Tower Of Power 「Power」(1987)

 返り咲きをめざして、ワザと得意な手を封じた苦い盤。悪くはないのが不思議。ToPのアイデンティティとは何だろう。

 久しぶりのCD発売、に近かった。もっとも僕はリアルタイムで触れてない。最初に聴いたのは80年代中頃に"Ain't Nothin' Stoppin' Us Now"(1976)だった。詳しくはこちら
 来日公演を渋谷へ聴きに行ったとき、新譜扱いが"Souled Out"(1995)あたりだったかな。ディスコグラフィを四苦八苦して調べ、本盤あたりから「おしゃれな復活」を遂げたってイメージがある。
 いわば70年代ファンクの泥臭さが、80年代冒頭の軽薄短小を潜り抜けて立ち位置を見つけたか、というように。

 タワー・オブ・パワーは"Back On The Streets"(1979)を最後にレコード契約を切られてた。その間、どう活動してたかは知らない。ヒューイ・ルイス&ニューズのライブでホーン隊は務めてたし、 Dinosaurセッションもあった。
  
 リリースに至ったのはミニアルバム"Direct"(1981)、そして欧州限定LP"T.O.P."(1986)。後者から3曲削り、A&Mの傘下サイプレスからワンショットで再構成リリースが本盤だ。なおその後、エピックと契約し安定したリリースにつながる。
 
 で、本盤。メンバーはToPとして奇妙な立ち位置だった。まず本盤でロッコがベースで復帰の嬉しいニュース。逆にオリジナル・メンバーのウィリー・フルトンは本盤でバンドから去る。
 ToPはメンバー交代が激しいイメージがある。本盤でいうとLee Thornbur(tp),Richard Elliot(sax), Mick Mestek(ds)が新メンバー。だが何より新メンバーであり、本盤だけの参加で終わったエリス・ホール(vo)の存在が、非常に強烈だ。伏兵でRichard Elliot(sax)も、意外と戦犯かもしれない。

 全10曲中、元となる"T.O.P."から消されたのは3曲。
A;"Doggin' at the Cathouse" 【Emilio Castillo, Stephen (Doc) Kupka】
B;"Heartbreak in the Makin'" 【Ned Dohenny,Robben Ford】
C:"You Ought to Be Havin' Fun (1986 version)" 【Emilio Castillo, Hubert Tubbs, Stephen (Doc) Kupka】
【】が作曲者。つまり本盤だと、Bはともかく、ToPのオリジナル・メンバーの曲なAがオミットされた。いやCもセルフ・カバーで割愛かも。だがなぜAを外したか。レコード会社の意向か。
 代わりに足されたのが、以下の(8)と(9)。Wikiによると以下は北米版で、欧州盤だと(9)が外され、AとBを足して全10曲。なぜだ。ちなみにぼくが聴いたCDは北米版だ。

 そして(9)と(10)の作曲者はエリス。すなわち本盤のボーカリストだ。鍵盤奏者でもある。北米版全9曲中、エリスが提供は共作を含め5曲と過半数、外部の作曲家が3曲。あと一曲、ドクの作曲(2)があるのみ。
 ほとんどToPの楽曲が無い。いかに主導権を握れなかったかを証明するかのよう。

 さらにサウンドの不満は鍵盤がブラス音色っぽいところ。つまりToPの持ち味であるブラスの厚みとぶつかっている。そのうえ、新メンバーのリチャードはリリコンも演奏してる。フュージョン踏まえて電気仕掛けのブラス音色が流行りってのは、ビジネスとしてわからんでもない。
 でもサウンドとして生ブラスが魅力なのに、それを寄ってたかってスポイルしてる気がしてならない。

 だが本盤、聴いてて全面的に推奨もしづらいが駄盤ってくさす気にもならない。そこそこ、楽しめる。勇ましいロッコのベース、歯切れ良いブラスと爽やかなハーモニーの片鱗は味わえるからだ。シンセが邪魔だけど。
 だからぼくは本盤で敢えて、リチャードを戦犯の伏兵とし、主犯をエリスにしたい。
 ファンクまで行かぬR&B風味を、ブルージーさ消して軽やかなブラスでまとめたらToPサウンドになってしまうんだな。
 
 エリスの曲はキャッチーながら、時にパワー・ポップなほどに明るい。だから怒涛のToPファンクな(2)が異様な迫力を持つ。(2)が本盤の救いだ。繰り返すが、他の曲もキャッチーな分、決して悪くはないが。

 個々の楽曲について書こうかと思ったが、いいかげん長くなったので割愛する。
 ある意味本盤は、試金石だ。(2)をどう評価するか。それでToPに馴染めるかが変わると思う。

 さて、21世紀の特権だ。本盤でオミットされた曲でYoutubeを検索してみよう。
Aの"Doggin'At The Cathouse"だけあった。女性ハーモニーも足して売れ線狙いだな。でもファンキーで悪くない。シンセが邪魔臭いが。

 ついでに不遇時代な83年のライブ映像もあったので貼っておく。狭そうなハコながら盛り上がってる様子が伺える。

 ぼくがToPを見たのはたしか90年代中盤。オンエア・イーストだったと思う。300人くらいのキャパか。それでも半分くらいしか埋まってなかった気がするな。演奏はばっちり、スタンディングだったのでステージ前のほうへもぐりこんで、演奏は堪能したけれど。

Track listing:
1. Baby's Got The Power 3:06
2. Credit 4:06
3. Some Days Were Meant For Rain 4:52
4. Boys Night Out 5:46
5. Ball And Chain 3:18
6. Through Lovers Eyes 3:39
7. Count On Me 3:24
8. On The One 3:58
9. Up Against Yourself 3:16

Personnel:
Ellis Hall - lead vocals, keyboards, rhythm guitar
Emilio Castillo - tenor saxophone, backing vocals
Stephen "Doc" Kupka - baritone saxophone
Greg Adams - trumpet, flugelhorn, backing vocals
Francis Rocco Prestia - bass guitar
Willie Fulton - lead guitar, backing vocals
Lee Thornburg - trumpet, flugelhorn, vocals (lead on 5)
Richard Elliot - alto saxophone, tenor saxophone, lyricon
Mick Mestek - drums
Stanley Benders - percussion on 8
Maxayn Lewis, Marilyn Scott, Patty Unatis- background vocals on 8

関連記事

コメント

非公開コメント