Dionne Warwick 「The Magic of Believing」(1968)

 謎なタイミングのゴスペル・アルバム。ソウルフルなディオンヌの歌が聴ける。

 なぜ、このタイミングで?もともとディオンヌはゴスペルがキャリアの出発点。昔はニューアークのNew Hope Baptist Churchで歌ってたそう。
 そもそもアメリカ人の文化をぼくが実感できておらず。彼女にとってゴスペルの身近さや重要さを上手く咀嚼して本盤を聴けない。

 ただキャリア全盛期になぜ本盤を、とは思う。共演して自らも在籍したThe Drinkard Singersを盛り立てる意図?ディオンヌ自身が歌唱力の幅を広げるため?黒人としてのルーツを再確認?
 それとも単に、敬虔なキリスト教徒として華やかな芸能界から地に足をつけるためにゴスペルを吹きこんだ?
 いろんな解釈ができそうだが、全て想像で終わってしまう。純粋に、音楽だけで聴こう。

 本盤は冒頭2曲のみがディオンヌのソロ。あとはThe Drinkard Singersがコーラスを付けた。ディオンヌの身内、Dee Dee WarwickもこのときはThe Drinkard Singersに在籍してたのかな。
 まっとうなクワイア形式のコール&レスポンスを生かしたスタイルのゴスペルだ。演奏はコンボ形式で、オルガンを中心のアレンジ。いかにも日曜教会で歌ってそう。
 バカラックらのクレジットは一切ない。プロデュースはだれだろう。録音は彼女の世俗歌曲と同じく、セプターが持つNYの自社スタジオみたい。
 
 特筆すべきはアレンジで3曲にディオンヌのクレジットがあるところ。A1,A4,B3はディオンヌ自身がアレンジした。他は在籍メンバーだったCissy Houston、それにAnn Moss。もしくは同じゴスペル畑のRoberta Martinなどが曲によりクレジットあり。
 作曲クレジットはゴスペルの有名曲を歌ってる、のかな。あまり突飛だったり、派手なアプローチは無い。

 どうせなら無伴奏のゴスペル・コーラス風アレンジで聴きたかった。だがコーラス・グループとの少人数でクワイア式の迫力まで出す歌唱力や構成はさすが。

 ディオンヌは伸び伸びと声を張っている。ビブラート効かせても、ジャズ・スタンダードを歌うときの過剰さはない。あくまでも敬虔なムードを崩さない。
 それが魅力的だ。世俗歌では技巧を凝らし、かつソウルフルさを抑えた上手い歌唱を得意とするディオンヌだが、ここでは素直。コブシを気持ちよく効かせ、ワイルドかつ温かい歌を強力にブチかます。

 選曲やアレンジに冒険が無く堅実だけれど。ディオンヌの芸風的にはむしろ異端であるけれど。
 何も考えずにゴスペル・コーラスのアルバムと聴くならば、意外と楽しめる。数曲で聴ける、アップテンポでグイグイ押すときの、華やかな歌声が特に躍動感あって良い。



Track listing:
A1. Battle Hymn Of The Republic
A2. Somebody Bigger Than You And I
A3. Jesus Will
A4. Old Landmark
A5. The Magic Of Believing
B1. Blessed Be The Name Of The Lord
B2. Grace
B3. Steal Away
B4. In The Garden
B5. Who Do You Think It Was

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