DABO 「HITMAN」(2002)

 わかりやすいかっこよさを敢えて避け、ハイテクニックをさりげなくみせた。じっくり聴いてると、濃密な作りと実感する。

 ニトロは、というか日本語ラップは後追い。たまたま"24 HOUR KARATE SCHOOL JAPAN"(2010)を当時に聴いて、日本語ラップのかっこよさへ急にめざめ、あれこれ追ってるうちにたまたま手に取った。和製ウータンに見えたのが一番の理由。

 で、DABO。"Platinum Tongue"(2001)は当時、ミュージック・マガジン誌の年間ベストで1位になってたような。手元に雑誌なく、確認できないが。したがって存在は知ってたが、当時は興味なく聴きそびれていた。2010年くらいに聴いて、じわじわ来る良さに惹かれた。

 その程度の認識だからDABOのディスコグラフィーはよく知らない。今もわかってない。本盤も2011年にあれこれまとめて入手したうちの一枚。言い訳が長いな。ようは「このジャンルは素人で、未だによくわかってない」って言いたいだけなんだが。

 さて本盤。95年頃に活動を初め、99年にインディーズからデビュー。00年にニトロの1stがリリース、個別活動も始まり02年に発売が本盤となる。
 全部の盤は聴いてないが、DABOのわかりやすいイカした傑作は"Platinum Tongue"(2001)だと思う。ジャケット・イメージも含めて。

 だが本盤は、かっこいいの?ラッパーと野球。殺し屋と野球のヒットをひっかけたようなタイトル。タイトルやリリックを眺めても、かっこよさとは少し違うような。
 少なくとも深淵で文学的、もしくは凄みを出す戦略とは違う。
 あくまで言葉遊びや韻踏みを素材にして、リズムやビート感のスマートさを追求の盤に聴こえる。

 だからむしろ、本盤は歌詞の意味を意識したくない。DABOの地を這うしたたかなラップぶりに酔いたい。

 DABOのラップは痛快だ。鈍く響く声質を淡々と載せていく。ブレスのタイミングが時にスリルを感じるほど、単語の出し方が滑らかだ。大声を上げたり、ダイナミクスに頼らぬ冷ややかで一定したテンションこそが、抜群の緊張を演出した。抜き身の刀みたいなもの。

 だが突き放さず、どこか緩さを見せる懐深さも感じさせる。いい声だよ。フダツキーなトレードマークまで持ってるのがずるい。さりげない一声で自己主張までできてる。
 ざらついた喉声で耳をくすぐるような響きも独特で素敵だ。

 本盤ではミックスも面白い。むやみにDABOの声を立てず、トラックに埋め込んでいく。声高に騒がずとも存在感を出し続けるDABOの魅力を、むしろシンプルに表現した。

 トラックメイカーは複数。DJ HAZIME,DJ WATARAI,A KID CALLED ROOTS,AQUARIUS,GE-OLOGY,D.O.I.,SHONDRAE.。
 日米のメンバーに発注したのが当時の売りだったようだ。DABOのコメントを載せたタワレコのページがまだ、生きている。
http://tower.jp/article/interview/2002/10/03/100038368/100038371

 客演は前半を控え、中盤に固めた。DABOのイメージをまず明確に作り、バラエティさで後半に飽きさせないコンセプトか。
 ニトロから(4)、(8)、(13)。
 (9)のTokona-Xはレーベル・メイト。DABOより3歳ほど後輩か。急逝はこの2年後になる。
 (11)のHi-Dも同じレーベル。1stシングル"Girlfriends feat.ZEEBRA"は本盤の翌年。デビュー前に華を添える格好か。

 (12)のP.H. Fronはマイクロフォン・ペイジャーのメンバー。DABOの人脈、かな。(14)のLisaは元M-Flo。話題の共演だった、のではないか。楽曲でLisaは多重ボーカルを駆使し、ハーモニーとラップに大活躍してる。いいね。

 当時のシングルは(5)、(11)、(14)。(14)はアルバム発売後にシングルで切られた。きちんとプロモーションやシングル活動もしてたんだな。リアルタイムで聴いてないと、こういうところがピンとこない。

 (5)のカップリングが(4)、(11)はアルバム未収録の"予告編【DJ HAZY ON DA WHEELZ OF STEEL】"を収めた。
 (14)は(12)を併収し、客演曲を中心にアピールしてる。
  
 ジャケットに騙されず、何度も聴いてたらじわっと良さが来た。低音で沈めるDABOがユーモアを忘れずラップを決める一方で、時に激しく、時に派手な客演の部隊が明るく盛り上げた。
 サウンドは打ち込み中心の金属質な響きで、オールドタイムなR&Bよりもストレートなノリを追った。

