灰野敬二 「Execration That Accept To Acknowledge」(1993)

 パブリック・イメージどおりな、轟音エレキギターとシャウトのライブ録音41分。

 オーバーダブなし。歪むギターがフィードバックをまとって複雑に響く。喘ぐようなハイトーンの声と、強烈に炸裂するエレキギターの対比が美しい。やけにドライで硬質かつ奥行きの薄いギターは、部屋鳴りのエコー感が希薄だ。
 強烈サイケでビート感や小節を超えたうねりと迫力が降り注ぐ凄みを持った。
 米ボストンのForced Exposureから発売、海外で初めてのリリースが本盤という。

 「認めるのを受け入れるのはとても嫌なこと」ってのがタイトルの日本語訳か。録音時期や場所は不明。日本でのライブかな。灰野啓二の本「捧げる」で当時のスケジュールをたどると、既に92年は海外でもライブを始めている。


 ギターは轟き、シャウトはつんざく。響きっぱなしでなく、時にメリハリをつけ空白が生まれる。間も含めて、荒ぶり高まる咆哮は涼やかに広がった。
 ライブでは耳鳴りで聴き取れないであろう響きが、細かく味わえるのがCDのいいところ。
 最初のクライマックスが12分過ぎ。ブレイクを頻繁に挟み、すぐさま跳ねる。残響はゲート処理のようにすぐさま消え、たちまち立ち上る。編集無しと思えぬ鋭い立ち上がりだ。
 ギターのエフェクターはどうなっているのか、複数の音色が立ち上っては消え、よじられ分かれていく。素早いフットペダル処理とも考えにくい。ライブでの灰野のイメージによれば。ディレイでループ効果を出してるようにも聴こえた。
 セッティングも含めて、灰野はアンプの鳴りや残響を瞬時に判断し音楽へと昇華した。この偶発的だが整いに仕立てる手腕が、彼の剛腕ギターの醍醐味の一つ。

 メロディや構成、展開やメリハリは無い。ただその場で炸裂する音が緊張感と優美さをもって展開していく。
 歌とギターが全く違う時間軸で流れ、ポリリズミックとも違うタイミングで揺れる。刻みを強調しないがビート感がかなりタイトなギターに、ふわふわと漂うボーカルの絡みだ。

 20分過ぎ、そこまでの長いフレージングをするり脱ぎ、ザクザクと刻み始める瞬間のかっこよさったら。複数のフレーズが並列する。歪んだ響きと、乾いた鳴り。さらに違うギターも載っており、いくつかはその場でサンプリングしたループかも。
 叫びはそれと別次元で、むせび泣くように絞り出された。

 とにかくスケールが大きい。それでいて大味さは無く、大胆だが繊細だ。
 緊張感を切らさず、じわじわと迫りくる。
 音色は常に一定ではない。変化し続ける。例えば28分前後。盛り上がりがパッと収斂し、たちまち濃密だが異なる風景へ疾走した。この転換さとアイディア豊富な鮮やかさが魅力だ。エレキギター一本で多彩な音色を引き出し、まったく飽きさせない。

Track listing:
1.Execration That Accept To Acknowledge 41:43


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