Marike Van Dijk 「The Stereography Project」(2015)

 繊細な大編成ジャズ。ビッグ・バンドではない。
  

 リーダーのMarike Van Dijkはオランダのサックス奏者。
 "Patches Of Blue"(2010)が音盤デビューになる。公式Webはこちら。
http://www.marikevandijk.com/
 だが本盤は作曲家へ軸足を置き、ソロは3曲のみ。吹いてもアンサンブルの一員でアレンジ構築のほうへ力を注いだ。NYブルックリンで14年の4月29日、一日であっさりと録音。
 
 この記事によると本盤は一過性のアイディアでなくバンドとしてNY拠点でかつどうとある。確かに彼女のWebでライブ情報を追うと13年12月11日にこのバンドでライブの記録あり、15年のレコ発数回に加えて16年2月4日にもライブをやっている。大編成なのに何回もブッキングはすごいな。ライブ映像がYoutubeにあった。本盤の(1)、(2)、(3)を演奏してる。ほかにもいくつか、ライブ映像がYoutubeにあった。
  

 基本はインスト。作曲は彼女だが(8)は共作。(4)はビートルズをカバーした。この(4)と(6)でボーカリストがゲスト参加した。
 可愛らしく滑らかな響きを弦も混ぜた編成で紡ぐ。指揮を自分が行わず、別に立てるところは妙に潔く興味深い。そのへんは我を張らないようだ。
 ぶっちゃけるとサウンドの耳触りは水谷浩章のPhoneliteに似てる。水谷ほど本盤の響きは細密じゃないけれど。

 編成は弦4人に管が5人、ピアノ・トリオのリズムで12人編成。いわゆるビッグバンド狙いではない。むしろラウンジ的な大人のクラブ・ジャズを志向のよう。けれども営業仕事が目的でなく、あくまで彼女のオリジナルを演奏する。

 スリリングな斬り合いや前衛的な鋭さではない。ふっくらと柔らかく優しい、けれどもどこか個性を持った響き。ムード音楽に堕さず、しっかりと芯を持つ。
 アドリブのソロももちろんあるが、即興がメインでなくオーケストレーションに軸足を置いた。

 いちばん安易な方向性は、ムード音楽。けれど本盤はそんな甘い選択を欠片も取らない。クラシックも視野の上品で洗練、そしてどこか不思議な響きのサウンドを丁寧に描いた。
 鋭く無く、スマートだが飾りで終わらない。シンプルだが和音感は工夫して、硬質な旋律だがポップに聴かせる。
 聴きやすい前衛音楽、を目指してるのかもしれない。新しさはこのあと、じわじわ出てきそう。大編成のため活動は大変かもしれないが、末永く温めて欲しい可能性持ったアンサンブルの盤だ。

Track listing:
1. I Am Not A Robot
2. 322423
3. The End
4. She's Leaving Home
5. Jean Jacques
6. Christmas
7. 22e (To Everyone I Miss)
8. Walsje

Personnel:
Soprano Saxophone, Alto Saxophone - Marike Van Dijk

Conductor - Dan Pratt
Bass Clarinet, Alto Saxophone - Ben Van Gelder
Flute, Tenor Saxophone - Anna Webber
Trombone - Alan Ferber
Clarinet, Tenor Saxophone - Lucas Pino
Drums - Mark Schilders
Bass - Rick Rosato
Piano - Manuel Schmiedel

Viola - Eric Lemmon
Violin - Elinor Speirs, Sita Chay
Cello - Amanda Gookin

Vocals - Defne Sahin (tracks: 4, 6), Ruben Samama (tracks: 4)

関連記事

コメント

非公開コメント