The Time 「Ice Cream Castle」(1984)

 タイムの3rdはプリンスの方向性が拡大しまくり、妙な五目味のアルバムに仕上がった。

 "Purple Rain"用の前に録音で、Sheila E."The Glamorous Life"の翌月にリリースされた。"Purple Rain"の裏、影となるような盤。ライブ・テイクが入っている以外は、基本的に本作もプリンスがほとんどを録音している。
 タイムの代表曲となる(4)を収録した。プリンスのコントロール下にあるが、"Purple Rain"と関連を持たせるため、タイム自身のライブ・テイクを最後に据えて相関性を漂わせる。
 本質的に本体の"Purple Rain"ほどのクオリティを持たせるわけにいかない。なおかつタイムはファンク色を強める。そんなプリンスの志向と、どんどん巧みになるプロデュースや録音術が噴出し、意外とバラバラな曲調になった。

 タイムはプリンスのプロデュース力の進歩が一番わかりやすいバンドになった。アルバムを重ねるごとに完成度が高まり、出来としては本盤が最も聴きごたえある。
 粗削りの極みな1st、シンプルなファンクを追求した2ndも魅力あるが。
 ペイズリー・パーク立ち上げ前で契約形態が違うのか、3枚とも廉価盤で容易に入手できるままな点も嬉しい。
  
 一曲はやはり、比較的長め。全体の収録時間は短いのは、物足りなさと主役の自分を食わないようにするプリンスの配慮か。
 オルゴールのサンプリングを重ねた音がイントロの(1)は、ドラムのエレクトリックな音色具合がまさに"1999"や"Purple Rain"時期の音。シンプルな構造だがハーモニーを薄いが濃く重ねたり、鍵盤の多層レイヤーにギター・カッティングやストロークを混ぜたりと、アレンジはさりげなく凝っている。
 覇気のないのったりしたノリが惜しい。もうちょい派手かつ前のめりに行けたと思うが。

 (2)もプリンス印のファンク。P-Funk直結の粘っこさだ。一転して生ドラムの荒っぽさな一方、妙にハイハットがクールに鳴った。
 キーボードのリフのほうがキャッチーで、むしろリード・ボーカルがバック・コーラスめいた線の細さ。"If I was your girl friend"を連想した。
 ここでもリズム構造はすっきりしつつ、エレキギターのソロや鍵盤リフなど多数のダビングを施し、わさわさっと原初的なパワフルさを演出する。
 本盤のベストはやはり"Jungle Love"と思うが、この曲も意外と聴きごたえあり。

 怪曲が続く(3)。物語仕立てでリズム・ボックスとストリングス音色の妙な安っぽいシンセや爪弾くピアノでロマンティック世界を音で作り、寸劇みたいな小芝居がずっと続く。踊れるわけでもなく、ギャグ狙いでもない。映画"Purple Rain"につながる世界とも思えない。
 タイムの各メンバーが入れ代わり立ち代わり登場する構造だが、ライブで再現してもコントっぽさが抜けないだろう。どういう意図か悩む。

 サウンドは途中からチェロが朗々かつ切々と奏でられ、分厚く隙の無いロマンティック・ジャズな世界をプリンスのピアノと作り上げた。
 伴奏だけ抜きだしたら、あんがい面白いインストだったかもしれない。喋りが邪魔・・・とまではいわないが。

 ちなみにここでも、モーリスが高笑いを入れる。独特のトレード・マークなあれ。プリンスの「アーォア!」ってシャウトに通底する、喉を絞りつつ高く吼える使い方。
 どっちが先かわからないが、二人ともあのシャウトが良い個性づくりになってる。

