Dinosaur Jr. 「Farm」(2009)

 のびのび丁寧に轟音ワイルドな脱力ロックを展開した、再結成2作目。

 ダイナソーJr.はつくづく大人のロックだ。我を張る若い時を経て、人間関係は破綻。バンドは次々メンバーが脱退するも、新顔入れ替えで無理やり存続を図らなかった。J・マスシスは潔くソロでバンドを背負い、解散。そして各人が人生経験を積み、おもむろに再結成した。
 そこから力関係やバランスは破綻せず、かなりJのワンマンさを出しつつも円滑にバンドは稼働し、昨年に再結成10年を超えた。

 65年生まれのJは83年の13歳でダイナソーを結成。88年の23歳のときルー・バーロウが去り、91年の26歳でマーフが去る。97年、32歳でダイナソーが解散。
 05年に再結成はちょうどJが40歳の時。不惑を迎えて色々大人になったってことだ。そこからは、実に順調な活動をしてる。サウンドの根幹は変わらず、歪んだギターの迫力だけはガンガン増した。

 本盤は再結成の2作目。"Beyond"を07年5月に発表しワールド・ツアーに出る。Setlist.fmによれば、合計で138公演。発売日の07年5月1日シカゴ公演を皮切りに08年10月2日のアトランタ公演まで、北米を中心にライブを重ねた。 

 旅が終了して、おもむろに本盤のレコーディングへ突入。勤勉だ。年内から翌09年までかけて製作、6月にリリースする。ほとんど休んでない。そして全135公演にわたるワールド・ツアーを6月20日から始めた。

 決してダイナソーJr.はまじめな印象じゃない。むしろ、逆だ。しかし実際は人間関係のぎすぎすやいい加減さは皆無で、実に緻密な活動を続けてるとわかる。大人だ。

 本盤はJがお得意のミドルから緩めのテンポを中心に、けだるげなロックを積み上げた。全12曲、60分越えでみっちりと。なおデラックス・エディションではカバー2曲を含む4曲追加あり。
 
 冒頭から歪んだギターが噴出し、ひずんだベースが刻む。はたくようにワイルドなドラムが暴れる。だがどれも、すっきりと聴こえるのがポイントだ。
 この盤は轟音でスピーカー、さらにヘッドフォンで聴くことを推奨する。
 最初は荒っぽいロックと思わせて、丁寧にレコーディングがヘッドフォンでわかるからだ。

 ギターは左右に振られ、それぞれ違うフレーズを弾く。さらにソロやオブリで中央に1本、時に2本。つまりギターは幾本も重ねられ、微妙なオーケストレーションで迫力を出してる。
 その割に個々の音がヘッドフォンだとクリアに聴こえるのが凄い。丁寧なミックスだ。
 もちろんボーカルも時には多重録音され、厚みに工夫を出した。ギターの歪みも、均一の通り一遍じゃない。楽曲によってエフェクターを変えて、神経質にディストーションをコントロールした。

 曲の並びも5曲目と最終12曲目がバーロウの曲。アルバムの締めを潔くJはバーロウに譲り、さらにアルバムの並びそのものもバーロウの違う雰囲気な曲を挟むことで、自分の色で塗りつぶさぬよう、慎重に気を配っている。
 もちろんその2曲はボーカルも、バーロウには任せる鷹揚さを見せた。ワンマンだがJは締め上げはしてない。

 こうしてプロダクションも細やかに配慮しながら、楽曲やバンドのイメージは崩さない。あくまでワイルドで轟音と歪みのロックだ。長尺を数曲はさみ、ギター・ソロを聴きたいキッズの需要にも応える。なおかつ、泣きのバラードやゲスト・ミュージシャンを迎えたり珍奇な楽器をダビングで冒険をしない。

 楽曲も荒っぽくまとめ、変に作りこまない。気だるげなJのボーカルも味わいは変わらない。PVは(6)を作った。スケボーと自転車で街を走る、ストリート感覚を生かしながら無理はしない。これ、上手いけどところどころスタントを使ってるようにも見える。

 製作はどこを取っても隙が無い。うーん、大人だ。

 ちなみにサウンドは、カッコいいよ。ゲストを入れず多重録音で、ダイナソーの世界をみっちり作り上げた。

Track listing:
1. Pieces  4:34
2. I Want You to Know  4:32
3. Ocean in the Way  4:22
4. Plans  6:43
5. Your Weather" 3:08
6. Over It  3:49
7. Friends  4:34
8. Said the People  7:43
9. There's No Here  3:41
10. See You  5:49
11. I Don't Wanna Go There  8:45
12. Imagination Blind" 3:21
 
Personnel:
J Mascis - Lead vocals, guitar, producer
Lou Barlow - Bass, lead vocals (tracks 5 and 12)
Murph - Drums

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