Dorothy Ashby 「Hip Harp」(1958)

 どんな楽器でもジャズ。ハープでも、ジャズ。

 いろんな楽器でジャズはゲテモノだろうか。全盛期のジャズには、こんな盤もあったんだ。初めて知った。ハープ奏者をリーダーにした盤で、プレスティッジからのリリース。
 とはいえこれは一過性のオモシロ企画ではなく、特殊ではあるもののきちんとしたジャズのスタイルで録音された。
 どんな楽器でもジャズはできる。しかし優美でクラシカルなイメージのハープと、モダンジャズって発想は無かった。取り回しも大変だし、紫煙と喧騒騒めく酒場の片隅でハープ抱えてギグをする風景ってのも想像しづらい。

 本盤の奏者ドロシー・アシュヴィーはスタジオ・ミュージシャンが本業らしい。ハープ奏者として何枚もリーダー・アルバムを出していた。こないだ読んだ立花隆による武満徹の本でハープの演奏について、ちょっと触れられていた。色々と演奏が複雑で、特殊な奏法もできるらしい。

 なんでもハープは楽器構造として全音のみ。半音はペダルを踏んで出す。ペダルはダブル・アクションで、半音、さらに半音と二段階で踏みかえられるそう。さらにそのペダルを中途半端に踏むと開放弦ともピンで押さえた状態とも違う、濁った音が出るらしい。
 本来の弾き方とは違う、かなり特殊なこともできるそう。

 だがここではトリッキーな響きは感じられず。ギターっぽい響きだ。音域が高い分、スマートに聴こえる。どうせなら特殊奏法でも読んでみたかった、ってのは贅沢か。
 曲終わりなどで滑らかなグリサンドがばらららっと流麗に流れるあたりは、さすがにハープの真骨頂。気持ちいい。
 
 全7曲中、3曲が彼女のオリジナル。あとはスタンダードを演奏した。楽器選択が珍しいだけで、アプローチはまっとうなモダン・ジャズだ。
 サイドメンはハープの繊細さを生かすため、ピアノは外した。この選択は大正解。コード楽器がないことで、ハープの流れる繊細な音でのコード感覚が気持ちいい。
 フランク・ウェスの緩やかで落ち着いたフレージングのフルート・ソロもかっこいいな。

 ドラムはベテランのアート・テイラーがキッチリ締める。ベースのハーマン・ライトはあまり聴いたことないイメージだった。
 スイング感はきっちり。あまり派手にバック・ビートを決めないが、それでもブルージーに押す感覚は悪くない。ちょっとたどたどしげにフレーズを弾くハープのタイム感が、ぎこちない美しさを演出した。もっとインテンポで弾くテクニックもドロシーにはありそうなので、このアウト感は演出だろう。

 ドロシーは32年にデトロイトで生まれ、86年に54歳の若さで没。10枚くらいのリーダー作を残してる。本盤が3rd、かな。60年代後半にCadetで数枚吹きこんでるが、基本はワンショット契約風の発表だ。プレスティッジからも本盤のみのリリース。
 僕が知らなかっただけで別に埋もれてもおらず、再発もふんだんにあり。本盤単独でも、過去のリーダー作をまとめた廉価盤でも、Amazonで簡単に購入が可能だ。

  
 
A1. Pawky
A2. Moonlight In Vermont
A3. Back Talk
B1. Dancing In The Dark
B2. Charmaine
B3. Jollity
B4. There's A Small Hotel

Personnel:
Harp : Dorothy Ashby
Bass : Herman Wright
Drums : Arthur Taylor
Flute : Frank Wess

関連記事

コメント

非公開コメント