TZ 8343:Nova Express Quintet "Andras: The Book of Angels Vol. 28"(2016)

 異なるコンセプトで、316曲の第二期Masada"The Book of Angels"を演奏するアルバム・シリーズ。第28弾はジョン・ゾーンの疑似バンド、ノヴァ・エクスプレスにパーカッションを加えた5人編成。

 収録曲は(2)と(9)がVol.25で既発以外は、本盤で初発表。逆にVol.25のレパートリーはなぜ、こんなによく他の盤でカバーされるのか。
 
 Nova ExpressはDs,Vib,b,orgの編成でゾーン馴染みのメンバーを集め、2011年の"Nova Express"が誕生のきっかけ。様々なサントラの録音をする中で、ミュージシャン組み合わせの妙味を憶えたか、2010年代のゾーンは自分が人選を仕切ったバンドをいくつも立ち上げている。
 そこで自分が演奏に加わらないのがポイント。指揮を行いソロ回しや構成のキューを送る。より能動的なコブラと言えるかもしれない。

 したがって稼働はゾーンの気分次第だし、ミュージシャンの内省的な発動もない。本盤もミュージシャンらの積極的な意向は無く、あくまでゾーンのおぜん立てによるものだ。もちろん演奏に手抜きは無いし、セッションでのスリルは味わえるけれど。

 つまり本盤ではゾーンの意思こそが主題であり、彼の意図をどう読むかで本盤の味わいは変わる。あえてここにシロ・バチスタを加えてリズムを強化し、ラテン・ビートを志向がアイディアかもしれない。

 リズムとメロディのどちらも行けるビブラフォンとオルガンが生み出すサウンドの耳ざわりは、尖った鋭さよりもふくよかで幻想的なムード。緊迫感とあいまいさを内包するオカルティックな魅力のように。
 さらにジョーイ・バロンによる、はたくようで単なるジャストなリズム・キープに終わらないドラミングが味。ドラムはリズムの軸でなく、核。テンポの主体にとどまらず、自らもビートの破片を散らばせる異物を狙う。
 
 オリジナル・マサダのメンバーなバロンであり、このリズム・アプローチはマサダのコンセプトからずれるはずもない。逆にバロンでなく別のドラマーを起用しなかったのは、Nova Expressの編成にゾーンがこだわったためだろう。

 ドラマティックで情感たっぷり。ゾーンの音世界を作り上げたメンバーたちだけに、本質的な異物のスリルは無い。むしろ予定調和の意味合いが強い。テンポはむやみに速まらず、すっきりとアレンジも抜けが良い。別にソロ回しをお行儀よくやってるわけでもないのに。
 この辺はゾーンのコンダクトの手柄か。

 Nova Experssはミニマル要素もある印象だが、本盤はむしろグッとジャズ寄り。3~6分程度と一曲は全く長くない。テーマからすぐさま即興に流れ、たちまち独自の世界を作る。
 つまりインプロ部分も長回しや冗長さは皆無。あっという間に曲が終わっていく。お行儀良い手なりのアドリブ、で無くスリリングなソロを披露するメンバーの手腕はさすが。
 何が始まるか、破綻しないかって危うさは皆無。抜群の演奏力でタイトなゾーン一派のアンサンブルを味わえるアルバム。
 (6)のざわついた感じ、(7)でのおどろおどろしさなど、音色やアプローチに気も配っている。これがすべて、ゾーンのコンダクトかもしれない。それが疑似バンドを無条件に持ち上げられず辛いところ。

Track listing:
1. Meresin
2. Yofiel
3. Sabiel
4. Hemah
5. Sahiviel
6. Ramiel
7. Ithuriel
8. Kakabel
9. Huzia

Personnel:
Joey Baron: Drums
Trevor Dunn: Acoustic And Electric Basses
John Medeski: Organ, Piano
Kenny Wollesen: Vibraphone

Cyro Baptista: Congas, Percussion


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