 そして代表曲の(4)へ。喉を鳴らし、キャッチーなリフから艶めかしいボーカルへ。この曲に限って、どこにも隙が無い。打ち込みドラムに鍵盤、ギター・カッティングとプリンスの色が満載なのに。軽くフレーズ終わりを振るモーリスの歌い方が、ばっちりここでは決まった。
 「オイオイオ♪」ってバック・コーラスのフレーズも完璧だ。テンポは比較的抑えめだが、身体を緩やかに揺らすにはバッチリなタイミングと思う。
 さらに身もふたもないが。主役のプリンスほど熱っぽくなく、B級路線を漂わす点も戦略的によくできている。二軍色がぷんぷんする。

 
 歌唱力でだいぶ損してるが、楽曲は美しい(5)。プリンスの粘っこさとむせび泣くボーカルなら、凄く良いテイクになったと思う。
 ここでは節回しが少し荒っぽい。ここまでの分厚いアレンジを少し控え、すっきりヌケの良いスローに仕上げた。
 甘くなり過ぎないよう、ちょっとテンポ上げたとこも完璧。ちなみに演奏はおざなりではない。すっとベースのチョッパーが入ったり、ギターや鍵盤でオブリを引き受けたり、小節単位で細かくアレンジや構成を施してる。

 2:42秒あたりで一瞬、音がドロップするのは何だろう。マスター起因の劣化か、たまたま僕の音源がおかしいのか。
 ただしこの曲、少し冗長だそれこそ2:30くらいで終わらせても良かった。そのあともアウトロが延々と続く。エレアコみたいなギターのソロなど、飽きさせない工夫はあるけれど、12"シングルのロング・ミックスで無理やり伸ばしたような寸劇が続く。
 その割に5:55あたりから急にテープ編集した痕跡あり。

 このむやみに長く、もしくは編集が荒っぽく仕上げたのが、タイムの1st~3rdに共通する色だ。プリンスの意図と思うが。

 最終曲の(8)がライブ・テイク。タイムの演奏がきっちりタイトだったとよくわかる演奏だ。編集やダビングしてるかもしれないが。
 演奏始まると観客の歓声はスパッとカットし、スタジオ・テイク風に明るく盛り上げた。
 
 アレンジのセンスは、"Purple Rain"時期のプリンス色そのまま。演奏はともかく、アレンジはプリンスかもしれない。ジェシ・ジョンソンは14年にFacebookで「1999ツアー時代の曲。プリンスはフックだけ作ってあとは任せられた」と述懐してるが。
 演奏は83年10月4日、地元の有名ライブハウスのFirst Avenueにて。プリンスの"Purple Rain"を録音と同じ場所だ。なお"Purple Rain"のB面ライブテイクを収録は、同年の8月3日のライブ。
 しかしこの演奏、どうもギターや鍵盤をダビングしたように聴こえる。妙に生々しいからだが。
 テイクのノリは、ばっちりファンキー。鍵盤が跳ね2ビートが映えるミネアポリス・ファンクで、素敵な盛り上がりだ。

 ということで、アルバムの仕上がりは多彩。丁寧な作りととっ散らかった荒っぽさ、双方が良い感じで混ざった。

 最後は冒頭と同じオルゴールの多重録音SEで幕を下ろす。ちょっぴりトータル・アルバム的な工夫を施した。

Track listing:
1. Ice Cream Castles (7:33)
2. My Drawers (4:04)
3. Chili Sauce (5:45)
4. Jungle Love (5:29)
5. If The Kid Can't Make You Come (7:33)
6. The Bird (7:40)

Personnel:
Morris Day - lead vocals, background vocals, drums on 2
Prince - all background vocals and instruments, except where noted (uncredited)
Jesse Johnson - vocals and guitar, guitar solo on 2, drums on 5
Sharon Hughes - dialog on Chili Sauce, background vocals on 5
Novi Novog - violin on 3
Mark Cardenas - background vocals and keyboards on 6
Paul Peterson - background vocals and keyboards on 6
Jerry Hubbard - bass guitar and vocals on 6
Jellybean Johnson - drums on 6
Jerome Benton - percussion and voice on 6

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