Dionne Warwick 「Soulful」(1969)

 自分の歌へ自信ゆえか、時代性か。ソウルっぽい味付けに思い切り振れた盤。

 前作から半年後にリリースの、12thスタジオ作。デビュー以来初めてバカラック&デイビッドのクレジットが無い。ディオンヌ自身と、チップス・モーマンがプロデューサーで記載あり。
 録音もテネシー州にあるモーマンのスタジオで行われた。演奏もハウスバンドなGene Chrisman (drums), Tommy Cogbill (bass), Bobby Emmons (keyboards) Reggie Young (guitar)といった顔ぶれ。

 歌手としての自我が目覚めたんだろうなあ。お人形として完璧だった前作をリリースして、逆のアーティスティックかつソウルフルな立ち位置を表現したかったと想像する。
 南部寄りのプロデューサーなモーマンを起用もその表れだろう。ディオンヌ自身はニュージャージーの都会にて、そういった泥臭さとは無縁の世界で育ってきたようだが。

 選曲はすべてカバー。ソウルフルさを前面に出しながらも、ライチャス、ラスカルズ、ビートルズと黒人ぽさにはこだわらない。むしろ売れ線狙いのカバー集としか、今となっては見えない。発売から数年前の有名曲がずらり。
 ずぶずぶにソウル・マーケットを狙わず、白人層の受けも意識が伺える。

 基本はポップ・ヒット。おまけのようにアレサ・フランクリンやオーティス・レディング。さらにはプロテスト曲も出したかったか、カーティス・メイフィールドも。ラスカルズも、こっちの箱かもしれない。

 ただし出来は何とも煮え切らない。冒頭からメロディをフェイクさせ、ジャズ・シンガー的なアプローチがびしばし。持ち前の歌のうまさを全面的に生かし、時に喉を張りあげる。だが根本的にソウルフルなドライブ感に欠けており、余技にしか聴こえない。
 メロディを崩すのも良いが、それならこれらの曲を選ばなくたって。"I've Been Loving You Too Long"だって、切々と歌い上げるのが肝なのに。余裕残してのびのび歌ったら嫌味なだけだ。

 あまりネガティブなことを長々書くのも趣味悪いので、この辺にするが。選曲も演奏もコンセプトも、中途半端さが目立つ。売れ線を狙うならば、徹底的に追求すればよかったのにな。

 演奏もなんだか堅苦しい。ドラムの、特にシンバルが杭打ちのようだ。キックはグルーヴィなのに。さらにコンボ形式にこだわらず、ストリングスのダビングが中途半端な野暮ったさを増した。
 
 ディオンヌの魅力は洗練された豪華さでこそ映える。ゴスペルの素養があろうとも、甘く伸びやかな声質からして。だが自己分析は違ったのだろう。

Track listing:
1. You've Lost That Lovin' Feelin'
2. I'm Your Puppet
3. People Got To Be Free
4. You're All I Need To Get By
5. We Can Work It Out
6. A Hard Day's Night
7. Do Right Woman, Do Right Man
8. I've Been Loving You Too Long
9. People Get Ready
10. Hey Jude

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