 フルオーケストラのクラシック(なんの曲だっけ?)をサンプリングした冒頭から、ダブル・トラックもときおり使ってコミカルに決める(1)。
 畳みかける性急なビートの上で渋く低く、緩やかに揺れたラップを唸った(2)。(3)ではスクラッチも使う鋭いトラックへ、リズミカルにスピードを強調した。
 
 ビグザムが嗄れ声で唸る(4)は、DABOの軽やかさが対比される。これも拍頭を三連続に叩く、鈍重なビート感の上でザクザクと跳ねた。
 (5)は弦のサンプリング・ループとシンプルなビート。むしろ飾りっ気ないトラックの上で、しなやかにラップする。多重録音で声を様々に重ね、トラックをぐいぐい飾ってる。

 フィリー・ソウル風の弦に、チープなリズム。大ネタをかますようなトラックな(6)を、DABOは声質を変えながら多重録音で仕上げた。これって客演いないんだ。むしろゲストいないのが意外。

 (7)はシンセのフレーズ中心のシンプルでプラスティックな響き。DABOはしゃがれ気味の声であっさりとまとめた。これも細かく声を重ね、単調さを避けている。丁寧な作りだ。

 中盤から客演の連発が始まる。SKITすなわち寸劇な(8)では、Macka-Chinを相方にコミカルにまとめ、ペース・チェンジを図った。

 (9)は冒頭からTokona-Xをアピール。うわずり気味に畳みかけるTokona-Xの声質が、まさにDABOと対照的だ。前のめりにぐいぐいくるTokona-Xの魅力が引き立った。DABOが小気味よくまくしたて、終盤でT-Xとかけあう場面が良い。
 
 そのテンションのまま(10)へ流れる。打ち込みビートの上で多重録音ラップで構成した。この辺の濃密な演出が、最初にぱっと聴いたときはひとつながりに思えてわからなかった。

 (11)はP.H.がR&B風のフレーズで、アクエリアスのトラックを彩った。DABOが影に日向に立ち回る様子がクールだ。PVだとよくわかるが、ほぼP.H.は飾りに回ってる。


 (12)は掛け合いでP.H.とやり合う感じ。むしろあっという間に曲が終わってしまう。打ち込みでビート音が飛び交う賑やかで軽いトラックの上で、二人のラップが弾んだ。
 P.H.は嗄れ声でサビのフレーズを連呼し、DABOを煽る。2ヴァース目でダブル・トラックを駆使したP.H.のラップが跳ねた。
 DeliとSuikenが参加の(13)はニトロみたいなもの。トラックの軽やかさが、本体とは違うか。ゲストというよりサビを挟んで各ヴァースを任せるマイク・リレーみたいなもの。それぞれのラップをたっぷり楽しめる点で、この曲は美味しい。

 そしてクライマックスの(14)。Lisaが裏方役ながら、たっぷり魅力を振りまいた。しっとりしたLisaの声質がDABOの湿った喉を盛り上げる。拍頭を抑える二人のフレーズが重なるサビが暗いクールさを出した。
 PVがきっちり作りこんでてあり、わかりやすく曲の魅力を提示した。(12)がインサートされる構成で。


 アルバムの締めはソロに戻って(15)。深夜ムードの寂し気で軽い涼しさをフルートで表現し、すいすいとDABOはラップを載せた。
 これできれいに締めても良かったが、(16)で鈍く連呼を出して終わり。
 一行コメント書くだけで、単にこれが勢い一発でなくきちんと作りこんだ盤と実感する。投げっぱなしなんてないんだな。他の盤もきちんと聴いてみよう。

Track listing:
1. HITMANのテーマ (INTRO) [3:08]
2. BACK (2 R.A.P.E.) [4:50]
3. LIFE / LIVE [4:23]
4. BIGMAN! 【Feat. Bigzam】 [4:13]
5. D.A.B.O. [4:00]
6. マイクにガツン☆ [5:20]
7. WANNABEES CUP 2002 [4:28]
8. 授賞式 (SKIT) 【Feat. Joseph Caccio E Na a.k.a. Macka-Chin】 [2:53]
9. MURDA!!!! (KILLA EMCEE) 【Feat. Tokona-X】 [4:38]
10. 場外ホーマー [3:21]
11. 恋はオートマ 【Feat. Hi-D】 [5:01]
12. スピーカーにTバック 【Feat. P.H.】 [4:34]
13. WEEGOTWEEE! 【Feat. Deli & Suiken】 [4:48]
14. ねぇ D (LADY) 【Feat. Lisa】 [6:31]
15. もしも明日が… (FORGET ME NOT) [3:39]
16. OUTROW (OUTRO) [0:58]



関連記事

コメント

非公開コメント