高中正義 「An Insatiable High」(1977)

 LA録音でリー・リトナーと共演した高中正義の3rdは、ラテン風味の爽やかなフュージョン。

 リー・リトナーと双頭ギター編成のアルバム。ギタリストのソロなのに、この構成はけっこうユニークだ。胸を借りる発想か、単にバトルしてみたかったのかどちらだろう。
 当時のリトナーのバンド、ジェントル・ソーツからハーヴィ・メイソン、パトリース・ラッシェンが全面参加した。その他のメンバーも凄腕のスタジオ・ミュージシャンばかり。
 ホーン隊にはタワー・オブ・パワーの面々が揃った。アレンジをグレッグ・アダムズが担当し、カスティリョとピケットの双頭サックスが聴ける。
 さらにエンジニア見たら、ボブ・ストーン。のちにザッパと仕事する人だ。

 これでアルバム作れるはずなのに。たぶん物足りなさが残り、日本でダビングを敢行。浜口茂外也がほぼ全曲でパーカッションを足している。さらに深町純が二曲で参加。(5)はラッシェンの音が無く深町のみだ。ドラムはポンタが(4)でクレジットあり。
 日本勢だけで良い音が作れそうな気もするが、アメリカ人とやりたいセンスもわからないでもない。このころは舶来信仰が強かったろうし。

 滑らかな高中のギターは瑞々しく響く。バックのメンバーも危なげないわけもない。すっきり爽やかに音像を描いた。アルバムはむしろ五目味。ギターばりばりでもなければ、トロピカル一辺倒でもない。
 バラエティ豊かにラテン推しから甘いバラード、華やかなフュージョンまでより取り見取り。フュージョンは正直苦手だが、この盤は素直に聴けた。たぶん、根本のメロディ・センスが日本人の琴線に合ってるためだろう。ぼくも日本人だし。

 涼しげだがセンチメンタルさを含み、泣きのフレーズもはかなさを漂わす。
 こういう音楽をBGMにリゾートを楽しむ健康的な人生は送ってこなかったが、10代後半に出会ってたら、趣味嗜好が少しは変わってたかな。
 今回初めてこの盤を聴いたが、妙にノスタルジックな気持ちになる。若さは既に僕の人生で縁が無いもんなあ。

 ギターのチョーキングからホーン隊が滑り込み、軽やかなドラムが駆け抜ける(1)。歯切れよくギターがフレーズを紡ぐ。
 一転して粘っこい(2)はファンキーなしたたかさを持つ。深町のアレンジしたストリングスが優しく空気を撫ぜた。ギターはリトナーと高中のカッティングで、ラッシェンの鍵盤が甘くメロディを奏でた。ギターで線の細いほうがリトナーかな?
 グリーンのドラムはちょいとばかし野暮ったい。
 
 軽快なラテン・ビートの奔流とレイニーの粘るベースだが、強いフレーズで突き進む(3)。弦でなくシンセで白玉は代用した。メイソンの歯切れ良いドラムに、ギターがくっきりと奏でた。ユニゾンで派手なキメも織り交ぜる。

 ちょっと抜く軽いビートの(4)はメイソンとポンタの2ドラム、ホーンも加わりボーカルも足す豪華なアレンジ。華やかさではこの曲が一番か。
 屈託ない明るいムードで、透明な風景を鮮やかに広げる。弦のアレンジは高中自身だ。

 高速ラテンでB面も幕開け。(5)はギターのユニゾンでメロディが提示された。ディストーションが高中でクリアなのがリトナーかな。ここでもタワー・オブ・パワーのホーンが加わる。
 リズムはラテン、だがキメの多いアレンジはトロピカルを超えたスピードを持つ。あえて鍵盤が深町のみなのは、現地でラッシェンと録り損ねたか、潔く深町に差し替えたか。後者のような気がする。ここでは爽やかさを少し減じ、ちょっとファンク寄りの鍵盤だ。
 タイトに決めるギターのメロディをリトナーがなぞるだけでなく、ホーンも吸い付くようなフレーズを連発させ、キメを強調した。
 
 (6)はちょっと都会な風景。NY方面を連想した。クールなコンガとホーン隊はラテン要素を漂わせつつも、クールな雰囲気。メイソンの小粋なビートを、少し歪ませた音色のエレキギターが色気を漂わせてソロを取る。音数少ないが、きっちりレイニーのベースはサウンドを支えた。
 ほんのりゴスペル風なコーラス隊もいいムードを強調した。続くギターがリトナーか。

 そして最後はムーディに。(7)はスローで甘く柔らかくアルバムをまとめた。エレピの揺れは都会のネオンかリゾート地のエキゾティックさか。
 いずれにせよ演奏は全く隙が無い。高中のギターを、細い音色でリトナーが飾って弦がふくよかにコーティングした。真夜中に寛いで聴くには、静かでいい曲だ。
 
 ほんとうに、この歳で聴くとこの手のサウンドは余計なこだわりも無く素直に味わえる。

Track listing:
1. Sexy Dance 5:54
2. Malibu 6:15
3. An Insatiable High 10:12
4. E.S.P. 4:11
5. M 5 4:21
6. Sundrops 5:10
7. Good (Bad?) Old Days 5:26

Personnel:
Producer - 高中正義
Recorded By - Bob Stone, 北川照明

Arranged By [Strings] - 深町純, 星勝, 高中正義

Bass - Abraham Laboriel(on 1,4,6), Chuck Rainey (on 2,3,5,7)
Drums - Ed Greene(on 2,7), Harvey Mason(on 1,3-6), 村上秀一(on 4)
Guitar - Lee Ritenour, 高中正義
Keyboards - 深町純(on 3,5), Patrice Rushen (on 1-4,6,7)
Percussion - 浜口茂外也(on 1,3-5), Paulo De Costa(on 2,3,5,7), Steve Forman(on 1,3-6)

Horn - Tower Of Power (on 1,4,5)
Arranged By [Horns] - Greg Adams
Baritone Saxophone - Steve Kupka
Tenor Saxophone - Emilio Castillo, Lenny Pickett
Trumpet - Greg Adams, Mic Gillette

Vocals - Jim Gilstrap, Julia Tillman Waters, Maxine Anderson, Maxine Willard Waters

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