Derek Bailey, George Lewis and John Zorn 「Yankees」(1983)

 若かりしジョン・ゾーンとジョージ・ルイスが巨匠の胸を借り、即興を追求した。

 83年にブルックリンでのスタジオ録音、全てが即興。既に一時代を画した英フリージャズのデレク・ベイリーに、30歳そこそこの二人が向かい合うセッション。ゾーンは"The Classic Guide to Strategy"(1983)制作な時期であり、マウスピース奏法も多用してる。冒頭からいきなり水槽へ突っ込んでぶくぶく言わせる音も投入した。

 ルイスは吹きすぎず、鈍く低い音で断片的に応えた。決してベースラインを抑えるような殊勝さは見せない。ベイリーはいつもの独自路線。だが耳を閉じてはいない。二人の演奏に釣られもしないが、孤高を気取りもしない。

 本盤でのセッションは分かりにくい、だろうか。きれいなメロディもないし、比較的ベイリー寄りのセッションでゾーンもルイスもむやみに前へ出ておらず、わかりやすいバトルの場面もない。
 しかしすっとんきょうなフレーズをゾーンが出してもベイリーは慌てず、もこもこ唸るルイスがスペースを探すスリリングな場面は聴きごたえある。
 ゾーンもルイスも特殊奏法を連発して、テクニックの応酬も素晴らしい。

 てんでに音を出してるようだが、ゾーンが吹きまくらないため音像はすっきりした。さらにゾーンとルイスはある程度、展開を合わせてる。フレーズを短く交換したり、二人してロング・トーンで攻めたり。
 それに流れをすんなりと合わせはしないが、音像を敢えて崩さないのもベイリーのスタイル。つまりむやみに予定調和で盛り上がらず、チグハグにもならない。
 ちょっとばかり地味だが、このストイックさこそが本盤の魅力だ。

 この盤もゾーンは権利を買い取らずTZADIKからリイシューなし。むやみなプレミアはついてないが。MP3でも今は手軽に聴ける。

 ブルーズ性と熱さを外し、理知的で無機質さを追求した欧州フリージャズの美学と、スカムやパンクから準拠枠の解体を志向した二人の若きアメリカ人による、新たな音楽の追及した本盤は、埋もれないで欲しい。

 まあ、確かにフリージャズに慣れてないと聴きやすくはない。スピリチュアル・ジャズ的な熱狂も外し、冷静寄りだけれど。とはいえベイリーを燃えさせ、じわっと炸裂するゾーンとルイスのテクニックもさすがと思う。
 

Track listing:
1. City City City  8:22
2. The Legend Of Enos Slaughter 9:17
3. Who's On First 2:56
4. On Golden Pond 18:00
5. The Warning Track 5:28

Personnel:
Derek Bailey: guitars
George Lewis: trombone
John Zorn: alto, soprano, clarinets, game calls.

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