Dionne Warwick 「Just Being Myself」(1973)

 バカラック座付き歌手の脱却を目指す第一弾。逆の意味で人形めいてしまった上手いポップスに仕上がった。

 デビューから約7年間を所属したセプターからワーナーへ移籍、"Dionne"(1972)に次ぐ16thアルバム。"Dionne"は未聴のため、感想は割愛します。
 なおいっぽう、古巣のセプターはライブの2枚組"A Decade Of Gold - The Dionne Warwicke Story"を1971年にちゃっかりリリース。チャートは48位とソコソコだが、ゴールド・ディスクの売り上げを稼いでた

 そもそもディオンヌはセプターの扱いに不満だっただけらしく、前作"Dionne"ではバカラックと切れなかった。前作は変わらず、バカラック&デイビッドのプロデュース。
 ところが本盤はスタッフを一新した。ついにディオンヌは自力な歌手の道を模索し始める。もっとも本盤の売れ行きはWikiによれば全米178位。セールスでは振るわなかった。

 本作のプロデューサーはHolland & Dozier(と、Ronald Dunbar名義)。さらにRichard "Popcorn" Wylie。モータウン仕込みな、ヒット製作チームの体制を導入した。アレンジはGene Page, McKinley Jacksonがクレジット。
 要は、よりソウルフル。だがメインストリームのポップスの味わいは残す。そんな路線を狙ったか。これがディオンヌと周辺スタッフ、どちら側の意向かわからないが。

 本盤はモータウン時代のH=D=Hの名でイメージするパンチ力あるソウルより、もっとメロウな路線。ダイアナ・ロスが仮想敵っぽい。ディオンヌはむやみに若ぶらず、いい感じでアルバムが仕上がったと思う。
 ここ(2)(6)がシングル・カット、(1)もシングルB面。
 だがどれもチャートには引っかからず。ヒット街道への復帰には、翌年にスピナーズと共演で全米No.1の"Then Came You"(1974)まで、もうちょっと待たねばならなかった。

 作曲は基本的にH=D=H体制、(3)と(4)のみMichael SmithとRonald Dunbar。バカラック時代に叶わなかった、統一コンセプトの作曲チーム体制がバカラックから離れたとたん実現するとは、皮肉な話だ。

 録音もデトロイトのHolland - Dozier - Hollandスタジオ。エレキギターを使ったバンド・アンサンブルにストリングを足す、ほどよいゴージャス感とコンボ編成の躍動感を両立させた。アルバム全体のイメージは、きれいなメロディながら地味さも漂う。

 ディオンヌの歌は上手い。その一方で、歌手としての個性よりもトラックに埋め込まれる素材な立ち位置にも聴こえる。ディオンヌを立てるより、サウンド全体の調和を狙った。
 ビートは強調せず、滑らかな空気を醸し出す。(2)のように強烈なリズムとアップに進むポテンシャルを持った曲でも、ビートは要素に留める。むしろ芳醇なストリングスとコーラスで甘めに仕上げた。この中途半端な大人狙いの路線が、本盤のもどかしいところ。

 メロウなソウルって観点では、とても楽しめる。
 楽曲として(4)の歌い上げっぷりが、美しくて良かった。今のベストはこの曲。
 すぐ続いて(5)の平歌でメロディが(4)と似てるなあと思ってしまう。独特な節回しは、ある意味で金太郎飴っぽい。手を変え品を変え、甘酸っぱくも青さの無いソウル風のポップスが詰まった。
 ディオンヌはささやき声から喉を張るとこまで幅広くこなす。その多彩さが、逆に器用貧乏に陥ってるが。

 今回感想を書こうと、繰り返し本盤を聴いていた。聴いてる最中はするり耳に馴染む。だが聴き終わって、引っかかるところが無い。
 ディオンヌの魅力は何だろう、と考え込んだ一枚。本盤にはバカラックのブランドが無いだけに。

Track listing:
1. You're Gonna Need Me
2. I Think You Need Love
3. You Are The Heart Of Me
4. I Always Get Caught In The Rain
5. Don't Let My Teardrops Bother You
6. (I'm) Just Being Myself
7. Come Back
8. Don't Burn The Bridge (That Took You Across)

 

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