Incapacitants 「D.D.D.D.」(1995)

 ややこしいことを横に置いて、痛快にノイズを炸裂させるインキャパシタンツならではの長尺作品。

 副題は「Destroy Devastating and Disgusting Derivatives」(荒廃した実に嫌な独創性の無さを滅ぼせ)と、ノイズ・バンドらしい標題ながら。これはもちろん、小堺文雄が参加してたC.C.C.C.のパロディ標題。
 単にギャグなのか、本盤で膨らむ混沌と濃密なノイズ志向まで混みでつけたコンセプト化は分からない。
 60分テープでイタリアのレーベルOld Europa Cafeから発売された。単独でCD化は無く、ノルウェーのPica Discの10枚組"箱愚か Box Is Stupid"(2009)で聴ける。500セット限定で、Amazonで取り扱いは出てこない。

 唸る野太い暴風雨の中で、変調された声と思しき唸りが溢れる。高低音よりも、黒く煙った中低域のノイズ成分に着目した音作りに感じる。テープのリミッターなのか、もともとがそういう音なのか。
 ノイズ作品なのに「きちんと聞こえない」って神経質に聴くのも、なんだかなあ。「ノイズが乗ってる」まで行くと、何がノイズなんだって世界だし。

 ボリュームをかなり上げると、音圧の奥で蠢く、胸がぞわぞわする金属質な奔出を味わえる。耳をつんざく神経質な帯域は出てこない。個々のノイズはあまりクリアでなく、団子になってる印象だ。

 物語性やメリハリよりも、アイディア一発で突き進む骨太の怒涛さが本盤の味わい。細かく吹き荒ぶノイズを中心に置き、うねる音が揺らいでゆっくりと暴れた。これが多分、ボーカルの電子変調処理と思う。
 A面部分の終盤で、きゅうっとよじれる電子音が幾度も繰り返され、盛り上がりを加速した。

 B面はA面の唐突なフェイドアウトから、ほぼ切れ目なしに始まる。音圧やニュアンスは似てるが、ちょっと音の構成要素や響きが違う気もする。長尺の1時間を半分に切っただけじゃないのか。ミックスが違うってわけでもなさそう。
 悩んでるうちに、音圧に耳が慣れていずれにせよA面から切れ目なしに聴いている。

 B面のほうがすっきりした迫力は増している。A面のざらつきからツルリと滑らかで底深い凄みを漂わせた。非人間的な音像だが、機械の冷たさもないところがポイント。解釈を拒む透徹さと、規則性を持たぬ懐深さが混在した。ブレずに貫く意志の強さがカッコいい。
 B面11分過ぎから新たな唸りがじわっと滲み、暴風雨に新たな色合いを薄く塗った。太い音圧で隙間はどこにもないのだが、圧迫感はさほどない。低域があまり含まれて無いせいか。やはり依然として、高音のつんざきもない。轟音で聴いてると、酩酊感が増していく。
 そして音楽は20分過ぎから低い蠢きの要素が増えてきた。最後は唐突に音圧が下がり、一瞬にして消え去る。

 シンプルな音使いだが、繰り返しでないため飽きない。アナログの歪みはひとときも同じ響きは作らず、微妙に変化し続けている。確かにアイディア一発の長尺ノイズなため、じっと聴いてるのはしんどい。BGMや電車の中が似合う。スカッとして気持ちいい。

Track listing:
A. D.D.D.D. Part 1 29:56
B. D.D.D.D. Part 2 29:44

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