Sheila E. 「In Romance 1600」(1985)

 やはりプリンスがほとんどコントロールした、華やかなシーラ・Eの2ndソロ。

 作曲、演奏ともにプリンス。ただし(7)のみ彼は一切関与していない。"Around The World In A Day"の数か月後に発売された本盤は、プリンスの新レーベル、ペイズリー・パークから。イケイケでプリンスがすべてをコントロールしたがってた時代。にも関わらず、彼の関与しない楽曲を収めたあたり、シーラ・Eの存在感が伺える。
 べったり親しくプリンスと活動をしながらも、独自路線を主張できる自立性。シーラ・Eはたぶん唯一、今に至るまで自立心を残しながらプリンスと関与できた。その凛々しさの片鱗が、本盤で伺える。
 
 楽曲クレジットはダミーなのは本盤でも同様。
 LPではプロデュース、作曲、アレンジはすべてシーラ・Eで、(3)のみプリンスと共作だった。演奏は多数のミュージシャンを呼んで、プリンスは(3)、(5)でギターとコーラス、(4)でベースを弾いたのみと書かれたようだ。
 だが実際はほとんどプリンスが演奏と言われる。パーカッションの手さばきは素早く、かなりシーラ・Eと推測する。
 サックスはEddie M。当時、シーラ・Eのバックバンドだったらしい。エリック・リーズじゃないとこがミソか。

 Eddie Mのサックスはロックンロール寄りで、かなり線が細い。それがシンセとパーカッションに彩られた本盤で、奇妙に青白く光る。アドリブも取るが、特に(3)のフレーズを聴いてるとリフをそのままなぞる場面もしばしば。一通りベーシックができたあと、ダビングで参加ではないか。

 本盤からのシングルは(1)(8)(3)。(2)がカップリングで収録された。本来、自作の(7)をシーラ・Eは押したかったとしても、そこまで我は通さなかった。
 
 "パープル・レイン"期の華やかな楽曲が並ぶ。けっこうバラエティに富んだ選曲だ。その一方でやたら長尺の(3)を入れるあたり、どうもバランス感覚が不安定。プリンスはタイムと言いシーラ・Eのアルバムと言い、妙にサイドメンの作品では長尺ファンクに拘っている。フロアでかけることを想定か。自分以外は二流感を出したかった、のひねくれか。

 レコーディングはパープル・レイン・ツアーの合間、84年12月~85年2月の3回に分けて録音。他に"Fish Fries"と"Small Grey Monkey"が同時期の没曲とPrince Vaultに記載あり。

 歯切れ良いサックスとパーカッションの多重録音から一転、明るいファンクに向かう(1)で幕開け。シーラ・Eの歌声は癖が無く、華やかでいい。硬いティンバレスの連打はシーラ・Eだろう。シンセと打ち込みビートで固めて、細かくパーカッションが重ねられた。
 キャッチーでスマートなメロディが魅力的でキャッチーだ。サビの低音はプリンスがハモっているような。

 ストリングスをシンセで代用したミネアポリス・サウンドに仕上げた(2)もロマンティックで良い。フェイドインでドラムが入り、一気にリズミックに向かう。サックスが安っぽく鳴り、ハモリのプリンスもいい感じ。ここでは前に出ず、きっちりとシーラ・Eを支えた。エレキギターのオブリもしっかり殿下印。
 シンプルな曲だがリフや飾りをくるくると変え、飽きない細かなアレンジを採用した。
 異様なのが(3)。確かにプリンス色の強い曲で、パレード・ツアーからセットリストに登場する名曲。ボーカルもたっぷりプリンスが登場し、自分の色を隠さない。彼的には、これこそがキラー・チューンだったのかも。
 確かにファンクネスが見事な一曲だが。LP収録で12分越えはいかにも長い。12"シングルじゃないのに。なぜここまで引き延ばしたのだろう。

