Dionne Warwick 「No Night So Long」(1980)

 円熟路線目指し、黒人ルーツを踏まえてゴージャスな雰囲気を狙った。ジャケットはいかにもハイソな金持ち風。

 こうなると、いまいち歌手の生き様そのものに興味持てなくなってくる。上昇志向強いラッパーが大成功し、金アクセじゃらじゃらで威張り始めるのと本質的に似てる。
 結局ここまでぼくが集中的にディオンヌを聴いて、よくわからないけど彼女の魅力を探す聴き方してたのは、彼女の生きざまを知りたかったからだ、と気づいた。

 つまりテクニックを兼ね備えた上手い歌手であるディオンヌが、どんなシンガーを目指すかを知りたかった。バカラックのお抱え歌手から抜け出し、いかなる地平を目指したいのか。そこに、彼女の魅力を探していた。

 しかし本盤で聴けるのは、新たなお仕着せ歌手の位置。プロデューサーの言うまま二番煎じを目指し、あてがわれた曲を歌うだけだ。それは、生き方として正しいが音楽的に面白みがない。

 ディオンヌも生活がかかっている。功成り名遂げたセレブ歌手を目指すなら「どうぞどうぞ。成功して良かったですね。」と言う。それで終わりだ。その生き方で欲しいのはマネーや名誉であり、音楽的な尖鋭性や独自性ではない。とはいえ、これから80年代以降の盤を聴き進めて、感想変わるかもしれないが。
 
 思い込みでの雑文が長くなった。失礼。

 さて本盤。22thソロで80年7月、前作から14ヵ月ぶりに発売された。ディオンヌは94年まで、アリスタに在籍。チャート・アクションだけで言うと85年をピークに、ヒットへ恵まれず凋落が始った。その後はワンショット契約に近い、レーベル流浪に進む。
 
 この時点は前作のヒットでイケイケな調子。Wikiによれば本盤も北米だけで50万枚が売れた。
 前作の都会路線から一転、ナッシュヴィル出身のプロデューサー、スティーブ・バッキンガムを起用した。前プロデューサーのバリー・マニロウからずいぶん振り幅が大きい。 スティーブはグラミー賞受賞のヒットメイカー。ディオンヌ以外でプロフィールに上がるかかわった歌手の名前を見ると、ドリー・パートン、リンダ・ロンシュタット、ガース・ブルックスなど。より保守的マーケット向けのカントリー的な色合いもつ、大人の歌手路線って感じか。

 サウンドもコンボ編成が目立った前作から、弦を豊富に使って生っぽいアレンジも生かした。往年の路線で安定路線を追求する。全米の都会田舎かかわらず売れる路線、狙いか。
 興味ないなー、と流し聴きしながらクレジット見てたら、ホーン隊がちょっと興味惹いた。

 ホーン・アレンジがグレッグ・アダムズ。タワー・オブ・パワーがスタジオ仕事で本盤に参加してた。他の管はMic Gillette, Lenny Pickett, Steve Kupka, Emilio Castillと全盛期のメンバーが勢ぞろい。"We Came To Play"(1978)で契約切られ、食いつなぎに苦労してた彼らは、こんな仕事もしてたのか。

 あとは大物を集めたって感じか。オーケストラでなくコンボ編成を軸にしてるが、スリルは全くない。ホーン隊だってグルーヴを足すって程度で、ぶりぶりに暴れてはおらず。
 B面ではシンセを使った楽曲も並べ、バラエティに富んだアレンジを施してる。

 全10曲、作曲家はバラバラで特に統一性は見られない。ぼくが知ってる名前を拾うと、(3)がキャロル・ベイヤー・セイガーとデヴィッド・フォスターの共作。(7)がピーボ・ブライソン、(10)にはメリサ・マンチェスターの名があり。王道AOR路線だなあ。
 なお前ヒット曲"No Night So Long"の作曲チームは本盤(2)を、前 "Deja Vu"のコンビは(5)を提供。前回の成功例はきっちり押さえてる。
 本盤からは(2)、(1)/(5)の両面がシングルで切られた。(2)が23位の小ヒット。(1)が62位とチャート的にはパッとしなかったが。
 (2)のB面はアルバム未収録の"This Time Is Ours"。

 ふっくら弦が広がる緩やかなバラードと、ソフトなミドル・テンポが収められた。(7)や(8)でちょっとアップ気味のテンポも。ToPのホーン隊が地味に仕事して、跳ねずに終わる。耳障りは良いが。
 アルバム最後の(10)にて、朗々と歌い上げる喉をたっぷり披露で幕を下ろした。

 曲はしっかり練られた職業作家の作品だし、演奏も一本調子ではない。五目味で丁寧にまとめられた。オリジナル・アルバムだがベスト盤を聴いてるかのよう。
 隙は無い。いいんじゃないでしょうか。

Track listing:
1. Easy Love 3:15
2. No Night So Long 3:26
3. It's The Falling In Love 3:24
4. When The World Runs Out Of Love 3:45
5. We Never Said Goodbye 3:42
6. How You Once Loved Me 3:36
7. Reaching For The Sky 4:28
8. Sweetie Pie 2:30
9. Somebody's Angel 3:46
10. We Had This Time 3:41

Personnel:
Producer – Steve Buckingham
Arranged By – Greg Adams
Backing Vocals – Julia Waters, Kim Carnes, Mark Piscitelli, Maxine Waters, Nick Uhrig
Bass – Tom Robb
Drums – James Stroud
Guitar – Larry Byrom, Steve Buckingham
Keyboards – Randy McCormick
Organ – Isaac Hayes
Percussion – Mickey Buckins
Synthesizer – Joe Neil

Horns – Tower Of Power Horn Section
(Greg Adams, Mic Gillette, Lenny Pickett, Steve Kupka, Emilio Castillo)

Concertmaster – Jimmy Getzoff
Tympani, Bells [Orchestra], Arranged By [Strings] – Steve Dorff

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