Bill Frisell 「The Willies」(2002)

 製作意図はつかめてないが、幻想的なブルーグラスを楽しめる盤。

 ビル・フリゼールはどうにもアルバムのコンセプトがわからない。ライブを見たこと無いせいかも。NYでジョン・ゾーンとつるんで前衛ジャズをやってた時は、インプロヴァイザーとしてわかりやすいイメージを投影できた。
 だが89年にノンサッチと契約後、どんどんアルバムは出るが製作イメージがわきづらい。
 アメリカ人として自分のルーツを素直に追及し、なおかつサスティンを効かせた幻想的なギターをやりたいのかな、と漠然と思ってる、当たってるかは知らない。
 
 彼のリーダー作は多く全部聴いてるわけじゃ無いが・・・。韜晦やユーモアでなくカントリー寄りのいなたいサウンドを弾くフリゼールのスタイルが今一つピンとこない。
 知識不足による僕の固定観念なのだが。カントリーはもっと乾いてシャキッとアタックがくっきりしたアクセントってイメージがある。

 だがフリゼールのギターはそれと逆ベクトルだ。甘く、柔らかく、ふっくらと音が伸びる。レイドバックしたブルージーさとも違う。汗臭さや前のめりの重厚さはフリゼールのギターからピンとこない。もっとふんわり優美に弾いてるイメージが抜けない。
 そんなわけで僕はフリゼールの熱心なファンとは言い難い。

 というよりジョン・ゾーンから彼を知り、鋭いエッジ効かせたギター弾く人かと思い込みノンサッチ盤を何枚か聴いて、のどかなカントリーの雰囲気に馴染めず敬して遠ざける、のほうが正確かもしれぬ。

 さて、本盤。15枚目のリーダー作という。前作からの連続性は今一つわからない。
 ミネアポリスWalker Art Centerの委嘱作品、"Blues Dream"(2001)を吹きこんだ後、ジャズメンのデイヴ・ホランド/エルヴィン・ジョーンズとジャズを繰り広げた"With Dave Holland and Elvin Jones"(2001)の次が本盤だ。
 さらにこのあとは、カントリー・タッチながらラウンジ的なアンサンブルの"The Intercontinentals"(2003)に続く。

 カントリー的な共通項はあるものの、本盤の意図は何だろう。録音も00年5月から01年3月までと期間かけて行ってる。思い付きの一発セッションでもなさそうだ。
 本盤の共演メンバーは、Danny Barnes(バンジョー)とKeith Lowe(b)。うーん、共通項が見えない。継続的なトリオでなく、あくまで本盤のために組んだメンバーっぽい。

 Danny Barnesはカントリー界隈では有名なバンジョーの名手らしい。Keith Loweはスタジオやツアー・ミュージシャンとしてブルーグラスやカントリー、ロックのジャンルで演奏という。正直、本盤以外で二人の演奏は聴いたことが無い。
 ポイントはリズム楽器がいないことか。あえてビート感を緩やかにし、バンジョーのアタック感とベースでノリを作った。それで独特の浮遊感を狙ったのかもしれ合い。
 
 ちなみにブルーグラスとカントリー、何が違うのか。カントリーの一種でスコットランドやアイリッシュのトラッドからアメリカで発展した音楽がブルーグラス、らしい。

 収録は16曲で66分となかなかのボリューム。基本はフリゼールのオリジナル曲だが、5曲がトラッド。4曲でカーター・ファミリーやハンク・ウィリアムズ、レッドベリーとカントリーやブルーズ界隈のミュージシャンをじわじわカバーした。
 つまり9曲がカバー、半数以上がカバーとなる。

 演奏の主役はフリゼールなようでいて、がっちりサウンドのイメージを作るのはバーンズに思える。フリゼールは周辺から包み込み、空気をかき回すかのよう。決して伴奏役でなく、アドリブ・ソロも豊富だが。
 とはいえテーマからソロ回し、って単純な構成を取ってるわけもない。演奏ループ、もしくはダビングで互いにソロを取り合い、いつしかバンジョーが刻みに回ってフリゼールがインプロを展開ってパターンのようだ。

 穏やかではある。だが不思議と爽快感は無い。寛ぎはある。けれど何故か気が休まらない。幻想的で掴みづらく、その一方でメロディは美しい。
 スリリングだがのどかな風景を描き、アコースティックなバンジョーが弦をはじく一方でフリゼールはたっぷりのサスティンやディレイ効かせたエレキギターでまとわりつく。
 ベースももちろんアンサンブルを支えるが、前に出ない。ギターとバンジョーの自由さをはみ出さぬよう周りを抑えてる感じの低音役だ。縁の下の力持ち。

 この掴みがたい世界観こそが、フリゼールのやりたかったことか。本盤はカントリーの素養が無いぼくは、聴いてもすとんと腑に落ちない。でも三人の着実で安定した演奏が産む、しなやかなグルーヴは単純に素敵だ。

 気持ちいいなあ、でもなんかわかんなくて不思議だなあ。今回もやはり、そんなことを思いながら聴いていた。

 ちなみにこの映像は、本盤からグッと時代を経て08年、フリゼールとバーンズのデュオ映像。一時間以上の長尺で聴けるため貼ってみた。ここでは曲をやってはいるが、もっとジャムというかインプロっぽい展開だな。


Track listing:
1. Sittin’ on Top of the World (Lonnie Chatmon,?Walter Vinson) - 3:59
2. Cluck Old Hen (Traditional) - 3:53
3. Everybody Loves Everybody - 3:42
4. I Want to Go Home - 4:15
5. Single Girl, Married Girl (A. P. Carter) - 3:57
6. Get Along - 3:23
7. John Hardy Was a Desperate Little Man (Traditional) - 5:17
8. Sugar Baby (Traditional) - 3:51
9. Blackberry Blossom (Traditional) - 4:20
10. If I Could I Surely Would - 6:46
11. Cluck Old Hen (reprise) (Traditional) - 1:50
12. Cold, Cold Heart (Hank Williams) - 2:25
13. I Know You Care - 3:12
14. Goodnight Irene (Lead Belly,?John A. Lomax) - 3:55
15. Big Shoe - 4:51
16. The Willies - 6:24

Personnel;
Bill Frisell - electric and acoustic guitars and loops
Danny Barnes - banjo, guitar, pump organ, bass harmonica
Keith Lowe - bass


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