Dionne Warwick 「Then Came You」(1975)

 大ヒット曲"Then Came You"を引っ提げ、東海岸ソウル路線を狙った一枚。

 17thの本作で目玉は"Then Came You"。74年7月に発売したこのシングルは、スピナーズとのデュエットでビルボード1位の大ヒットを叩きだした。ディオンヌとしてシングル1位はWiki見る限り初めて。もっともヒットした"(Theme from) Valley of the Dolls" が2位、同時期シングルの"I Say a Little Prayer"が4位だった。

 そのシングル曲をタイトルに作った本盤は、プロデューサーにジェリー・ラゴヴォイを迎えた。・・・あれ?"Then Came You"のプロデューサーはトム・ベルなのに。なぜいきなりフィリーへ行かず、ジェリーを起用したんだろう。
 トムとのがっぷりタッグは、同年でこの次のアルバム"Track of the Cat"(1975)になる。どうせなら、いきなりトムと組めばいいのに。このちょっとわき道にそれるセンスが謎だ。色々しがらみあったのか。

 NY録音でスタジオ・ミュージシャンを集め、豪華でタイトなアレンジで仕上げた。流麗なストリングスもふんだんに。逆にバカラックほどの華麗さは無く、手堅く仕上げた印象あり。
 前作"Just Being Myself"でH=D=Hに単なる一歌手と扱われた挙句、さほどヒットもしないため反動で、昔ながらの路線追求が本盤と思われる。でも繰り返しになるが、"Then Came You"だけ座りが悪い。

 ジェリーのプロデュース・センスは抜群だし、本盤も素敵なソウルに仕上がってる。ディオンヌの歌だって抜群だ。甘く滑らか、叫びすぎない抑えたトーンを基調に、時に喉を張る大胆で幅広いテクニックは本盤でも楽しめる。
 けれどもとってつけたような全体像が、本盤の個性を曖昧にした。

 イラストで精悍な雰囲気を出すジャケットは、当時の空気感か。甘くほんのりスリルを持った本盤のイメージにあってるような、そうでないような。
 収録曲の作曲家はまちまち。特に統一性を持たせない。バラエティに富んだ魅力はそこかしこにあり。
 A3のハイトーン、A5のシカゴ・ソウルに通じるスリル、B3のはずむムード、バカラック風の影をうっすら漂わすNY風のB4などなど。
 もちろんディスコを要素に留めて軽くまとめたヒット曲、A4も耳ざわりは柔らかい。ソウルとしては味が薄いけれど。
 だが、売れなかった。全米167位、R&Bでも35位どまり。

 ワーナー時代ってセールス的には苦戦だが、今、楽曲を聴くと悪くない。強烈な炸裂こそないが、手堅いポップ・ソウルに仕上がっている。

Track listing:
A1. Take It From Me 3:41
A2. We'll Burn Our Bridges Behind Us 3:30
A3. Sure Thing 3:09
A4. Then Came You 3:53
A5. How Can I Tell Him 5:21
B1. Move Me No Mountain 4:52
B2. I Can't Wait To See My Baby's Face 3:27
B3. It's Magic 3:16
B4. Who Knows 3:15
B5. Getting In My Way 3:15


Personnel:
Producer, Arranged By - Jerry Ragovoy (tracks: A1 to A3, B1 to B5)
Producer, Arranged By, Conductor - Thom Bell (tracks: A4)
Arranged By [Horn & String] - Larry Wilcox (tracks: A2, B2)

Guitar - Jeff Mironov (tracks: A1, A2, A5, B1, B2), Jerry Friedman (tracks: A1 to A3, B1 to B5), John Trope (tracks: A3, B3 to B5)
Bass - Robert Babbit Kreinar (tracks: A1 to A3, B1 to B5)
Congas - Arthur Jenkins (tracks: A5)
Drums - Andrew Smith (4) (tracks: A1 to A3, B1 to B5), Ray Lucas (tracks: A5)
Piano - LeRoy Pendarvis (tracks: A1 to A3, B1 to B5)
Vibraphone - George Devens (tracks: A3, B3 to B5), Jack Jennings (tracks: A5)

Recorded at The Hit Factory, Inc., New York.

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