Sun Ra And His Myth Science Arkestra 「Angels and Demons at Play」(1967)

 実験要素はスパイス。意外とオーソドックスなスタイルで、50年代後半の音源をまとめた盤。

 サターンは時間/空間/メンバーの異なる音源を混ぜてリリースがコンセプトだったらしい。時空を超えたサウンドの妙味を表現したいサン・ラのコンセプトと、大ざっぱさ。双方の要素があったのではないか。
 とにかくサン・ラは録音魔でシカゴに50年代後半に、膨大な音源が存在するという。全貌は知らない。原盤テープってどうなってるんだろう。ザッパやプリンスと違って、散逸や廃棄されてるのかな。

 ここでは大きく分けて、2種類の録音が収められた。A面(1-4)は60年にシカゴのスタジオで行われたマラソン・セッション。数十曲を録音とも言われる。
 B面(5-8)は時代が下がって556年の録音。自主録音も当時は頻繁に行ってたらしいが、これらはスタジオ録音。そのためか音質は悪くない。

 とはいえリリースは67年になってから。ずっと寝かされた。理由はサターンの経営など、音楽や発表コンセプトとは別の要因が多かったのではないか。メジャー・レーベルと契約して順風満帆な作品発表、とは全く違う人生を送ったサン・ラだから。

 (1)はひよひよと危うい和音感が甲高いメロディで奏でられる。この和声はサン・ラの好みなんだろう。整ったアンサンブルでメロディは不安定に上下するけれど、ソロ回しみたいな盛り上がりと別次元で楽曲が進む。作曲はアーケストラのRonnie Boykins。

 全般的に短い曲が多い本盤だが、2分弱とひときわ短いのが(2)。唸るベースを背後に、ホーン隊を前に。モノラル録音ながら、それとは別次元で楽器配置で立体性を意識した音像だ。
 不穏なムードがきっちり作曲され、一糸乱れぬ演奏を披露した。今の耳だと甘いとこもあるけれど、かなりうまいアンサンブル。

 (3)は調子っぱずれで即興風の音像だが、これもタイトさがあり。適当ではなくリハーサルを繰り返した音楽っぽい。独特な和音の展開、無造作にばらまかれる音列、クラスターめいたサン・ラのオルガンが生み出すスペイシーさ。どれもがオリジナリティでいっぱいだ。

 むしろオーソドックスなベースが導く(4)は、マーシャル・アレンのフルートが幻想的な風景を描いた。二つのコードを上下で疾走するベースをビートが後押し。シンプルだが展開しない闇雲さが混沌をうかがわせる。中盤でベースのフレーズがちょっと変わり、色合いをごくわずか変えた後、すぐにフェイドアウト。古い音楽ゆえ仕方ないが、ああ、惜しい。

 (4)はビッグバンド・スイングから。エリントンの15歳年下なサン・ラ。晩年にサン・ラはスイング回帰したが、そもそもアーケストラの本質は、もろにスイングだ。和音感覚と即興スタイル、リズムの奔放さと暴れ馬ぶりの音楽性で影を潜めてるが。

 57年はモダンジャズがすっかり一般的な時代、だろうか。その折にこのスタイルは少し古臭い。さらにサン・ラが敢えて選択する音楽性って意味でも奇妙で興味深い。
 アーケストラのメンバーでJulian Priester作曲の(5)を、サン・ラは特にいじらずまっとうにビッグバンド・スイングを炸裂させた。

 続くサン・ラ自作の(6)でもテイストは変わらない。ただしオルガン・ソロが入った瞬間にスペイシーな異次元へ向かう、滑らかな落差が面白い。軽く打つドラムのアクセントも、とたんにヘンテコに聴こえた。ビート性はぶれないのに、微妙に打音のタイミングがずれている。

 (7)はウッド・ブロックが残響一杯に響く。これだけウエットで、他は乾いた響きのアンサンブル。和音感はちょっとひしゃげた不穏な空気だ。
 ビッグ・バンドと言っても4管に3リズム+ティンパニと変則だがメチャクチャにメンバーが多いわけではない。 
 テーマからトランペット・ソロに向かうと、ちょっと肌触りがモダンになった。ジョン・ギルモアがスイング的に戻して、サン・ラがフリー気味。ドラム・ソロはなんだろう。あまり時代性を感じぬシンプルなアドリブ。
 そしてどろどろとティンパニが響き、サン・ラが呪術的にピアノを叩く。このティンパニを生かしたアレンジが、独自性かな。

 最後の(8)はモダン・ジャズ寄りのアプローチ。ぐいぐいと押した。わずかに煮え切らぬ感じこそあれ、根本はアグレッシブなハード・バップだ。
 ギルモアのテナーもすっかりコルトレーン・スタイル。ソロ回しはあまり長尺にせず12小節で繋いでいった。
 ここでも和音はサン・ラ流なのだろうか。ピアノが聴こえる場面だけ、少しばかり不安定な雰囲気。そしてエンディング。

 B面だけでもスイングからモダンまで幅を持たせた世界観。なおかつ4年間の違い両面に封じ込めた時空越えミックス。極端にヘンテコなサウンドではないが、違和感をうっすら漂わせる面白さが、本盤のコンセプトか。

Track listing:
1. Tiny Pyramids 3:36
2. Between Two Worlds 1:56
3. Music From The World Tomorrow 2:20
4. Angels And Demons At Play 2:56
5. Urnack 3:45
6. Medicine For A Nightmare 2:15
7. A Call For All Demons 4:12
8. Demon's Lullaby 2:07

1-4: at RCA Studios Chicago, around June 17, 1960
5-8: at RCA Studios, Chicago, around February 1956

Personnel:
On 1,4
Sun Ra - Percussion, Bells, Gong and Piano
Phil Cohran - Cornet
Nate Pryor - Trombone and Bells
John Gilmore - Tenor Sax and Clarinet, percussion
Marshall Allen - Flute
Ronnie Boykins - Bass
Jon Hardy - Drums, Percussion

On 2
Sun Ra - Piano
Bo Bailey(?) - Trombone
John Gilmore - Tenor Sax
Marshall Allen - Alto Sax
Ronnie Boykins - Bass
possibly Robert Barry - Drums

On 3
Sun Ra - Cosmic tone organ
Ronnie Boykins - Bass
Phil Cohran - Violin-uke
Jon Hardy - Drums

On 5-8

Sun Ra - Piano, Electric Piano
Art Hoyle - Trumpet
Julian Priester - Trombone
John Gilmore - Tenor Sax
Pat Patrick - Baritone Sax
Wilburn Green - Electric Bass
Robert Barry - Drums
Jim Herndon - Tympani

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