Neil Young 「Are You Passionate?」(2002)

 黒人音楽へ接近ながら、妙に野暮ったい怪作。タイトル曲は印象に残るが。

 ニール・ヤング25枚目のアルバムな本盤は、自分のバンドなクレイジー・ホースとのセッションは(7)のみ。
 全面的にセッションへブッカー・T&MGズを招いた。それらのプロデュースもブッカーとドナルド"ダック"ダンだ。
 あまりニールは黒人音楽の憧憬をあからさまにしないイメージだが、本作では何か思うところあったのかもしれない。いっそ全部MGズで良いのに、敢えてクレイジー・ホースとの録音入れるのも中途半端なバランス感覚ではある。

 もとは92年にディランのデビュー30周年記念ライブで共演がきっかけらしい。93年にはMGズ帯同のツアーを実施、

 で、本盤。どうにもドラムが野暮ったい。アル・ジャクソン亡き後、MGズのサポート・メンバーなスティーヴ・ポッツが叩いてはいるのだが。彼だけ別録と思わせるような、微妙にノリが重い。杭打ちドラムで武骨なエイトビートを刻んだ。滑らかなベース、温かいオルガンと他の演奏は文句ないのに。

 それとギターも曲によっては、リフがいがいと堅苦しい。
 なおギターはスティーヴ・クロッパーでなく、クレイジー・ホース側からFrank "Poncho" Sampedroとヤングが弾いてる。ヤングが弾くとずるっと重くなってるのかも。
 要は完全にMGズではない。その点も、中途半端。

 さて、本盤。個々の楽曲は聴きどころある一方で、アルバム・シーケンス的にはチグハグ感が漂う。

 しょっぱなからMGズっぽいビートを提示するのだが、奇妙な野暮ったさあるのは前述のとおり。さらに怪盤なのは、どうもキーの選択が突飛なところ。
 (1)から異様に高い音域で、か細くヤングは歌う。スピーカーで聴いてるとさほどでもないが、ヘッドフォンだとどうにもぺなぺな感が漂った。一曲目からこれかよ、と。
 
 (2)でグッと重心を下げる。ヤング的なロックではあるが、MGズがいきなり背後に下がり、音楽の一要素になってしまう。嗄れ声で歌うのがブッカーか。やはりか細く高い声でヤングが絡んだ。この曲、ほのぼのしたムードと苦い渋さが混在した面白い曲なのだが。
 (3)は歯切れ良いロック。逆にブッカーとドナルドがグルーヴを足した。ドラムが邪魔臭いが。その割に歌は煮え切らない。もっと炸裂して欲しい。このボーカルの弱さが本盤で致命的だ。

 (4)も、のどかな感じを漂わせながら甘さを抑えるバランス感が良い。少しばかり大味なのは、やはりギターとドラムのせい。ピアノの爪弾き、さらに妻たちハーモニーに加える味付けをした。
 ヤングの歌は素直に響く。このくらいの音域がきれいに似合う。(1)や(3)も、こんな感じで歌えばいいのに。
 名曲とは言い難いが、佳曲と思う。ちょっとアレンジに隙間が多い。

 そして問題の(5)。9/11テロに立ち向かう飛行機の乗客に捧げた曲。
 重苦しい9/11のテーマをMGズの色でファンキーに染めた。クレイジー・ホースのがちがちなロックで聴いても見たいが、逆にメッセージ性がこのアレンジのほうが増してるかも。ヤングの歌は低めの声域で凄みを出しそうだが、いかんせん線が細い。ミックスも歌と演奏を溶かす感じ。

 タイトル曲の(6)。これが良い曲で、脳裏に刻まれる。物語性を持つバラッドで、弾き語りも似合いそう。けれどきっちりバンド・サウンドに仕上げた。楽曲そのものはセンチメンタルな空気が漂い、かなり重苦しい。
 サビはもっと華やかに、熱くも甘くも盛り上げられた。だがヤングは解放せず手綱を絞ったまま、語るように歌い続ける。渋く、鈍く光る。

 クレイジー・ホースとの(7)は前曲が重かっただけに、意外と滑らかにつながってる。弾まないがヌケたグルーヴのドラム、ぐいぐい武骨に押すベース。ギターを本盤の共通項に、生き生きと違うノリをここで聴かせる。
 妻と娘のコーラスを薄くかぶせ、カッコいいロックを作り上げた。メロディに派手さは欠けるが、ここでもヤングの甲高い声がきれいにハマってる。やはり(1)の声域は変だよなあ。

