Dionne Warwick 「Presenting Dionne Warwick」(1963)

 バカラック曲の歌手としてデビューした、素朴な盤。アイドルっぽく、むやみに飾らない。

 ディオンヌ・ワーウィックは名高い歌手だが、あまりこれまで聴いてこなかった。一番イメージ浮かぶのは"愛のハーモニー"(1986)かな。あれは良い曲だった。甘酸っぱいムードが漂う。
 今回、まとめて何枚か彼女のアルバムを聴き進めてみたい。

 Wikiによるとニュージャージー州出身で、ハートフォード音楽大学にて音楽教育を専攻。副専攻がピアノという。歌手が専門ではないがきちんとした音楽教育を受けた人だったとは知らなかった。
 バック・コーラスやデモ歌手の過程でバート・バカラックと出会い、シングル"Don't Make Me Over"でデビューという。ブリル・ビルディングの時代らしい物語だ。
 デビュー曲ももちろんバカラックとハル・デイヴィッドの作品。

 おもむろに翌年、初LPが本盤となる。さぞかしバカラック色強いアルバム・・・と思いきや。いや、確かにほとんどがバカラック&デイヴィッドの曲だけど。
 (4)(6)(9)が他の作曲家の作品。中途半端だ。どうせなら全曲、バカラックで固めればいいのに。バランスとりとかビジネス的な選択かもしれない。

 シングルはデビュー曲(7)を初め(1)(2)(5)が切られた。Wiki記載のチャートでは(7)がR&B5位、全国で21位のヒットを放つも(1)がかろうじてR&B26位と、さほどヒットではない。今、オールディーズ観点で語られるのも(2)くらいかな。
 有名曲としてジェリー・バトラーが前年に発表のカバー(11)も収録した。

 こういう女性歌手の盤はどの観点で評価するか迷う。いや、単純に歌のうまさでいいのかもしれないが。どこまでディオンヌの創造力が発揮されたのか。スタッフやプロデューサーに任せ、純粋にうまく歌ったのか。どんなもんだろうね。
 
 アルバム全体のイメージは、正直なとこ地味。いくつか耳を惹くところはあるけれど。ただし、ディオンヌの声が出しかたと、滑らかに歌えるテクニックの双方を兼ね備えた、うまい歌手なんだってことは繰り返し聴いてるうちにわかってきた。

 あまりメロディをフェイクさせず、メロディを大切に歌ってる。(1)は声量押さえたキュートさからグイグイ張る、幅広い歌いっぷりをさりげなく表現した。
 (2)での"in'"ってフレーズをすっと丸める、声の余韻処理も良いな。
 甘さもむしろ控えめ。(3)あたりを過剰に溜めず、さらりこなしてる。たっぷりと喉を張ったうえで。
 (4)はむしろフィル・スペクターのテイクで聴きなれたため、オケの安っぽさが目立つ。アレンジも62年発表なBob B. Soxxのバージョンを意識してるっぽい。だからこそしょぼさもあるのだが。

 (5)はバカラック流のドラマティックな展開を、ちょっとかすれ気味な声で歌いかける。こうして感想書いてくと、楽曲ごとにキャラクターをディオンヌはさらり変えてるな。
 一転して(6)はきれいに張る。バカラック曲ではないが、ムードはきれいに馴染んでる。
 (7)では少し気だるげだが、声はきっちり出す歌いっぷり。終盤でぐっと伸ばした。この派手なバカラック流の展開をディオンヌは滑らかに提示し、歌世界へ引き込んだ。
 前年にシレルズが"Stop The Music"(1962)B面曲で発表の(8)は、コーラスを従えてディオンヌが堂々と主役を張る。(4)同様、これもコーラスにシレルズが参加かな。
 
 (9)も非バカラック曲ながら甘いムードで上手いこと雰囲気は本盤に馴染んだ。歌も柔らかく広がる。(10)はこじんまりしたポップス。穴埋めかと思わせ、中盤でドラムをバックに切なく畳みかける節回しが良かった。
 (11)は思い切り過剰に盛り上げもできるが、コンボ編成でさらりリズムを固め、女性コーラスを分厚くかぶせて情感を盛り上げるアレンジ。むしろディオンヌも感情を控えめで、やりすぎさを避けた。もっと喉を張れるが、甘いニュアンスを漂わせるにとどめて、むやみに曲を膨らませない。小粋な解釈と思う。

 そして最終曲(12)は切なさを表現して、あっさりとアルバムをまとめた。コンパクトなアレンジで、静かに幕を下ろす。 

 楽曲でいうとバカラック特有のロマンティックさはむしろ控えめ。粘っこいのは(11)くらいか。今の気分だと(3)の過剰なロマンティックぶりが良い。
 有名曲な(4)が挟まるためアルバム統一性の観点では、ちょっと途中で気分が変わってしまう。ほんと、バカラック曲でまとめて欲しかった。バラエティさって意味では成功してるけど。

 バカラック楽曲の拡販見本盤を、歌がうまいから一般市場向けにリリースしたって感じ。演奏はクレジット無いがスタジオ・ミュージシャン。弦や管もふんだんに足して、安っぽさはない。もちろんディオンヌの歌もオケに負けてない。

 ぼくが聴いてる音源はマスタリングがしょぼくて、いまひとつ安っぽい。しかしAmazonに2016年リマスターというMP3が売ってた。未聴だが、きちんとリイシューしてるなら、あんがい良いかもしれない。CDなら初期盤を4in1した2枚組もあり。
  

Track listing:
1. This Empty Place 2:55
2. Wishin' And Hopin' 2:55
3. I Cry Alone 2:37
4. Zip-A-Dee-Doo-Dah 2:40
5. Make The Music Play 2:25
6. If You See Bill 2:58
7. Don't Make Me Over 2:46
8. It's Love That Really Counts 2:16
9. Unlucky 2:25
10. I Smiled Yesterday 2:44
11. Make It Easy On Yourself 2:40
12. The Love Of A Boy 1:59


関連記事

コメント

非公開コメント