The Time 「What Time Is It?」(1982)

 無邪気にファンクを追求した、結果的にプリンスの覆面バンドな2nd。

 1stと本作はThe Timeの各メンバー名義ながら、プリンスがすべて作曲/演奏と知られる。プリンスにいわゆるファミリー志向あったかは不明だ。プリンスはファミリーのボス肌や面倒見良さはなく、発表の名義借りや口実で周辺を巻き込む格好、孤高だった印象ある。
 
 たぶん地元でライバルであり盟友のモーリス・デイや周辺メンバーを引き立てる意味もあったろう。豊富な作曲を自分の名義で出せない(もしくは出したくない)理由もあったのでは。とにかくプリンスの隠れ蓑としてタイム名義が使われた。

 プリンスは"Purple Rain"で確固たる地歩を築くまで、安定して音楽的な活動する認知度含めた足場と裾野が欲しかったのだと思う。
 タイムの初期サウンドはチープにしてファンク色が強い。
 プリンスは自分のブランドでこれを出すわけにいかなかった。本作が作られたのは"Controversy"(1981)の後、"1999"(1982)の前。
 つまり"1999"でぐっと自分の世界を広げようとする一方で、ファンク一辺倒の本盤収録曲で「黒人特有のファンク」って固定イメージをつけられたくなかったと想像する。

 "Controversy"での荒っぽいファンクネスから本盤は、電車道の一直線な流れだ。
 サウンドはシンプルながら手ごたえある。仲間を引きたてもしたい。ちょうどいい、バンド名義にしちまえ。そんな流れか。もしくはもっとドライにワーナー側が「リリースするなら別名義」とアドバイスかもしれないが。
 プリンスが「デビューするなら自分が全部音楽的に面倒見る」って親心は考えづらい。まして一発屋ならともかく、これから継続活動するバンドにそのアプローチは有難迷惑だろう。

 なおWikiによると元はアレクサンダー・オニールがジャム&&ルイスと組んでたバンド、フライト・タイムが母体。だがプリンスの口利きでワーナーと契約を図るも、アレクサンダーと契約金額が折り合わず、彼を首に。代わりにモーリス・デイをボーカルに据え、タイムに変わったという。色々といきさつ在ったんだな。
 FLYTE TYMEはこのコンピに音源が残っている。

 
 さて、本盤に話を戻そう。ここから3曲、(2)(5)(4)がシングル・カットされた。余技ではない、あるていどきっちりワーナーも売ろうとしてる。それぞれB面は(5)の裏が(6)、(4)の裏が(3)。結果的にモーリス・デイのシャウトが印象的な(1)以外、すべてシングルになった。

 シングルの選曲へプリンスの意思が関与したかはわからない。拡販戦略までプリンスが口出しかな。それこそタイムのメンバーに任せろよって見方もある。
 だが本盤で唯一、プリンスのバンド仲間なDez Dickersonが作曲に関与した(1)のみカットしないってセンスに意味深な深読みをしてしまう。キャッチーじゃないと思ったら、そもそもA面1曲目には置かんだろ。

 なお(2)の裏はアルバム未収録の"The Grace"。
 一瞬色めき立ったが、(2)のトラックを下敷きにモーリスへインタビューって趣向の穴埋めだった。初シングルだけあって、B面はフィル・スペクター風に適当に作ってDJにかける曲を悩ませない工夫かも。"The Grace"はYoutubeで聴けた。ありがたい。


 プリンスが本盤で使った偽名はThe Starr★Company。プロデュースはモーリスと共同名義にした。
 ジャケットにメンバーの演奏関与がクレジットあるものの、それはすべて嘘。
 しかしPrice Vaultによると演奏はすべてプリンスでなく、(1),(4),(5)のドラムがモーリス、(5)のギターはジェシ・ジョンソンらしい。

 サウンドは本当にシンプルで多層的なファンク構造だ。
 (1)は打ち込みみたいな杭打ちのジャストなドラム(これがモーリスか)に、鍵盤、ベース、ギターがシンプルにフレーズを重ねる。多重録音ではあるが、ジャムにメロディを乗せたかのよう。
 展開無く、ワンコード・ファンクで突き進む。歌もメロディというより群唱風にわさわさっと迫るイメージ。ギター・カッティング中心に興の乗るままインストを作り、あとからメロディを当てはめたかのよう。
 その割に演奏は一本調子じゃなく、鍵盤ソロが入ったりとメリハリはあるけれど。

