Dionne Warwick 「Heartbreaker」(1982)

 若者向けマーケットを狙いか、前作よりさらに若作り路線をディオンヌは選ぶ。

 プロデューサーはGibb-Galuten-Richardson。すなわちビージーズ。いいんだけどさ、バカラック時代より主体性なくディオンヌはお仕着せを切る歌手に思えてならない。この時代にビージーズは既にピークを過ぎてたイメージあるが、アメリカの業界的には違ったのかも。売れ行きで結果出してるから、結局は正解か。

 25thアルバムの本作は前作"Friends in Love"から半年と短いペースで発売に至った。しかも録音は前作発売の月、82年4月始まってる。翌月5月にレコーディングは終了。なぜこんなペースで製作だろう。じっくり"Friends in Love"をプロモーションする時期ではないのか。
 別項で書いたように、"Friends in Love"へさほどの思い入れはないが。なんだかきちんと内部で評価されてないみたいで、しっくりこない。

 いっぽうで本盤はディスコ風を強調しシンセ・ストリングスで安っぽく仕上げた、いかにも80年代サウンドなのでなおさら。ディオンヌは何を目指していたのだろう。
 特に(1)が嫌だ。打ち込みみたいなドラムにのっぺり響くパッドのシンセ。グルーヴ感が皆無で頭打ちに進んでいく。白人産業パワーポップ路線。なまじディオンヌがきちんと歌うため、お仕着せ路線が強調される。
 (2)もちょっとソウル寄りだが、ドラムが硬い。

 なお本盤を通してドラムはスティーヴ・ガッド。ヘタなわけないのだが、平板でマシンのようだ。
 他に鍵盤にリチャード・ティーも参加して、スタッフの流れもあり。要は一流スタジオミュージシャンってこと。ギターでイギリス人のTim Renwickを起用は、色合いを変えようとしたか。

 作曲は基本的にビージーズ組。バリー・ギブ自身が06年に、そのデモをまとめたアルバム"The Heartbreaker Demos"がi-tunes限定で発売してた。今もカタログに残ってる。
https://itunes.apple.com/jp/album/the-heartbreaker-demos/id201087479
 この時期にバリーはデモ音源を4枚のアルバムにまとめ、過去を切り売りしてた。

 本盤に戻ろう。この盤でテーマは売上狙いの堅実なプロダクション。冒険はしない。良くも悪くも、アルバムの統一感はある。メロディがバリー・ギブでほぼ統一されたせい。

 でも時代かな、アレンジのセンスが今では猛烈に古臭い。80年代に思春期を過ごしたせいで、ぼくはそう感じる。大仰で飾り立てた感じ。
 三歩くらい引いて聴いたら、隙の無い仕事ともとれるが。そこまで大甘でこのサウンドを味わいたくもないな。逆に言うと、いいとこ探しで聴いてしまう。

 ベストは(10)。むしろ70年代風で、ローズが弾みリズムがブラジル風に弾む。まさにスティーブ・ガッド的なビート感が心地よい。AOR路線ばりばりだが、爽やかなメロディも相まって、華やかな佳曲に仕上がった。
 この曲だけ作曲はBob HilliardとMort Garson。すなわちギブが関与してない。すると僕はギブのセンスが好みでないのかも、単純に。

 甘ったるく盛り上げる(3)、ディスコな(4)とAOR路線ばりばりな(5)。裏ぶれたBGM路線と、今となっては感じてしまう。(5)のBメロで洒落た和音感覚から、サビに流れる展開はちょっと良かった。

 再びパワーポップ路線の(6)。メロディだけなら、これが一番いいかな。
 (7)や(9)の歌い上げは強力さと甘さ狙いと思うが、いまいちピンとこないパワーポップ。ハードさも甘さも足りず中途半端。
 歌手としてディオンヌがしっとり歌う(8)。これも悪くない。大仰なシンセ・ストリングスと、硬く隙の無いドラムが今一つ邪魔だが。もっと間が欲しい。

 わかるよ、確かにあの時代は、こういう音楽が流行ってた。売らんかな、で攻めるのもディオンヌ自身の戦略として間違ってない。だがディオンヌである必要はあるのか?別の歌が上手い歌手でもいいじゃないか。

 唯一無二って節回しを、低音でぬるっと上下するニュアンスでディオンヌは出せる。ささやき声からハイトーンまでフルレンジで行ける歌のうまさも武器だ。だが本盤では器用貧乏で終わってる印象を受けた。バックのアレンジがあからさますぎる。もっと歌手を信用しろ。

 ただし、本盤は結果を出した。売れた。アメリカでゴールド、イギリスでプラチナムのヒットになった。ううむ。
 
Track listing:
1. Heartbreaker 4:18
2. It Makes No Difference 4:26
3. Yours 5:06
4. Take The Short Way Home 3:53
5. Misunderstood 4:10
6. All The Love In The World 3:30
7. I Can't See Anything (But You) 3:30
8. Just One More Night 3:51
9. You Are My Love 3:44
10. Our Day Will Come 3:47
 
Personnel:
Producer - Albhy Galuten, Barry Gibb, Karl Richardson
Acoustic Guitar - Barry Gibb
Arranged By Albhy Galuten, Barry Gibb
Backing Vocals - Barry Gibb
Drums - Steve Gadd
Bass - George "Chocolate" Perry
Conductor - Albhy Galuten
Electric Guitar - Tim Renwick
Percussion - Anita Lopez, Daniel Ben Zebulon, Dennis Bryon, Joe Lala
Piano - Albhy Galuten, George Bitzer, Richard Tee
Saxophone [Solo] - Gary Brown
Synthesizer - Albhy Galuten, George Bitzer

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