Dionne Warwick 「in Valley of the Dolls」(1968)

 聴きごたえあるアルバム。多彩な歌唱力を披露した。ただ、全編を覆う寂しさが切ない。

 当時のアルバム発表は、今一つ順序がはっきりしないけれど。こんなリリース順のようだ。
67年 8月 前作"The Windows Of The World"(カタログNo.SPS 563)
67年?月  LP2枚組ベスト"Dionne!"(同DS 328)
68年?月 "The Magic Of Believing"(同SPS 567) :ゴスペルの企画盤
68年 3月 "in Valley of the Dolls"(同SPS 568)【本盤】
68年11月 "Promises, Promises"(同SPS 571)

 なんぼなんぼでも矢継ぎ早すぎ。特にオリジナル・アルバムで10作目となる本盤は
前年に大ヒットした"Valley of the Dolls"を表に出した企画。わざわざ間に、ゴスペルの企画盤を挟むかな?
 カタログ番号上は上記だが、発売順は"The Magic Of Believing"と本盤が逆だったりしないのかな。

 とにかくディオンヌはいったん、本盤でピークを迎える。
 本盤は2年前の"Here Where There Is Love"(1966)に続くヒットぶりで、全米6位と過去最高のチャートを獲得。ゴールド・ディスクの売れ行きだった。
 以降はだんだん波が小さくなっていき、10年後の"Dionne"(1979)まで売れ行きは苦戦する。

 本盤のあとは、色々と企画を模索するも落ち目な一方。セプターからワーナーへ移籍して、バカラック&デイビッドとも決別。そしてワーナーからも切られる。翌年、アリスタ移籍の第一弾"Dionne"(1979)にて復活まで、不遇の時期だ。

 収録曲は全10曲中、プロデューサーのバカラック&デイビッド作は(1)(6)(8)~(10)と約半分。アレンジも自作はバカラックが務める一方で、(2)はManny Albam、(3)(4)はPat Williams、(7)はGarry Sherman。
 つまりバカラックの関与がどんどん薄くなっている印象だ。

 本盤の時、ディオンヌは28歳。そろそろアイドル売りもできない世代が、当時の流れだろう。今のマドンナみたく若さを永遠に売る時代でもない。本当の大人になり、一線を退く。その象徴がヒット曲(6)"サンノゼの道"みたいに聴こえる。

 しかしこの曲も妙なアレンジだ。バスドラとベースの単音リフを軸に、おしゃれな響きを軸として豪華なオケを取り混ぜる。内容は夢破れ都落ちする曲なのに、妙にハッピーな響きを持たせた。ディオンヌの不用意に感情を込めぬ、さらっとした歌い方は逆に似合ってる。

 本盤は前年末に発表し、大ヒット(4)をフィーチャーしたアルバム。作曲はバカラックでなくアンドレ・プレヴィンたち。ディオンヌにとって、バカラックらの力を借りずともヒットを飛ばせる自信になったかもしれない。さらに代表曲の前述(6)まで手に入れた。

 ここまで時系列でディオンヌの作品を聴いてきて、特にオリジナル・アルバムに拘る必要なく、ベスト盤で充分な歌手だと思う。アルバムそのものに、さほどコンセプト性が無いためだ。
 だが敢えてオリジナル盤の流れにこだわるならば、本盤は適格だ。
 
 バカラックのトータル性こそないものの、アルバムのトーンは一定して曲調は寂しさが全編を覆ってる。華やかなはずなフィフス・ディメンションのカバー(2)ですらも。
 ディオンヌは本盤で多様な歌唱力を使いこなしてる。ささやきからハイトーンまで、パワフルさを内に秘めた激しさ、敢えて力を抜いた緩やかさ。ダイナミクスと声量の幅を、見事に操っている。

 過剰な表現はしない。だがニュアンスは自在に操り、正確な音程できちんと広げる。
 うまい歌手なさまを、まざまざと見せつけた。

 アルバムを覆うトーンは寂しい。切ないムードが抜けきれない。だがディオンヌが変なアーティスト気取りをせず、歌に寄り添って多彩な表現をたっぷり披露した女性ボーカル・アルバムとして、この盤はとても素敵だ。

 

Track listing:
1. As Long As There's An Apple Tree
2. Up, Up And Away
3. You're My World
4. (Theme From) Valley Of The Dolls
5. Silent Voices
6. Do You Know The Way To San Jose
7. For The Rest Of My Life
8. Let Me Be Lonely
9. Where Would I Go
10. Walking Backwards Down The Road

Personnel;
Burt Bacharach - arranger, conductor, producer
Hal David - arranger, producer
Manny Albam - arranger, conductor on 2
Pat Williams - arranger on 3,4
Garry Sherman - arranger, conductor on 7

Ed Smith - engineer on 1,6-9
Phil Ramone - engineer on 2-5,10

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