 一転してファンキーな世界へ戻った(8)。テンポを抑え、ヤングがピアノとギターで一人掛け合いか。涼やかな歌声が緩やかに流れた。
 この曲ではドラムがあんがい良い。部屋鳴りを強調した深い音色と、シンバルのひしゃげた響きも含めて、サウンドを温かく包んでる。

 (9)もMGズのサウンドそのまま。明るくヤングは前に進んだ。こういうポップな曲になると、歌声はむしろ線が細い。ソウルフルに盛り上がるサビのあたりは、歌唱力がメロディに負けている。むしろ誰かに提供したら、面白い60年代回帰のソウルへ仕上がったかも。
 アレンジはソウルへの憧憬が凄く素直に出た。サビでの引っかかるメロディ感はヤング節だけど。

 (10)もドラムが良い感じ。ロック寄りのほうがドラムは馴染むな。メロディアスにベースが動き、オルガンが温かく包んだ。
 カントリー・タッチのミドル・テンポな曲。柔らかい旋律をヤングは滑らかに歌う。張り切れぬ声質が、頼りなくも切なさを強調した。低く鈍いギターはヤング、かな。歌に吸い付き、低音をがっちり補強する。
 この曲、サビでの歌い上げる箇所が良い。なんともハジけぬ、か細さも含めて。

 そして最後、(11)。ここでたっぷりと演奏を強調した。スリリングなファンキーさを滲ませて。ドラムが野暮ったいタイプで惜しい。ディストーションを効かせたギターは、ヤングかな。
 細く演奏に埋まりがちな歌よりも、野太いギターとMGズ側の絡む中盤以降のジャムこそが、この曲の魅力だ。
 テクニカルに楽器を弾き倒さず、じわっとソロをつなぐ。酩酊中のようにじわじわと伸びてくギター・ソロが良い。

 ヤングはギターにピアノにと活躍してる。一発録りのジャムでなく、ベーシックを録ってダビング重ねた感じ。
 トランペットはヤング側の人脈で、Tommy Brayが吹いた。ちなみにMGズ側なら、誰だろう。メンフィス・ホーンズからWayne Jacksonあたり?パッと思いつかない。
 余韻を伸ばして、サスティンが消えかけたところにドラムの一打。セッションっぽい終わり方で、生々しくアルバムの幕を下ろした。
 
 ということで本盤、個々の楽曲は聴きどころ多い。だが並びがどうも馴染まないなあ。 もっとコンセプトを突き詰めたら、強力さを増したのでは。コンセプト先行で、その時点の新曲を片端から投入って感じ。
Track listing:
1. You're My Girl  4:41
2. Mr. Disappointment  5:26
3. Differently  6:04
4. Quit (Don't Say You Love Me)  6:02
5. Let's Roll  5:54
6. Are You Passionate?  5:08
7. Goin' Home  8:49
8. When I Hold You in My Arms  4:44
9. Be With You  3:32
10. Two Old Friends  6:15
11. She's a Healer  9:08

Personnel:
Neil Young - vocal, guitar, and piano
Booker T. Jones - organ, vibes, and vocal
Duck Dunn - bass, vocal on 3
Steve Potts - drums, bongos, and tambourine
Frank "Poncho" Sampedro - guitar and vocal
Tom Bray - trumpet
Pegi Young - vocals
Astrid Young - vocals

Neil Young & Crazy Horse:on (7)
Neil Young - vocal and guitar
Frank "Poncho" Sampedro - guitar and vocal
Billy Talbot: bass
Ralph Molina: drums and vocal 

 当時02年5月18日に独ニュルンベルクのRock am Ring Festivalへ出演した、2時間半にわたるライブ動画がこちら。バックバンドは本盤のMGズ部隊で、ギターがサンペドロ。本盤発売が4月、プロモーション・ライブの一環か。

 セットリストは以下の通りで、本盤からは(3)~(7),(10),(11)とフェスのわりに新譜からずいぶん多く演奏してる。いっぽうでヤングの曲もいろいろ演奏、MGズとの共演アレンジでそれらを聴けるのも、本音源の楽しみか。



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