TZ 8346:AutorYno "Flauros : The Book Of Angels Volume 29:Masada Book 2"(2016)

 ミュージシャン編成をアルバム変え、全316曲の第二期Masada"The Book of Angels"を披露するシリーズ。第29弾はフランスのギター・インストトリオのAutorYno。ハードロックなアプローチをとった。

 TAZDIKからだけ、オリジナル・アルバムを発表。"Pastrami Bagel Social Club"(2010),"Cosmopolitan Traffic"(2013)と数年おきにアルバムをリリースしてきた。これらに続く、3作目が本作となる。

 それなりにライブを重ねているが、あまりジョン・ゾーンがらみのイベントがちょこちょこあり、あまり積極的に自分らのアピールをしていない。
 収録曲のうち(5)(6)(9)はVol.25"Gomory"(2015)で既発となる。新曲が並ぶMasada Book 2にしては珍しい選曲だ。

 冒頭でハード・ロックと書いたが、いわゆるヘビメタ風に高速スラッシュではない。むしろ暗黒サイケな面持ちで、たとえば(6)では歪みと残響をたっぷりまとい、重たく煙った風景を作る。(2)や(3)での畳みかけるようなひずんだギターも良い。中盤でフレーズ重なるところだけダビングかな?

 全般的にアップテンポなアレンジでも、爽快感より落ち着きが印象に残る。破綻せず、おっとりと。
 ブルージーさがあり、クレヅマーっぽくは弾かない。前衛的な尖りも無く、聴きやすい。ジョン・ゾーンがどの辺に惹かれたか知らないが、どちらかと言えば手堅さが目立つ。演奏は安定しており、上手いのだが。なるたけでかい音で、音圧浴びて聴くほうが楽しめる。

 たぶんダビングは無く一本勝負。冒頭はユニゾンできれいにフレーズを決め、おもむろにアドリブへ入っていくスタイル。即興要素はもちろん多いが、トリオ編成の枠をきっちり嵌め、ドラムやベースが無暗に暴れることもない。
 一曲はさほど長く展開させず、サクサクと進む。その分、食い足りない。
 何度も聴いてると、丁寧な音作りに好感は持てるけれど。

 そう、本盤はスリルが無く安定した。なおかつハードロックの文脈で重たく歪んだ音色を使っており、中途半端にエッジが立っている。
 あとはリズム感がさほど突飛でなく、きっちり拍をぶれさせない。アドリブのフレーズやリズム感はしっかりしており、安心できる。ハードコアな荒っぽさは無し。
 
 むしろリバーブやディレイで、ふと揺れる音のはじける瞬間のほうが刺激的だ。そういった意味で、サイケな残響が飛び交う(9)が一番面白いかな。8分越えと尺も長く、じっくり楽しめる。
 切なさをまとったマサダのメロディが、なんだか寂し気に響く。最終曲(10)のブライトな音色と、淡々とメロディを紡ぐアレンジは歪みを排除しセンチメンタルに流れた。 
Track listing:
1. Carcas 4:08
2. Saelel 2:14
3. Uvmiel 4:17
4. Adoyahel 5:01
5. Qaddisin 3:49
6. Shahariel 7:02
7. Abrimas 0:51
8. Bethuel 4:40
9. Achusaton 8:53
10. Kaniel 5:01

Personnel:
David Konopnicki: Fretless And Fretted Guitars
Bertrand Delorme: Bass
Cyril Grimaud: Drums

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