 (2)もアレンジはシンプル。キックが打ち込み風に続き、せわしないハイハットがアクセント、さらにリズム・ボックスのクラップなどが入ってビートを作った。一拍頭に休符を入れたベースのパターンが、スリリング。
 軽快なギターと鍵盤がそれぞれアクセントをズラして、つんのめるファンクネスを演出する。
 楽曲的にはこれも単純。グルーヴィではあるが、派手さは無い。当時のプリンスはボーカルの多重録音は工夫するが、演奏は自らの盤以外だとデモテープに毛が生えた程度の荒っぽいとこもみせた。
 ただし上下でメロディを挟んで支えるコーラス・アレンジはいかにもプリンス流。演奏はリズムだけが単一で、あとはギターや鍵盤が細かく短いアドリブやフェイクを入れて演奏を波立たせた。

 なにせ(1)が7分、(2)が8分越え。それなりに演奏へ工夫しないと間が持たない。本盤もLP片面3曲と、短いうえに曲の尺が長い。コンパクトなキャッチーさより、ダンサブルな魅力の協調を選んだ。
 (2)では5分過ぎからプリンスのギター・ソロが現れる。たっぷり最初はタメを取って、歪んだ音色で粘り情熱的なソロを聴かせた。

 (3)は(2)分の小品。2ビートを鍵盤やギターで飾り、前倒しに迫るあわただしさで煽った。いかにも"Controversy"のアウトテイクって感じ。ハーモニーはすべてタイムの面々だろうか。
 喉を潰しシャウトする声が後ろでいくつか聴こえる。タイムの面々だとしたら、いかにもプリンスのガイド・ボーカルをそのままコピーしてそう。

 B面に移って(4)。エレピ音色が1拍と2拍目の頭を華やかに叩いて、ディスコっぽさを強調した。この曲は鍵盤のダビングが多く、ホーンのフレーズを鍵盤で代用し骨太のファンクを演出した。
 いかんせんボーカルが弱い。シャウトはするものの、今一つ小粒だ。

 この曲もメロディの展開はほぼ無く、淡々と同じパターンを繰り返す。プリンスならば歌い方で起伏や脈絡を付けたかもしれない。だがタイムはそこまで表現力も無く、小芝居みたいな掛け合いをつけて、ようやく1曲を仕上げた。
 プリンスのギター・ソロも中盤で登場し、盛り上げた。複数のギターを使い、左右に飛ばしたりとミックスにも気を使ってる。でも今一つ単純さは否めない。
 明るいムードながらファンクネスを追求した。

 メロウな(5)は、イントロのメロディや和音感が"Little Red Corvette"に似てる。ここではハードに盛り上がらず、プリンス風の多重ボーカルでバラードに流れるが。
 幾本にも枝分かれするプリンスの作曲術を伺うようで面白い。

 このドラムがモーリスならば(1)の単調さとずいぶん違う。同じパターンを基調に、ところどころでフィルを小さく入れ、グルーヴを緩やかに揺らした。素朴だがかっこいいドラムだ。
 鍵盤が緩やかに伸びる伴奏は、フレーズの多層的な組み立てでノリを出す前半と明らかに異なるアイディアだ。
 いかんせん単調な曲が続く本アルバムだが、この曲はメロウさとくるくる表情を変えるさまが楽しい。一曲選ぶなら、むしろこの曲が好きだ。"Little Red Corvette"に似てるとはいえ。

 アルバム最後の(6)もなんかのプリンスの曲を連想する。でも曲名が出ない。なんだっけ?"Controversy"か"1999"あたりだと思うが。
 これも楽曲としてはメロディアスで技が仕込まれた。BPMは変わらずとも、鍵盤やリズムを抜き差しすることで、疑似的な緩急を産むビートのアレンジがユニークだ。

 さらにサビに向かい、ふわり浮かぶ和音の展開も素敵。
バスドラとシンバル役の音を打ち込みにして、安っぽくシンプルなビートへ鍵盤やベースでノリを作るアレンジだが、これも鍵盤は細かくダビング重ねて手をかけた。
 鍵盤ソロはリボン・コントロールで音程をベンドさせ、危なっかしく艶めかしいムードを作った。

 いわばA面が力技のポリリズミックなファンク、B面はプリンス流のアイディアや多重録音で複雑さを出したアルバムってことか。
 久しぶりに聴き返したが、粗削りでチープながら様々なアプローチの実験が伺える。前衛の実験ではなく、様々な手数を確かめるような。プリンスがさらに飛翔する前、試行錯誤でかっこよさを模索した一枚と言えるかも。

Track listing:
1. Wild And Loose(7:32)
2. 777-9311(7:57)
3. Onedayi'mgonnabesomebody(2:27)
4. The Walk(9:30)
5. Gigolos Get Lonely Too(4:40)
6. I Don't Wanna Leave You(6:30)

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