音楽ソフト商品は、どこまでが音楽?

 「誰が音楽をタダにした?」を読了、「武満徹・音楽創造への旅」を読みはじめた。いやはや面白い。
 


 「誰が音楽をタダにした?─巨大産業をぶっ潰した男たち」スティーヴン・ウィット:著(2016:早川書房)
 「武満徹・音楽創造への旅」立花隆:著(2016:文藝春秋)

 前者はMP3や違法アップロードの立役者たちのドキュメンタリー。主役はP2Pの音楽共有チームと、CD工場から発売前の音源を盗む男たちだ。MP3とインターネットが違法音源の温床となり、CDが売れなくなってビジネス・モデルが崩壊した現状を、賛美も否定もせず淡々と述べた。
 違法アップロードが音楽ビジネス・モデルを崩壊は、根本で間違ってない。また、違法アップロードはどう立ち回っても正統性は主張できない。

 だがもしこれらが無かったら。違法ダウンロードしてた人は、その音楽を聴いてたろうか。今の若い奴は知らないよ。でも僕と同世代は、もしそれが違法ダウンロードで聴けなかったら、他の音楽を聴いてただけかもしれない。
 また違法アップロードとそのコレクションも、そのうち集めることが主眼になって音源を聴かないって本末転倒が産まれる。テラバイト級の音源ファイルを(ビット・レートしだいだが、とりあえず192KbpsクラスのMP3として)持ってたら、到底それを隅々まで聴くことは叶わない。

 さらに豪華パッケージ、もしくは単にジャケットでもいい。所有したい人は、目の前に無料音源があってもパッケージを買うだろう。
 違法音源の、どこに「利」があるか。レコード会社の潜在的な損失はある。だが違法音源が無かったら、その人たちがその盤を買ってたかは保証できない。
 ここで一番得してるのは「タダなら聴きたい」って人だけ。つまりレコード会社のビジネスとして、「音源がどうだろうとパッケージや所有欲で欲しがる人」か「タダなら聴こうかと思ってるファンでもない人」相手の商売じゃないの、と本書を読みながら思い始めた。

 違法アップロードしてる人、CD工場で働いて発売前の売れそうな音源を盗む人。双方に「音楽を聴きたい」って発想が読み取れない。金儲け、とも言い難い。アップロードするだけで、そこに「利」は存在しない。
 音楽を聴くとは何か。流通と製造に手間がかかった昔ならいざ知らず、手軽にネット流通もでき、フィジカルCDを作るのも昔よりハードルは下がった。同人音楽に触れると、実感する。

 さらにアメリカではアナログが見直されてるそう。MP3のDLコード付きで。所有欲も満たされ、音楽はMP3で聴くという。
 しばらく前から、ノイズ系のパッケージ込みの音源がこのパターン多くて困ってる。いまさらLPなんかいらないよ。置く場所無いもの。プレイヤーもないし。DLコードあるなら、なおさらいらない。パッケージじゃなく音楽が聴きたいんだ、こちとらは。
 
 音楽聴くって何だろう。付加価値はどこまで必要なんだろう、と考えながら前者を読んでいた。ミュージシャンへの印税とかコンサート中心の音楽活動とか、そっちはちょっと横に置く。

 で、後者。膨大なインタビューをもとに連載してたのは知ってたが、本にまとまらない武満徹の評伝ドキュメンタリー。連載18年後を経ての書籍化という。ようやく読みはじめた。まだ冒頭だけだが、面白く読んでいる。
 
 そこで武満徹を聴きたいな、と思ったわけだ。とりあえず"ノベンバー・ステップス"。琵琶と尺八が西洋楽器と渡り合うこの曲、CDで聴いてたが構造が今一つ頭に入らない。
 前者を読んだことだし、Youtubeで映像付きなら頭に入るかと思ったわけだ。ほんとなら楽譜つきの映像見たかったが、それは見つからず。尺八用の図形楽譜ってどんなだろう。

 Youtubeで検索したら、二つほど動画を見つけた。前者は1984年、岩城宏之指揮のN響。後者は90年、小澤征爾指揮の新日本フィル。後者は鶴田錦史が車椅子で少し痛々しい。どうせなら溌剌な前者を見ようと思ったわけだ。
 
 だが、ダメ。84年音源のほうはテープ劣化で音が割れ、聴いてて苦痛だ。演奏の良しあしじゃなく、音質的に。ここで「誰が音楽をタダにした?」の感想を思い出した。

 もし84年音源が音質最高だったら、Youtube見て満足したかもしれない。だがそれは音楽を聴いたからか?動画で動きを込みだったからだろう。それはレコード会社の売り上げを阻害したか?CDは音だけだもの。CDの売り上げには関係ないよな。
 じっくり聴きたいなら、CDを買うよ。ただ、中古盤かもしれない。その場合、レコード会社にもミュージシャンにも一銭も行かないな。

 CDの正規販売を手に取るのは、ぴんぴんの新品。それから限定盤とか急いで買う必要ありそうなとき。新譜はともかく限定盤って音楽の価値とは別だよな。
 新しいビジネス・モデルとして、定額とは逆に「聴くごとに課金の配信」って制度ができないかと思う。そのとき幾らなら妥当と、自分は財布を開くだろうか。

 蛇足の余談。プリンスの未発表音源が3800万ドルで取引中(?)らしい。こういう音源もまともにCDで発表された日には、いくらかかるかわからない。なんとか良い販売手法を取って欲しい。
 単なる倉庫の蔵出しなんだ、それこそパッケージに拘らず廉価な配信発表して欲しいのう。どうせ発表にあたって、どこにもプリンスの意思はないんだ。
http://www.billboard.com/articles/news/7541106/prince-music-vault-shopped-purple-rain-deluxe-edition
 

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