Frank Zappa 「Little Dots」(2016)

 プチ・ワズー期のライブ音源をギター・ソロに着目し編んだ発掘音源盤。

 2016年はゲイルの他界に伴い兄弟間の確執があらわになり、相続対策と思しき遺産売却のニュースがたて続き、何だか切ない一年だった。その流れかザッパ・トラストの盤も自主流通からユニバーサル配給に変更。
 さらに2016年は次々と乱暴に、何枚もアルバムが発表された。いい加減、父親の遺産で食うのも飽きたか。

 本盤はそんな一枚。マスタリングを工夫してるが、けっこう音は悪い。しゅわしゅわとシンバルが溶けている。低音を整理してるが、音は揺らぎヨレる。全体的にブートに毛が生えた程度。もちろんマニア向けだ。

 72年末にツアーのみで発表したPetit Wazooと呼ばれるホーン隊が主流のバンドによるライブ音源。"Imaginary Diseases"(2006)に続く発掘となる。
 つまりは10年ぶり。再発ですらも、一気に発表せずこれだけ間を空けた。
 ザッパが93年に他界し、既に20年以上の月日がたつ。もうそんなになるのか、と10年ぶりに発表の本盤企画と気づき、しみじみした。

 この時期はザッパが目まぐるしく活動した時期。71年12月、モントルーのライブにて機材を火事で焼失。いわゆる"Smoke on the Water"。直後のロンドンでオーケストラ・ピットに突き落とされ、骨折の大けがをしたザッパ。

 静養の中でホーン隊を強調した音楽のアイディアを思いつき、車いすのままリハーサルを行う。その発掘音源が"Joe's Domage"(2004)だ。
 これが15枚目のオリジナル・アルバムでソロ名義の"Waka / Jawaka"。録音は72年4-5月だ。7月に早速リリースされた。
 9/2に"Wazoo"(2007)で音源発掘されたライブを実施してる。
 いっぽうで録音時期は"Waka / Jawaka"と同じ、だがアイディアをさらに発展させたマザーズ名義"The Grand Wazoo"が同年11月にリリース。
 そしてぐっとメンバーを減らし、このプチ・ワズーは72年の冬にツアーへ出た。
 
 本盤のサウンドはかっちりと整理され、整っている。即興はほとんどメンバーに行わせず、アドリブの場所で自由を与えるザッパのスタイルでまとめられた。
 ジャズ風のダイナミズムより、クラシックな方向性か。唐突な変拍子や奇妙な和音、無機質な音程の上下は控えめで、かなり聴きやすい。

 特に本盤は"Cosmik Debris"以外、インストに着目した編集だがすんなりとザッパの世界へ入れた。曲間以外は編集がたぶん無い。したがってちょっと冗長に感じてしまう場面もあるけれど。変に好みに走ったハサミが入るより、よっぽどマシ。
 ザッパの編集は、フランク以外には行って欲しくない。

 ギター・ソロもふんだんにあるけれど、印象はずいぶんストレート。手癖弾きはもちろん変わらないが、譜割はビートに合わせる格好でさほど揺らしてない。ザッパ節が感じられない場面もいくつか。そこはザッパじゃなくTony Duranのソロかも。

 ストレートに叩きのめすドラムと、うねるベースは逆にオーソドックス。70年代中盤の熱さも、70年代後半のひねりも薄い、サウンドはスマートな仕上がりだ。
 ザッパの構築度は年を経るにつれ密度と精度が増していく。このときはまだ、ミュージシャンのテクニックを見い見い、譜面で縛った感じかな。

 "Columbia, S.C."でのホーン隊が奏でるリフから、ギター・ソロへ雪崩れる瞬間が素晴らしくかっこよかった。

 テリー、ヴィニー、チャドとドラムがどんどんタイトへ行くにつれ、ルースを筆頭にテクニシャンが貢献につれ、ザッパのアンサンブルは驚異的な締まりっぷりと複雑さをこのあと、増していった。

 最後に本盤でのメンバーやツアー日程を整理しておく。

 ドラムはセッション・ミュージシャンのジム・ゴードン。サイド・ギターのTony Duranも同様だが、この時期はザッパ・バンドに加わってた。ベースのDave Parlatoも似たようなもの。彼は断続的に70年代後半までザッパと帯同する。この三人はあまりザッパ・バンドの一員として語られないけれど。
 鍵盤はおらず、あとはすべてホーン隊とザッパのギター。潔い編成だ。