 ジャム風の演奏が延々続く。これがバンド・セッションならまだしも、演奏は一部のパーカッション以外はプリンスの独演だ。
 逆にここまで長くベーシックを録って、編集を加えてたって証拠としては貴重。とはいえ冗長さは否めない。かなり長くEddie Mのサックスもフィーチュアされるけど、途中で腰砕けになってリフをワンホーンでなぞるあたりが安っぽい。
 良い曲だが、もっとシンプルにまとめて未発表になった曲を入れる手もあったろうに。
 PVは3分強にエディットされてる。パレード・ツアーでのライブ動画もあった。
 

 B面に移って(4)。打ち込みビートが炸裂するキュートな曲。サックスがリフを補強した。いがいと荒っぽい出来で、うっすらとハーモニーをプリンスが歌った。
 ただしボーカルは多重録音して丁寧に積み上げた。演奏より歌に軸足置いたアレンジか。歌とも語りともつかぬプリンス流のファンクネスを、シーラ・Eの元気良いセクシーさでサッパリとまとめた。さりげない曲だが、彼女の歌声で聴かせる。

 一転してジャジーな(5)。サックスのダビングとシンセのホーンで決めた。低音の男性声はプリンスにしては素直だが、誰だろう。また、ホーン隊は金管が加わってるかも。シンセにも聴こえるが。このあたり、クレジットが信用できない。
 クレジット上は当時のシーラ・Eバンド・メンバーだったKarl Perazzo(ds),Benny Rietveld(b),Susie Davis(key)の記載あり。確かにこの3人がベーシックを録ったってのもありそう。実際のリズムは打ち込みもダビングされてる。
 男女の掛け合いボーカルでラテン・ジャズ風に行く、2分少々の小品。

 がっつり打ち込みシンセとエレクトロ・8ビートの元気良い(6)はいかにも、パープル・レイン時代のプリンス風な楽曲だ。サビで大勢の声でうわっと盛り上がるキャッチーなメロディも良い。確かにアルバム・タイトルにふさわしい明るい曲だ。
 裏拍で打ち込みビート、拍頭は安っぽい音色のカウベル風な打ち込み。その合間をタンバリンみたいな音が埋める。16分音符までまたぐ譜割ながら、ノリは8ビートな重たさあり。

 (7)は古めかしいマーチング・バンドのテープに、シーラ・Eのパーカッションを足すインスト。サックスが薄く鳴り、高速ベースがうねるインストだ。プリンスが非関与なゆえに、情報が無く委細は不明。シーラ・Eのバック・バンドを元にレコーディングか。 
 録音は他の曲に比べ硬い仕上がりだが、昔の録音を引っ張り出したって感じじゃない。同時期の録音だろうか。終盤でソプラノ・サックスがやけに派手に響く。Eddie Mが吹いてるとしたら、異様にこの曲だけ上手い。

 そして最後はロマンティックなバラード、(8)。逆回転の演奏を多用し、サイケな雰囲気を出した。こういう効果は自作で使わず、シーラ・Eで実験するあたりプリンスはしたたかだ。
 メロディは美しく、伴奏はひねったまま。そしてサックスがずっと歌に寄り添って吹き続けた。
 リズムは逆回転のまま、ピアノやシンセが普通にダビングされて楽曲が地に足ついてきたところで、軽く鳴らされるシンバル。こういうアレンジ技が見事。

 野太く歌い上げるシーラ・Eの歌唱力も素晴らしい。むせび泣くようなプリンスの節回しをなぞりつつも、きっちり自分の歌に引き寄せている。

 パープル・レイン時代の色合いを見せながらシーラ・Eの味わいをしっかり残す。プリンスとシーラ・Eの個性が、いい感じで混ざってる。

Track listing:
1.Sister Fate (3:50)
2.Dear Michaelangelo (4:38)
3.A Love Bizarre (12:18)
4.Toy Box (5:32)
5.Yellow (2:11)
6.Romance 1600 (3:56)
7.Merci For The Speed Of A Mad Clown In Summer (2:47)
8.Bedtime Story (3:45)

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