Derek Bailey & Han Bennink 「Han」(1988)

 勇ましく抽象的に跳ねる即興が詰まった、長尺2曲。
 

 デレク・ベイリーとハン・ベニンクのデュオ盤は以下があるようだ。本盤は3作目のアルバム化でライブ音源。

【Duo Discography】
1972:Derek Bailey & Han Bennink
1977:Company 3
1978:Derek Bailey / Han Bennink
1983:Han
1999:Post Improvisation 1: When We're Smilin
1999:Post Improvisation 2: Air Mail Special

 セッションならばもっと共演が多く、手慣れた仲だろう。寄り添う風ながら寄り掛からず、独自独歩に見せながら流れは息が合っている。
 この二人ならば出音はどれを聴いても一緒な気もするが、それぞれの楽しみもあるだろう。あまりこのジャンルは聴いておらず、僕は他の盤と比較はできないのだが。

 音盤リリースのハードルが大幅に下がった21世紀ならいざ知らず、限られた購買層しかいないはずの本ジャンルを地道にリリースしたIncusの存在は貴重だ。門外漢が入りづらく、ぼくは全貌がつかめていない。

 ここで聴けるのは鋭利で抽象的な即興。緊張感あふれると取ることもできる。しかし途中でベニンクが床へスティックをばらまき叩き始めると、観客がどっと沸き笑う音が入ってる。というか、そこかしこでウケまくり。爆笑の連続だ。

 そう、即興は現場でこそ楽しめる。その場の空気感、雰囲気込みで味合わないと意味がない。音は厳しくつかみづらくても、ライブ現場ではグッと親しみやすく聴こえてるときもある。文字通り、洗面器へ顔突っ込んだみたいに張りつめた場面もあるけれど。

 だが現場にいなかったせめてもの追体験として、音盤で様子を味わいたい。
 音盤ならば編集やダビングの意味付けも可能だが、この盤は特にテープを切らず、そのまま収録してるっぽい。PAアウトでなく、オーディエンス録音。

 この盤は発表時にトラック分けをしてないだけで、実際は複数個所での短いセッションをまとめた。CD発表にもかかわらず、LP片面風にまとめたのはベイリーのこだわり。異なる録音、機材の違いで現れる空気感の違いも含めて楽しんで欲しいという。

 (1)はエセックス大学、The Carmarthen、the Soho Poly Theatreでの録音がつながった。テイクによってはテープのヒスノイズまで聴こえる。ブート並みの仕上がりともいえる。
 ピアノを弾く場面も聴こえるが、誰が演奏だろう。ベニンクかな?
 (2)はBethnal Green Music Libraryにて。双方ともすべて、エセックス大学以外は、ロンドンでのライブかな。録音時期は86年の3月15~22日に行われた。この一週間で8回のギグをこなしたとある。

 本盤で笑いを持ってくのはベニンクばかり。ベイリーは畏まってたかは知らないが、冷徹に寄り添わず独自のタイム感でフレーズを重ねる。
 一方でベイリーのフレーズは抽象的にとどまらず、時にカッティングっぽい勢いやグルーヴを感じさせるノリの良さも出す。

 うねりながらギターが疾走し、連打乱打剛打猛打からユーモアまで幅広くドラムが受け止める。
 ぴいんと硬く細い響きのギターは、時々に軋むノイズが入る。鳴りが深く太いドラムは緩急効かせ、単調さを注意深く回避した。
ひとたびサックスを持つと、途端に空気がジャジーへ展開するのも興味深い。ベイリーも抽象と甘い伴奏を交互に重ねていく。

 一貫した質感のサウンドだが、音楽へのアプローチは場面ごとにさまざま。さすがの即興巧者な二人だ。
 かなり聴きやすいインプロが詰まってると思う。

Track listing:
1. Melancholy Babes, Part 1 25:26
2. Melancholy Babes, Part 2 30:25

Personnel;
Guitar: Derek Bailey
Percussion, Soprano Saxophone : Han Bennink

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