 ホーン隊の変遷を"Joe's Domage"から変遷を見てみよう。"Joe's Domage"参加で本盤に残ったのは、Malcolm McNab(tp)のみ。ほかは全員変わってる。なおMalcolmは"Waka / Jawaka"に参加無し。
 すると"Waka / Jawaka"セッション、"Joe's Domage"、"The Grand Wazoo"セッションの順?ならばすごく短期間で"The Grand Wazoo"は完成っぽい。

 とにかく"The Grand Wazoo"でEarl Dumler(woodwinds) が参加。"Wazoo"ではMalcolm、Earlに加えGlenn Ferris(tb),Bruce Fowler(tb)も加わった。
 "Wazoo"メンバーは大所帯すぎ、もう少し絞ってGary Barone(tp)を加えたのがプチ・ワズーとなる。

 レパートリーは新曲が多数投入され、数年後に録音される"Cosmik Debris"もこの時期の曲。本盤で初リリースの"Little Dots"、"Kansas City Shuffle"、"Columbia, S. C."も新曲群。"Rollo"もこのツアーならではの組曲形式で披露された。

 要は本盤って、プチ・ワズー期の未発表曲と"Cosmik Debris"最初期アレンジを収めた。ライブ丸ごとではなく、"Imaginary Diseases"と同様にあちこちのライブ音源を寄せ集めた。当然、"Imaginary Diseases"と同じ日のライブ音源もあり。

 "Imaginary Diseases"の収録日は以下。
- Tracks 1 & 7: Montreal, Canada 10.27.72
- Track 2: Philadelphia, PA 11.10.72 (Show 1)
- Track 3: Kansas City, MO 12.2.72
- Track 4: Unknown
- Track 5: Washington, D.C., 11.11.72 (Show 1)
- Track 6: Waterbury, CT 11.1.72

 本"Little Dots"は以下。
Track 1: Washington, D.C., 11.11.72 (Show 1)
Track 2 & 3: Charlotte, NC, 11.4.72
Track 4: Kansas City, MO, 12.2.72 / Unknown
Track 5 & 6: Kansas City, MO, 12.2.72 (Show 1)
Track 7: Columbia, SC, 11.5.72

 見比べると"Little Dots"の(1)(4)~(6)は"Imaginary Diseases"で未リリース音源。(2)(3)(7)が全く初のライブ音源となる。けっこう音源残ってるんだ。
 ここの情報をもとに日付順に並べ替え、みてみよう。

 ( )が"Little Dots"収録曲。発表音源の中ではツアー中盤、あるていどアンサンブルに慣れた頃合いのセッションをまとめたと感じられる。
 なお【 】が"Imaginary Diseases"の収録曲。こっちは冒頭の瑞々しさを含め、まんべんない選曲だ。

10/27 Montreal, Canada 【1】
10/28 Syracuse, New York
10/29 Binghamton, New York
10/31 Passaic, New Jersey [2回公演]
11/1  Waterbury, CT 【6】
11/3  Richmond, Virginia [2回公演]
11/4  Charlotte, NC (2)(3)
11/5  Columbia, SC, (7)
11/7  Commack, New York
11/8  Fullerton, California
11/10 Philadelphia, PA 【2】
11/11 Washington, D.C.[2回公演,Show 2は未発表](1)【5】
11/12 Providence, Rhode Island
11/? Toronto, Ontario
11/? Bloomington (Indiana or Illinois, but definitely not Idaho)
12/2  Kansas City, MO(4)~(6)【3】
12/3  Lincoln, Nebraska
12/8  Vancouver, British Columbia
12/9  Portland, Oregon
12/10 Seattle, Washington
12/15 San Francisco, California

 こうしてみると、まだまだ未発表の音源はいっぱいある。いや、実際にテープがザッパ・トラストに残ってるかは不明だが。マニア相手に何十年でも遺産放出で兄弟たちは食えそうだ。

Track listing:
1.Cosmik Debris
2.Little Dots (Part 1, Part 2)
3.Rollo Includes: Rollo/The Rollo Interior Area/Rollo Goes Out
4.Kansas City Shuffle
5.‘Columbia, S.C.’ (Part 1, Part 2)

Personnel:
Frank Zappa - Conductor, Guitar, Vocals
Malcolm McNab - Trumpet
Gary Barone - Trumpet
Tom Malone - Tuba/Saxes/Piccolo Trumpet/Trumpet
Earl Dumler - Woodwinds
Glenn Ferris - Trombone
Bruce Fowler - Trombone
Tony Duran - Slide Guitar
Dave Parlato - Bass
Jim Gordon - Drums, Steel Drum
Maury Baker - Drums, Steel Drum (“Columbia, SC”)

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