Dionne Warwick 「I'll Never Fall in Love Again」(1970)

 再び黄金スタッフに恵まれたはずが・・・つじつま合わせの出し殻っぽいムードもあり。

 バカラックは既にディオンヌを見限ってる気がした。13thアルバムの本盤はバカラック&デイビッドのプロデュースに戻り、ほとんどはバカラックがアレンジを担当。全10曲中7曲はバカラックの曲だ。けれど聴いてて、どうも親しみが薄い。

 実際のところ、バカラックのアレンジは(1)(2)(4)(6)~(8)。残りはLarry Wilcoxがアレンジを担当した。(2)は二人の共同アレンジ。
 ヒットした(2)はバカラックの曲ながら、彼のミュージカル"Promises, Promises"の曲。録音時期は違うが、ディオンヌのアルバム"Promises, Promises"(1968)のアウトテイクに聴こえてしまう。

 前年に大ヒットしたB.J.トーマスの(3)も取って付けたようなカバー。魅力的なアウトロのフレーズも無く、あっさり終わってしまう。
 ましてや最後の曲がシナトラの(10)だ、なんて。思い切り歌い上げるディオンヌは気持ちいいだろうが、これまで小粋で軽やかに歌いこなした魅力と完全に逆ベクトルだ。
 ビートルズの(5)は変に豪華なアレンジで、節回しを微妙にフェイクさせる歌い方も似合わない。バカラックの曲と似合わない。ジミー・ウェッブの曲でリチャード・ハリスが68年にリリースした(9)は、ムードとして似合ってる。でも、なにもバカラックとぶつけなくたって、とも感じてしまった。

 本盤の楽曲は、特にバカラックの曲は悪くない。

 無伴奏の一声から、いきなり曲に雪崩れる(1)はスリリングで良かった。カバーながら(2)のキュートな色合いも素敵だ。かすれ気味なディオンヌの歌声は映えている。
 (4)のシンプルなお洒落っぷりも、滑らかで魅力的。するするとメロディが駆け上がる小気味よさがあり。

 (6)でわずかに切なさをにじませ、サビでそっと跳ねるメロディ使いもきれいだ。ハーモニーとベルでそっと飾りながら上品さを失わぬ、シンプルでロマンティックなアレンジもバカラックの手腕に唸った。

 前置きもそこそこにメロディへ持ち込み、あまり張らない歌い方で穏やかな雰囲気を作る(7)もキュート。ティンパニを効果的に配置し、継ぎ目なくオーケストラへ持ち込むアレンジもよい。ディオンヌの力抜いた歌いっぷりの、なんと可愛らしいことか。

 ゆったりとワルツを奏でる(8)の優美なバッキングと、ぱあんと声を伸ばしきれいに音程をなぞるディオンヌの歌の対比も良い。喉を張る幅広いダイナミズムが美しく映えている。でも終盤はちょっと過剰かな。

 と、個々の楽曲は良いところだらけ。それなのに、わざとらしい豪華さの(5)と、力任せの(10)がすべての印象を台無しにしてる。
 過去のアウトテイクをまとめたように、ディオンヌの歌手としてエゴを(10)で飾って、あとはとってつけたように感じてしまう。

 この期に及んで、未だにただの一回も、バカラックは自作曲でディオンヌのアルバムを固めなかった。なぜだろう。トータル・アルバムが一枚くらいあっても良かったのに。
 
 そしてディオンヌは同じ70年に発表の"Very Dionne"を最後に、デビュー以来のレーベル、セプターからワーナーへ移籍してしまう。

Track listing:
1. The Wine Is Young  3:39
2. I'll Never Fall in Love Again  2:52
3. Raindrops Keep Falling on My Head  2:56
4. Lonliness Remembers What Happiness Forgets  2:05
5. Something 2:25
6. Paper Mache  2:56
7. Knowing When to Leave  2:41
8. Let Me Go to Him  3:25
9. Didn't We  2:43
10. My Way  3:25

 


関連記事

コメント

非公開コメント