Dionne Warwick 「The Windows of the World」(1967)

 かっこいいアルバムに聴こえるが、実際は寄せ集め。少しディオンヌ・ワーウィックをバカラックが持て余してきた?

 9thの本盤は前作のスタンダード州がセールス失敗を受け、再びバカラック曲の歌唱路線に戻った。前作から3ヶ月後の67年8月にたちまちリリース。というより、前作がお茶濁しの企画盤だったのだろう。

 プロデュースは本盤も継続しバカラック&デイビッド、アレンジはほぼバカラックが務めるがB面2曲目からPeter Matzが(7)(8)(10)、O. B. Masingillが(9)を担当。この中途半端さは依然変わらない。O. B. Masingillはディオンヌの"Here I Am"(1966)で2曲を唐突にアレンジした彼だ。スタッフのしがらみとかあるのかな。

 本盤がらみのシングルはタイトル曲(5)、そしてもちろん大ヒットの(1)。(1)はB面の"(Theme from) Valley of the Dolls"も同様か下手したらもう少しヒットしたが、本盤には収録無し。

 Wikiによるとまず、"Here Where There is Love"用に66年4月9日に録音するが、没テイクのバカラック曲(1)(2)(3)(4)があり。このうち(4)は66年12月、(3)は67年4月に(こちらは"Alfie"のB面)でシングルが切られてた。
 さらに同じ67年4月に(5)(6)を吹きこみ、本盤の準備が整えられた。
 信じられない。なぜ没にする。しかも(1)を。自作を全部"Here Where There is Love"へ叩き込んでたら、バカラック集としてすごく良いアルバムになってたろうに。誰のプロデュース・センスだ。責任者出てこい。と言っても、バカラック自身なのだが。

 (7)(6)(10)は一方で、前作"On Stage and in the Movies"(1967)の余りテイイクという。(9)は録音時期が不明らしい。
 すると本盤は前/前々作の余りへ、員数合わせの(5)(6)を足しただけ。単なる寄せ集めか。

 ディオンヌの代表的なヒット曲となる(1)はバカラックとして、あまり納得いく出来ではないってエピソードもWikiから読める。
 そもそも(1)は映画"Valley of the Dolls"の主題歌(その割にサントラ盤へは未収録だが)としてシングルの、埋め草でB面に収録し発売。ところがDJが(1)を好んでラジオに掛けたためヒットしたって伝説もある。
 なおその盤はあまり出回ってないのか、Discogsでは(1)がB面シングルの画像が見あたらない。とはいえA面1曲目に置くあたり、バカラックが(1)に全く自信なかったとも考えづらいが。

 とにかく(1)はキュートだ。
 "I Say A Little Prayer"ってフレーズを、早い譜割で畳みかける響きがスタイリッシュだ。歌詞の載せ方が小気味よい。ものすごく遠慮がちにペットが感想を取り、ディオンヌのスキャットからハーモニーへ加わり、サビへ向かうアレンジも小粋でいい。
 迷いを見せながら、全体を流れるムードはスタイリッシュ。そんな複雑な感情がポップスに込められた。

 静かにしみじみとフォーク風に歌いかける(5)の、かすれた質感と張らない声量も切々として良い。中盤でちょっと足されるストリングスはむしろ余計で、このシンプルなアコースティック・バンドっぽいムードのままで良かった。
 同じセッションの新曲(6)も、パワーを内に秘めながら声を抑えるディオンヌの歌い方がむしろ、迫力あってきれいだ。だから歌いつつだんだんダイナミクスを増し、ついにシャウトへ至ったときの爽快感が映える。

 この2曲だけ聴くと、明らかにディオンヌはスタンダード集を吹きこんで、すっきり吹っ切れてる。この2曲では幅広い声域と声量を操り、ビブラートありなしを使い分けた。
 そんなシンプルだが効果的なテクニックで色んなニュアンスを適用する歌手に、ディオンヌはステージ・アップしたように思える。 

 アルバムとして見た場合、バカラック集のA面とスタンダードで大人のB面って二面性を持ち、メリハリある。ディオンヌの歌い方も、ポップス路線のA面と、歌い上げるB面で多面性を味わえる。さらに(9)では極端にコケッティな歌い方で、幅を広げた。
 五目味で、なかなか良いアルバム・・・と最初は聴いてたが。前述のとおり、単なるアウトテイクを寄せ集めと知った瞬間に夢が飛んだ。方針が無いゆえの、雑多で多彩なアプローチだったのか。

 ここまで書いておいて何なんだが。本盤は予備知識なしで純粋に音楽を聴いたほうが楽しめる。

Track listing:
1. I Say A Little Prayer
2. Walk Little Dolly
3. Beginning Of Loneliness
4. Another Night
5. The Windows Of The World
6. (There's) Always Something There To Remind Me
7. Somewhere
8. You're Gonna Hear From Me
9. Love
10. What's Good About Good-bye

 

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