Dionne Warwick 「On Stage and in the Movies」(1967)

 妙な自我を前に出し、中途半端なアルバム。今やバカラック流の豪華なオーケストレーションを楽しむ盤か。

 7thアルバムは前作から5ヵ月ぶり。依然としてアイドル的に活発なリリース・ペースだ。このときディオンヌは27歳。「あたしはお人形じゃないわ」と、エゴを出したのではなかろうか。バカラックの楽曲から離れ、スタンダード集を吹きこんだ。
 身の程を知れ、とは言わない。しかしなぜ「私のために素敵な曲を書いて」ってバカラック&デイヴィッドを独占するコンセプト・アルバムのほうへ行かなかったのか。世紀の傑作が出来たろうに。

 逆にバカラック側から、目先を変えてディオンヌの色を変えるためにって本企画を持ち出したのならば、それは間違っている。彼女はもっとバカラックの色へ深く染められる素直なポテンシャルがあった。
 本盤はゴージャスなオーケストレーションが施された。豪華なフルバンドをバックにスタンダードを朗々と歌い上げたら上がり、きらびやかなラスベガスの素敵なステージが似合うって価値観が透けて見え、素直に聴けない。

 ディオンヌは本盤で、すごく楽しそうに歌ってる。ときおりジャジーにメロディをフェイクさせ、喉を朗々と響かせた。縮緬みたいにビブラートを震わせる。歌手たる喉の才能をのびのび披露してるが。逆に、それ以上の何かが無い。いい意味でも悪い意味でも、ディオンヌは本盤で自らの節回しを出せてない。とてもうまい歌手、ってレベルにとどまった。
 贅沢な言い方だが、「さらにすごくて、うまい歌手」って路線を目指せたのに。

 (10)は唐突にチャック・ジャクソンとデュエットあり。言っては何だが、この当時はヒット曲もさほどなく、落ち目の頃だ。彼のほうがベテランゆえ格下とは言わないが、あまりつり合いも感じられない。
 62年にバカラック作の"Any Day Now"をチャックが出した縁でバカラックが起用か。このデュオもパッとしてないが。


 本盤はバカラック&デイヴィッドのプロデュースは変わらないが、楽曲提供はゼロ。すべてスタンダードだ。アレンジはバカラックのクレジットながら、さらにA面はGarry Sherman、B面は彼とRay Ellisの名前もあり、下請けに出した可能性もあり。
 響きはオーケストラを丁寧に鳴らす、甘くしっとりしたバカラック・サウンドで冒険ぶりは無い。

 基本はNYで所属レーベル、セプターの持つ自スタジオだが、B面のほとんどは同じNYのA and Rスタジオ録音。その際のエンジニアが、後年の名プロデューサーなフィル・ラモーンだ。

 楽曲はもちろん悪くない。しかしディオンヌの歌い方が大御所ぶった大げささで、いまいち。逆にとことん技巧を披露せず、中庸路線を抜けきれないとこに彼女の限界もある。

Track listing:
1. Summertime 2:28
2. You'll Never Walk Alone 4:07
3. My Favorite Things 2:55
4. Something Wonderful 2:27
5. One Hand, One Heart (With These Hands) 3:59
6. The Way You Look Tonight 2:29
7. He (She) Loves Me 2:21
8. I Believe In You 2:25
9. Baubles, Bangles & Beads 2:47
10. Anything You Can Do 2:18  (with Chuck Jackson)
11. My Ship 3:17

Personnel;
Producer Bacharach-David
Arranged By Conductor Burt Bacharach
Arranged By Garry Sherman (tracks: 1 to 11,), Ray Ellis (6 to 11)
Recorded By John Lakata (tracks: 1 to 5,9,10), Phil Ramone (tracks: 6 to 8,11)
Recorded at Scepter Recording Studios, N.Y.C. (tracks: 1 to 5,9,10)
Recorded at A and R Recording Studios, N.Y.C. (tracks: 6 to 8,11)

 

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