jadakiss & Styles P】Scram Jones 2:45
13. Canal Street  Icewater Productions 3:37
14. Ason Jones  J Dilla 3:06
15. Have Mercy 【Beanie Sigel & Blue Raspberry】MoSS 3:51
16. 10 Bricks 【Cappadonna & Ghostface Killah】J Dilla 3:16
17. Fat Lady Sings  True Master 2:17
18. Catalina 【Lyfe Jennings】Dr. Dre, Mark Batson 3:28
19. We Will Rob You 【GZA, Masta Killa & Slick Rick】Justice Kareem 3:15
20. About Me 【Busta Rhymes】Dr. Dre, Mark Batson 3:59
21. Mean Streets 【Inspectah Deck, Ghostface Killah & Suga Bang Bang】Mathematics 4:29
22. Kiss the Ring 【Inspectah Deck & Masta Killa】Scram Jones 4:09

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