TZ 8341:John Zorn "Flaga:Book of Angels Vol. 27"(2016)

 アルバム別にコンセプト変えて、316曲の第二期Masada"The Book of Angels"を演奏のシリーズ。第27弾は有終の美を目指したか、ジョン・ゾーンが人選したオールスターなピアノ・トリオ。

 ゾーン自身はここ数年、自らがメンバー編成を行い演奏に参加せぬ疑似バンド・プロジェクトをいくつも立ち上げてきた。だからこのアプローチそのものは珍しいと言えない。さらにアルバムごとに違うメンバーを起用して解釈をゆだねる、本Masada Book 2シリーズそのものが、本盤と同様のコンセプトと言えるだろう。
 また本シリーズでゾーン自身が選んだ、疑似バンドでのアルバムも過去にあった。

 そのうえで本盤の特筆性はCraig Tabornを起用した点か。最近のジャズは追えていないが、テイボーンは本盤時点で5枚のリーダー作をECMなどから発表済み。ある意味、別の舞台で活躍するピアニストをゾーンが招いた。ざっと検索の限りでは、テイボーンとゾーンの共演歴の記事は見当たらず。

 なお他の二人はゾーンと共演あり。Christian McBrideとは12年12月12日のベネフィット・ライブ、Tyshawn Soreyとは11年6月15日にNY Stoneでのライブ動画あり。
 
 マクブライドはどっちかというと、ゾーンよりもっとメジャー寄りな印象あった。10枚以上のリーダー作があり、サイドメンでも膨大な参加ある売れっ子だ。
 ソーレイはゾーンのアルバムでも"In the Hall of Mirrors" (2014),"Valentine's Day" (2014),"Hen To Pan" (2015)に参加あり。クラシック寄りのフリーもこなす硬質なドラマーのイメージ。数枚のリーダー作もあり、サイドメンの参加も多数。
 つまり脂ののった一国一城の主たちの参集が、本盤となる。

 収録のうち(2)がVol.25で既発。他はすべて本盤で初公開となる。(4)と(9)で同じ曲のテイク違いを収録が、本シリーズにしては珍しい。ジャズでも再発CDではよくあるパターンだが。新譜でこういう選曲ってよくあるのかな。
 (5)の10分越え以外は、どの曲も数分程度とコンパクトにまとめた。むしろ長尺でいかようにもソロを伸ばせる演奏だが、一杯曲を収録するためあまり長くしないように、ってディレクションでもあるのだろうか。
 本盤ではアレンジでクレジットこそあるものの、ゾーンが演奏へ直接関与はしてないと想像する。明確にコンダクトのクレジットもないし。

 サウンドはフリージャズ寄りの、硬質でメロディアスなサウンド。ドラムが大人しくビートを刻まないし、ベースも始終暴れる。ピアノ・トリオで基本はピアノを立てるけれど、隙あらばベースもドラムも自己主張をがんがんした。
 お行儀のよさは皆無、それぞれの個性が炸裂する。それでいてバトルめいた緊張感や大仰さ、荒っぽさは無い。整った風景をきっちり提示し、その中で奔放な世界を存分に見せた。
 
 美しくも鮮やかな箱庭。ゾーンの疑似バンドは破綻しない。きっちりと構造をシメめている。ここをいかに拡大、破裂させるかが奏者の腕の見せ所だが、この三人は軽々とハードルを越えてきた。
 流麗でくっきりしたタッチのピアノは、リズム隊と緩やかに絡みながら、独自のタイム感でフレーズを散らばせる。
 リズム隊も大人しく刻みになんか入らない。体感テンポをきっちり三人が備えてるがゆえ。
 ドラムは拍頭も裏も好き放題ずらして細かいビートをばらまく。ベースも骨太かつ上品、しかし奔流のような低音でグルーヴを剛腕に振り回した。

 フレーズをユニゾンで整える場面は別として、アドリブ部分では三人がのびのびと展開してる。これはかっこよく、気持ちいいジャズだ。

Track listing:
1. Machnia
2. Peliel
3. Katzfiel
4. Talmai take 1
5. Shoftiel
6. Agbas
7. Rogziel
8. Harbonah
9. Talmai take 2

Personnel:
Craig Taborn: Piano
Christian McBride: Drums
Tyshawn Sorey: Drums
Executive-Producer, Producer, Composed By, Arranged By:John Zorn

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