Dionne Warwick 「Finder of Lost Loves」(1985)

 バカラック、スティーヴィ・ワンダーと再接近した一枚。プロデュースは迷走が続く。
 悪くはないが、小粒な印象の仕上がりになった。

 一年数カ月ぶりのアルバムで26thソロ。
 購買ターゲットをむやみにティーン向けはやめ、ちょっと大人っぽさを狙った前作の路線を踏襲、さらに甘さを増して体裁を整えた面持ちだ。相変わらず隙の無いAOR路線。
 だが今回は、いろんな話題作りを仕込んだ。

 スティーヴィーのサントラ"The Woman In Red"(1984)で前年に共演を踏まえ、返礼のようにスティーヴィーがディオンヌのアルバムへ2曲で参加した。
 そのうえ80年代に復活の立役者バリー・マニロウと1曲でも共演。プロデュースは6曲を依頼した。
 別の1曲はグレン・ジョーンズが参加。さらになによりも、その曲は不仲だったバカラックと和解、彼の曲を"Dionne"(1972)年以来、10年以上ぶりに提供受けた。いろんな人脈をごった煮にだ。

 もう一度整理しよう。プロデューサーで見ると、バリー・マニロウが(1)(3)(5)(7)(8)(10)と最も貢献多い。
 (2)はRichard Landis、(4)はバカラックと、当時の妻なキャロル・ベイヤー・セイガー。スティーヴィが(6)(9)にクレジット。もちろん曲も提供でピアノとシンセも弾いている。
 豪華と言えばそれまでだが、どうにも幕の内弁当で絞り切れてない。しかも、売れなかった。不思議だね。豪華なのに。

 (1)や(5)など、他人の曲をマニロウがアレンジの曲は、とりあえず耳に優しいポップスだ。破綻無く無難にまとめている。喉を張るディオンヌの声がちょっと大げさだが、歌のうまさは伝わる。(10)のバラードはいかにも、歌い上げ狙いで得意の締めだ。歌手としてのアイデンティティをアピールというか。

 マニロウの自作曲のほうがプロダクションは生き生きしてる。(7)は明るさあるポップスながら、ブラス風のシンセ音色が思い切り古びてる。落ち着いたディオンヌの声に、浮ついたシンセの似合わないことったら。
 (8)も似たような路線だけど、ちょっとラテン風味を強めて、ちょいとムーディーさに軸足とったためクオリティはまずまず。ささやき気味に歌いかける世界観は悪くない。 
 本盤のマニロウが関与した曲では、(8)が一番いいかな。

 なお(2)のアレンジはチャーリー・カレロ。とはいえビジネスに徹しており、特筆は無い。しかもストリングスは無くシンセの弦とスタジオ・ミュージシャンの演奏だから手堅さが先に立つ。
 
 (3)はビージーズの曲。アレンジはマニロウで、別に前々作のアウトテイクってわけでもなさそう。マニロウとデュエットをしっとり仕立てる。ラテン的な陽気さを持つマニロウとのデュエットは悪くない。メロディは好みではないが。

 バカラックの新曲(4)はメロディのしっとりさが、独自の味わいだ。心なしか、ディオンヌの歌も滑らかにハマっている。バックバンドはスタジオ・ミュージシャン。弦はシンセだが、意外とゴージャスさを減じてないのはバカラックのアレンジ・センスゆえか。
 ゆっくりとメロディを置いて、和音が展開する鮮やかさはまさにバカラック節。大仰さそのものがバカラックの味でもある。なお2014年に発表のボートラでは、ルーサー・ヴァンドロスとデュエットのテイクもあり。色々試してたんだな。

 スティーヴィの参加した2曲はさすがの仕上がり。切ないメロディをきれいにまとめる技が目立ってたころだけに、良い曲と思う。"The Woman In Red"に入ってても良かった。
 (6)はサビでいきなり低いとこをスティーヴィーが歌いだすとこが唐突ながら、親しみやすいミドル・テンポ。シンセ・ドラムに時代を感じる以外は、普遍性もつ良さがある。好きな曲だ。
 (9)はぐっと世界をスティーヴィー側に引き寄せた。和音の感触がうっすら影を持つ独特な曲。キャッチーさでは(4)ほどではない。悪くはないが。
 そもそもデュエットである必然性が薄い。ディオンヌは歌い負けこそしてないが、(4)ほど存在感が無いのも確か。
 しかしどちらの曲もスティーヴィーが最初に歌いだすとこが、曲提供にあたり気を遣わぬスティーヴィーらしい。ディオンヌの貫禄負けとも言えなくもない。

 アルバムのベストって観点だと。どうだろう。ぼくの好みはスティーヴィーの(6)。ただそれは、スティーヴィーの魅力だ。バカラックの(4)も曲としては悪くない。マニロウの(8)も良いが、やはりディオンヌの歌が理由じゃないんだよな。

 アリスタも納得いかなかったのだろう。1月に本盤を出して、早々と11月には次のアルバム"Friends"を出す。もうこの時代に彼女くらいのキャリアの人が行うリリース・ペースではない、せわしなさ。
 だがその盤に収録された"That's What Friends Are For" (with Elton John, Gladys Knight & Stevie Wonder)"で、ディオンヌは特大ヒットを飛ばす。いまのところ、そしてもしかしたらキャリア最後の特大な花を咲かせた。

Track listing:
1. No One In The World 3:33
2. Without Your Love 4:42
3. Run To Me 4:35
4. Finder Of Lost Loves 4:40
5. Love Doesn't Live Here Anymore 4:59
6. It's You 4:54
7. It's Love 3:38
8. Bedroom Eyes 4:45
9. Weakness 4:14
10. You Made Me Want To Love Again 4:33

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